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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第六章

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6-7 文句を言ってやるんだから!

 事情があり、このたび故郷に帰ることになりました。

 短い間ではありましたが、楽しい日々とたくさんの思い出をありがとうございました。皆さまのことは決して忘れません。

 どうかお元気で。



 たったこれだけの文面の置き手紙があったのは、食堂のテーブルの上。早朝にクラリスが見つけたらしい。

 その手紙を読んだ彼女が急いでアナベルの部屋を確認するも、そこにはもうアナベルの姿はなく、続いて起き出してきたプリムラとパトリシアにも心当たりは何もない、と言うことだった。


 そう言えばアナベルについて、昨日の朝から少し様子がおかしかった、とパトリシアが言っていたな。

 そして夜中のあの出来事だ。この置き手紙の内容と無関係のはずがない。


「シモンはアナベルから何も聞いてなかった? 何か心当たりはない?」


「いや、僕も何も聞いてない。ところで、アナベルの故郷ってどこなんだ?」


「それが…… 誰も知らないのよ。シモンは知ってるんじゃないかと思ってたんだけど……」


 驚いたことに、誰もアナベルの出身地どころか生国すら知らなかった。

 これだけ長く一緒にいたんだから、誰か聞いていそうなものなのに。


「こんな置き手紙ひとつだけで黙っていなくなるなんて、絶対にアナベルらしくないわ。きっと故郷で何かあったのよ。……助けてあげなきゃ」


 パトリシアには、アナベルが何かトラブルに巻き込まれているという確信があるようだ。

 普段から口喧嘩ばかりしているように見えるけど、実はけっこう仲がいいんだよな。この二人。


「アナベルはサブレイオン神殿の巫女だったんですから、神殿に聞けば出身地くらいは分かるんじゃないでしょうか?」


「そうね! クラリスの言うとおりだわ!」


「それじゃあ今から神殿に殴り込みだな。行こうぜシモン!」


 殴り込みじゃないよ、問い合わせに行くんだよ、プリムラ。

 でも、いつもそう言いながら、結局最後は実力行使になっちゃったりしてるよな。穏便に行こう、穏便に。





「神殿の巫女の多くは、各国貴族家の令嬢です。いくら勇者様とは言え、そのようなご質問にお答えするわけには参りません」


「そこを何とかなりませんか?」


「当神殿の信用にも関わる事柄です。どうかお引き取り下さい」


 僕たちはすぐにサブレイオン神殿を訪れ、アナベルが5年間所属していたという修道院の院長に面会させてもらったけれど、結果はこの有様だ。

 向こうの言っていることは文句のつけ所のない正論なので、これ以上食い下がっても対応は変わらないだろう。


 ただそうは言っても、こちらも簡単に諦めるわけには行かない。

 それでしばらく押し問答を繰り返していると、そこを通りがかった立派な神官服を身につけた初老の男性が話しかけてきた。


「おお、これは勇者シモン様。おはようございます。今日はどうなされましたか?」


 わりと気さくな感じで挨拶をしてくれたこの男性は、たしか新しく就任した最高神官長だ。

 僕が以前、勇者の再召喚を止めさせるために神殿騎士団をぶっ潰した時に、その後始末をしてくれた人たちの中の一人だな。


 ダメ元で事情を説明してアナベルの実家について聞いてみると、最高神官長は顎に指を当てて考える仕草をしたあと、院長に話しかけた。


「元巫女のアナベルに関する書類は、まだ保管していますか?」


「はい、勿論です最高神官長」


「出奔した者の書類など、残しておいても仕方がないでしょう。私が廃棄しておきますので、ここへ持ってきて下さい。私に手渡す際には、くれぐれも部外者の目に留まらないように注意して下さいよ」


「……承知致しました」


 なぜか少し嬉しそうな表情で奥へ引っ込んで行った院長は、一枚の紙切れを持って戻ってくると、ちょうど僕たちの目の前で大袈裟に躓いてそれを取り落とした。

 わ、わざとらしい……


 そんなわけで、書類に記されたアナベルの本名と実家の住所を偶然目撃してしまった僕たちは、黙礼だけで感謝を告げて神殿を後にした。





 アナベル・マリア・ガトールフィン。ヴィシル王国ガトールフィン侯爵家の三女。それがアナベルの本名だった。

 あのアナベルが侯爵令嬢とか、ちょっと予想外すぎて困る。


 ヴィシル王国は独立都市メリオラを囲む6国のうちのひとつで、メリオラからは真北に位置している。東にカスタール帝国、西にはレトナク王国と、二つの大国に挟まれた小国だ。

 国土のほぼ中央に位置する王都ウルベクまでは馬車で10日、ガトールフィン公爵領はそこからさらに2日ほど北へ進んだところにある。そのあたりまで行けば、今頃はもう積雪があるだろう。


 ……と言うようなことを、グスタフさんが教えてくれた。


「それなら、今からシモンのクルマで追いかければ……」


「いや。侯爵家の子女ともなれば当然、何かあった時のために転移の札を持っているはずだ。そうであれば、女性一人でわざわざ馬車で移動するとも思えん。今頃はもうガトールフィン領に戻っているだろうな」


 転移の札というのは帰還の護符と同じで、特定の場所にだけ転移できる効果を持つ魔道具だ。グスタフさんやシャルも持っていて、万が一の時にはこれを使って一瞬で帝都アルバーナの皇宮に帰ることができる。

 グスタフさんを含む勇者ミツルの一行が「果てなき樹海」から帝都に戻る時に使っていたのもこれだ。

 たぶんアナベルも実家へ戻るための転移の札を持っていて、それを使って今朝早くか夜のうちに帰ったのだろう。


 という事は、アナベルは昨日の朝にはもう実家から何か危急の報せを受け取っていて、それで様子がおかしかったんじゃないか?

 その報せが何なのかは分からないけど、もう僕たちと一緒にはいられない事情ができてしまって、昨夜はそれで動揺してあんなことをしてしまったんじゃないか?

 侯爵家といえば貴族の中でもかなり上位だ。他の貴族家との政争か、後継者争いか、それとも……


 いや、悪い想像ばかりしてみてもしょうがない。何があったのかは会って話せば分かることだ。

 その上で、何か僕にできることがあるのなら喜んで手を貸そう。


「よし、行こう。ハンヴィーなら飛ばせば3日だ。もしアナベルに何かあったとしてもきっと間に合うし、行ってみて何もなければそれはそれでいい。その後のことは向こうで考えよう。それでいいかな?」


「もちろんいいわ、すぐに出発よ! 絶対に会って一言文句を言ってやるんだから!」


「おれもいいぜ。……いや待てよ、家を空けるとなると痛みやすい食材が……」


「私もお供します。お役に立てるかどうかは分かりませんが」


「シモンさま、私も連れて行ってください! ううん、私も行きますっ!」


 パトリシア、プリムラ、クラリスはいいとして、シャルまでが強い口調で一緒に行くと主張してきた。

 その気持ちはありがたいけど、仮にも皇女様を往復だけで数日かかってしまうような所へ連れて行ってもいいものだろうか?


 そう尋ねるようにグスタフさんを見ると、彼は難しい顔でううむ、と短く唸ってから口を開いた。


「……私とシャルはシモン殿に同行する事はできんが、別ルートでウルベクへ向かおう。私の肩書きが何かの役に立つことがあるかも知れんからな。それで良いか、シャル?」


「はいっ。叔父さま、ありがとう!」


 これで全員のヴィシル王国行きが決定だ。

 そうと決まれば、急ぐぞ!

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