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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第六章

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6-9 それなら僕だって……

 それは、3Dクリスタルの要領で漢字を刻みこんだビー玉。


 パトリシアとアナベルにプリムラ、それぞれの名前と僕の名前を刻んだもの、2個が1セットだ。

 それをパトリシアはイヤリング、プリムラはアームレット、そしてアナベルはペンダントに加工して身に付けてくれている。

 ちなみにその後、クラリスとシャルにも頼まれて同じものを作った。二人ともアナベルと同じようにペンダントにしている。


 なるほど確かに、本当にその第2王子との結婚を前向きに考えているのなら、僕の……っていうか他の男の名前が刻まれたアクセサリーなんか、身に付けているはずがないよな。

 これで、さっきのアナベルのまるですべてを受け入れたかのような言葉が、本心からのものじゃないってことは分かった。


 でもだからと言って、彼女を自由にするために僕たちがこの縁談をぶち壊すというのは、正解だとは思えない。

 侯爵家としての立場もあるだろうし、あの気さくそうなお父さんが無理やりにアナベルを従わせているとも考えにくいからだ。

 そうすると、彼女のために僕にいったい何ができるんだろう?





 その日はサラマンティの街で宿を取り、翌日もう一度城を訪れてみたけれど、その時にはもうアナベルは侯爵と一緒に王都ウルベクへ出発した後だった。

 昨日の門衛さんにそれを聞いて急いで後を追ったものの、結局ウルベクに到着するまでそれらしき馬車に出会うことはなかった。


「さすがに王宮にはそう簡単には入れないな」


「そうね。たぶんアナベルはもうこの中にいるんだろうけど……」


「この程度の壁、シモンなら乗り越えるのもぶち破るのもわけないだろ。行っちまおうぜ!」


「そんなことをしたら、落ち着いて話をするどころじゃなくなりますよ」


 アナベルと侯爵の一行は、翌日の顔合わせのために王宮に入っているらしい。

 そこまでは教えてもらったけれど、面会はにべもなく断られてしまった。そりゃまあそうだろうけどね。

 でもこれからどうしよう…… いざとなればプリムラの言うように、強行突入でもする他ないか。


 ……なんて事を考えていると、突然大きな声で名前を呼ばれた。


「あ、やっぱり来ていらしたわ。シモンさまぁーっ!」


 そのよく通る高く澄んだ声に目を向けると、豪奢な馬車の窓から身を乗り出して手を振るシャルの姿があった。

 道行く人たちが、その立派な拵えの馬車とお姫様然りな装いのシャル、そして僕たちとを見比べて怪訝そうな顔をしている。


「シャル、どうやってここへ?」


「叔父さまが、テミニウスの門を使う許可を取ってくださったの。私たちは昨日ウルベクに来たのよ」


 シャルには悪いけど、それだけではちょっとよく分からない。

 そう思って首を傾げていると、シャルの後ろから顔を覗かせたグスタフさんが詳しく説明してくれた。



 なんでもメリオラの周辺6ヵ国の首都には、「テミニウスの門」という相互に行き来できる転移装置が設置された建物があるらしい。

 そう広くはない円形の小部屋に6つの扉が並んでいて、その小部屋への入口であるひとつを除く他の5つの扉は、それぞれ対応する他国の「テミニウスの門」に繋がっている、というものだ。

 これはいわゆるアーティファクトという奴で、はるか昔にテミニウスという人物が作ったということ以外には、ほとんど何も分かっていない。


 扉をくぐるだけで瞬時に他国へ移動できるというのは非常に便利ではあるけれど、それは同時に脅威ともなり得るので、その利用は厳重に管理されている。出発国と到着国、双方の許可がなければ使えない。

 実際上は王族や高位貴族が外交のために利用する場合にのみ、その許可が降りるらしい。



 メリオラで僕たちと別れたグスタフさんとシャルは、すぐに転移の札を使ってカスタール帝国の首都アルバーナに帰り、それからヴィシル王国国王への謁見の予約を取った。

 そしてその謁見のためにテミニウスの門の利用を申請して許可を受け、今日こうして王都ウルベクにいるというわけだ。


 しかも二人は今日まさにこれから、その謁見のために王宮に入るところだと言う。驚くべきタイミングの良さだ。

 僕はシャルとグスタフさんにここまでの経緯を手短に説明し、従者ということで同行させてもらうことにした。



 さすがと言うべきか、カスタール帝国皇子殿下の乗る馬車は、ほぼフリーパスで城門を通過する。

 しかもグスタフさんは、案内役のメイドさんとの何気ない世間話の中で、なんと今アナベルのいそうな場所の見当までつけてくれた。実に頼もしい。


「ところで、姪がここの庭園の美しさにいたく感激してな。私が国王陛下にお会いしている間、その辺を散策させても良いだろうか? 護衛はこちらで付けるので、迷惑は掛けんようにする」


「はい。もちろんでございます、殿下。どうぞゆっくりとご覧になって下さいませ」


 グスタフさんに答えるメイドさんの頬が、ほんのり赤く染まっている。なかなかどうして、隅に置けない。

 そう言えばアルバーナの皇宮でもメイドさんに大人気だったのに、グスタフさんはどうして独身なんだろう?


 そのグスタフさんは、メイドさんが退室すると首尾は上々とばかりにニヤリと表情を弛めた。


「そういう訳だ、シモン殿。もともと謁見はウルベクに来るための口実に過ぎんからな。大した内容があるわけでもないが、ここまで来て会わぬわけにもいかん。そちらは私ひとり居れば十分ゆえ、シャルの事を頼む」


「分かりました。ありがとうございます」


「礼は要らんよ。私が好きでしている事だ」


「あの……グスタフさんは、第2王子さんのことを何かご存知ですか?」


「アンドリュー殿のことだな。確か今年で18歳になる。目立った才はないが、実直な人物だ」


「そうですか……」


 王族で悪い評判はなく、15歳のアナベルとは歳も近い、か。

 いっそクラリスの時のムラーノ伯爵三男みたいなヤツだったら良かったのにな。それなら僕だって……


「それでは行ってまいります、叔父さま。……さ、シモンさま」


 シャルが焦れたように僕の腕を取って歩き出す。

 パトリシアたちもそれぞれグスタフさんにお礼を言って、その後に続いた。

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