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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第六章

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6-4 これ、気に入ったぜ。

 結局、グスタフさんの助言に従い、前回の行動をなぞって脱出することになった。

 先に進むことを提案したプリムラはもちろん、何故かパトリシアとアナベルまで大喜びだ。


「これでまたシモンさまの勇姿を見られますね」


「そうよ、あの時のシモンはすっごく格好良かったんだから! ……も、もちろん今でも格好いいけど」


 ……まあそれはいいとして。もし本当にあの広間にまたアダマンタイトゴーレムが出現するなら、それは僕にとってもありがたい話だ。

 あの時は一歩……いや十分の一歩でも間違えれば即死っていうギリギリの状況だったけど、今の僕の装備ならもっと余裕を持って戦えるだろう。


 ただその前には、巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)のうようよいる通路を突破しなければならない。

 あいつらには魔法が通用しないし、グスタフさんはともかくプリムラのサーベルやアナベルの棍ではなかなか倒しきれないだろう。あれを倒すには20ミリ弾丸ゴーレムが必要だ。

 とりあえず、彼女たちの武器だけでも作っておこう。


 パトリシアには以前からあるレミントンM870を使ってもらうとして、あと最低でも前衛の二人には有効な武器を持っていて欲しい。

 そこでプリムラには同じくショットガンのウィンチェスターM1887ソードオフ、アナベルにはグレネードランチャーのコルトM79を真似た銃を作って渡しておいた。どっちも某有名シリーズ映画の二作目でマッチョなアンドロイドが使っていたヤツだ。

 コルトM79の実物は口径40ミリなので、ついでにちょっとだけスケールアップして20ミリの3連装に魔改造した。一斉射すると反動が凄いことになると思うけど、アナベルなら何とか使いこなしてくれるだろう。



「よし、それじゃあ行こうか!」


「ちょっと待ってくれよシモン。まだ5回に1回は失敗しちまうんだ」


 何のことかと思えば、プリムラがアナベルの指導のもと懸命に片手でスピンコックの練習をしていた。コッキングレバーを支点に銃本体をくるりと一回転させて廃莢、次弾の装填をするアクションだ。

 いやいや、コックレバーは例によって飾りで、実際にはセミオートだから。コッキングしなくても撃てるから。てか何でアナベルはそんなテクニックを知ってるんだよ! それをこの短時間で80パーセント成功させるプリムラも大概だな。

 おまけにグスタフさんまで腕の出し方をもっと速くした方が良いのではないか、とかアドバイスしてるし。ちょっともう勘弁してください。



 一呼吸置いて、仕切り直し。


「行くぞっ!」


 僕は通路に繋がる扉を開け、勢いよく小部屋から飛び出す。

 通路にひしめく巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)を避けて数歩走り、フレックスアーマーのパワーアシストの出力を上げてジャンプした。


「ギガンティック!」


 空中で大量のミニゴーレムが湧き出して僕を包み込み、瞬時に全高3メートル、重量1トンの巨人へと変化。

 手にはスケールアップ版のFN SCARを装備して、手近な巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)の上に着地し、これを踏み潰す。そしてその場で腰を落とした姿勢のまま、ぐるりと回って20ミリ弾丸ゴーレムをバラ撒いた。

 弾丸ゴーレムたちは、ギガンティックと同じくらい巨大な巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)に着弾すると、その硬い殻を軽々と突き破って体内に侵入。そこで〈フレイム〉や〈エクスプロージョン〉の魔法を発動させて、次々に魔獣を倒していく。


 よし、なかなか上手くいった。

 最初は小部屋の中でギガンティックを装着して通路へ出ようとしたんだけど、それだと扉が小さすぎて通れなかったんだよな。


 後方では、僕がさっきの斉射でこじ開けたスペースにパトリシアたちが展開して、危なげなく魔獣を掃討していた。

 思った通り、グスタフさんは自前の剣で魔獣の巨体をものともせずに切り伏せている。シャルも鏃に20ミリ弾丸ゴーレムを装着した特製の矢を次々と放って、着実に敵の数を減らして行く。

 クラリスは…… なぜか最前列にいて、きゃあきゃあ騒ぎながら大盾で巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)を殴り倒していた。


