プロローグ2
「ふぅ...ったく、探偵っていってもねぇ...。俺が求めてるのは麻薬取引現場を押さえるとかそういうんじゃなくて、事件を解決したりするやつを望んでるんだけどなぁ...」
「我々の組織にそういったものが向いてるとは思えんな。そもそもお前は事件の解決なんぞ向いておらぬ」
「その言葉、そっくりそのままお前に返そう。この時代遅れが」
「...時代遅れだと?」
「口調もそうだが、何でTシャツとかじゃなくて袴を着てるんだ?暑いだろ...動きにくいし。そんで何で常に刀を常備してるんだよ。俺まで変な目で見られる」
「難しい問いだな。何故か...。何故かは分からぬ。だが、これが一番落ち着くのである。それに、我が先祖は代々こうして生活してきた。受け継ぐのは当然であろう」
「はいはいそうですか...」
俺達は暗闇の中、街灯を頼りに道をたどっていく。
「...暇だなぁ」
「暇?この仕事につき暇などという言葉を聞いたのは初めてだ」
「もっと刺激が欲しいっていった方が分かりやすいか?」
「分からぬ。常にリスクにかられているのが我らの仕事。もっと刺激が欲しいなどありえぬ」
「俺の性癖は少し特別なんだよ」
「...分からぬ」
俺達...いや、名前で言った方が分かりやすいか。俺はある"探偵社"で働いている。と言っても、ただの"探偵社"ではないが...。その件に関しては後々知ることになるだろう。
少し話が脱線したが、俺の名前は楠木 輪。さっきも言った通り、探偵社で働いている。
そして俺の隣にいる袴姿で刀を腰に常備している変人が坂本 雅司。俺と同じで探偵社で働いている。仕事仲間と言ったら分かりやすいだろう。
そして今は、ある依頼で麻薬現場を取り抑えてきた後の帰りである。まぁ...仕事終わりだな。
色々あって車が爆発したので徒歩での帰りとなった。
説明すると長くなるんだが...麻薬取引現場で銃撃戦となって俺達の車が木っ端微塵となった。そして爆発である。
何とか取り押さえることが出来たが、あやうく死にかけた。
普通警察の仕事だろう...。と言っても、色々事情があるのだ。
警察でも手に追えないような大きく、危険な仕事は大体ここの探偵社に回ってくる。
今回の麻薬取引だが、全員が武装している可能性があり、かつ近くに街もあったた。あまり混乱させてはいけないと我々の探偵社に「穏便にこの事件を解決してくれ」と頼まれた。車爆発したけど。そのことについては警察が丸く納めてくれるだろう。
とまぁ、この世界は治安がとにかく悪い。警察でも手が足りないくらいである。手が足りなくなった時大抵面倒なことは探偵社に回ってくるのが定番だ。
「にしても今回の事件、中々歯ごたえがあったねぇ。車爆発したけど」
「まさか取引先に敵が100人近く居るとは想定外だった」
「恐らくボディーガードだろうね。それほど麻薬が大切だったんだろう。俺にはさっぱりだね。もうこりごりだよ...」
「その件に関しては我も同意する。あれは解決と言って良かったのだろうか...」
「殺してないから大丈夫じゃないか?気絶させただけだよ。あの後警察にもちゃんと連絡しといたし、後は警察の人達が捕まえてるだろ」
「...探偵とは思えぬ発言だな」
「分かる」
俺達が所属している探偵社は、実は少し訳ありの探偵社である。 というのも、働いている人は皆、ただの人間ではないからだ。これも説明したら長くなるんだが...
「...輪。前を見ろ」
「え?何だよ急に...」
俺は雅司が視線をやる方へ俺も視線を向ける。
「...よく見えないんだけど」
「見えぬのか。猫だ。餓死しそうな」
「......あぁ、やっと見えた。ほんとだ、死にかけだね」
「...助けぬのか」
「...助けてどうするのさ。まさか、俺の能力を使おうっていうの?」
「こやつは苦しんでおる。だからと言って、楽にしなすことも我にもできぬ。...だが、目の前に今命が尽きようとしている者も見捨てることはできぬ」
「...はぁ。分かったよ。息を吹き返したら探偵社に連れて行こう」
「社員が増えるのは良かろう。なにせ人手不足なのだからな」
「捨て猫を社員にするのもどうかと思うけど。まぁいいか...。その変わり、全責任はお前が取れよ」
「我はそれで構わぬ」
「...優しすぎるんだよ、お前はさ。...はぁ」
俺の目の前に倒れている猫に手を向ける。
「...輪廻転生」
その瞬間、猫の回りが光の粒で覆われる。光の粒はゆっくりと猫の体にまとわりつき、最後には光の粒は猫の体の中へと消えていった。
「...うん、これで大丈夫かな。探偵社にいって少し寝かせればいい。きっと新しい生命体となってるさ」
「便利な能力だな。死者を新しい生命体へとする能力...だったか」
「輪廻転生とは少し意味が違う能力だけどね...。生まれ変わる代償として、記憶は全て消えるんだ。残酷な能力だよ」
「何も分からないまま新しい生命体となってゆく...。代償はでかいゆえに、新しい人生を歩むことができる。...何も分からずに」
「...恐ろしいな」
「...うむ」
俺は猫を拾いあげる。
「連れて行こう。こいつが目を覚ましたら一から説明しておく。とりあえず雅司は報告を頼んだ」
「承った」
俺達は猫を抱き抱え、薄暗い路地裏へと入っていった。
どうでしたでしょうか。今回は猫視点ではなく、前回とまた違う視点からのお話でした。次回も少しでも楽しみに待って頂ければ幸いです。