 あとであの大盾にも銃を仕込んでおいてあげよう。危ないから。





「ありがと、シモン。前はあいつに手も足も出なかったから、仕返しできてすっきりしたわ」


「これは素晴らしい武器ですね。この鎧とセットでなければ撃てないとは思いますが」


「これ、気に入ったぜ。もうちょっと借りといてもいいか?」


「それはプリムラにあげるよ。アナベルとパトリシアの銃も。使わない時はプリムラの〈ストレージ〉にしまっておいてくれないか」


「本当かよ!? ありがとう!」

「あたしは二つ目ね。大事にするわ」

「これをシモンさまだと思って、今夜から抱いて寝ることにします」


 プレゼントすると言ったら、みんな喜んでくれた。

 前にも思ったことだけど、女の子が銃をもらって喜ぶってどうなんだろう?


「はぁ…… 少し疲れました……」


「クラリスさんは、無理に前へ出て戦わなくてもいいと思うの」


「うむ。だがやはりスジは悪くないな。少し鍛えれば頼りになる盾術士になれるだろう」


「ありがとうございます……」


 クラリスは、疲れた様子でシャルに(いたわ)られながら歩いてきた。

 いやグスタフさん、彼女は別に頼りになる盾術士にならなくてもいいんですよ。シャルの言っていることが正解です。



 そんな具合で、前回はけっこうヘトヘトになるまで戦って殲滅した巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)の群れとの戦闘も、今日は楽勝だった。

 そうして僕たちは小部屋から出て右手の突き当たりにある、広間の扉の前で一息つく。この扉の位置関係も前と変わらない。やっぱりここは同じ場所で間違いないな。


 全員が落ち着いたところで、僕は広間の扉を少しだけ開いて中を覗き見た。正面奥に両開きの大扉が見える他には何もなし。がらんどうだ。

 前回は中に入った途端、右手前の壁を破ってアダマンタイトゴーレムが現れた。そこが最も警戒するべきポイントだ。


「まず僕だけで突入して、ゴーレムが出てくるかどうか確認する。みんなはここで守りを固めて待っていてくれ」


「……分かったわ。もし前と同じ敵が出てきたら、あたしたちじゃシモンの邪魔をするだけだもん。でも、絶対に無理はしないでね」


「ちぇっ。パトリシアがそう言うんなら、しょうがねぇな。大人しく待っていてやるよ」


「プリムラちゃんが大人しく待つくらいですから、私も我慢しましょう」


「皆さんは私がしっかりお護りします。シモンさんは広間の敵に集中して下さい」


「確かにアダマンタイトの塊が相手では、私たちには手の出しようがないな。申し訳ないが、ここはシモン殿にお任せする」


「ご武運を、シモンさま」


 武装をFN SCARからM61バルカンに持ち替え、みんなの見送りを受けながら僕はゆっくりと両開きの扉を開けて広間に侵入した。

 まずはぐるりと周囲を見渡すけど、やっぱり何もいない。以前アダマンタイトゴーレムが破壊したはずの右手前の壁面も、すっかり元通りで傷ひとつない。


 それなら先制攻撃を仕掛けてみるか。そう考えて右手前の壁に向かって歩き始める。

 だけど左手前の壁も怪しいんだよな。前はこっちだったから今度は逆方向から、とか。左右対称で作りは同じだし、いかにもありそうな展開だよね。


 すると突然大きな破砕音が響いて、何か巨大なものが頭上から落ちてきた。

 うええぇっ、そんなのもアリなの!?


 僕は咄嗟に床に身を投げ出し、一回転して落下物の下敷きになるのを回避した。素早く立ち上がって振り返ると、そこに見えたのは全高4メートルの黒鉄色の巨人、間違いなくアダマンタイトゴーレムだ。

 期待していた超希少金属の塊が現れたことを喜ぶ間もなく、アダマンタイトゴーレムは見た目を裏切る素早い動きで殴りかかってくる。

 その巨大な拳の急接近に、近接自動防御機能が発動して第三の腕が攻撃を受け流す。補助腕を構成するミニゴーレムをバラバラと弾き飛ばされながらも、どうにかこれを躱した。


 焦った…… めっちゃ大迫力。


 攻撃を外されて体勢を崩したアダマンタイトゴーレムから急いで距離を取り、僕はM61バルカンを構えた。

 まずスパイクを床に打ち込んで身体を固定。続いて鋭い金属音を響かせて6連装のバレルが回転し、そこから毎秒100発の20ミリ弾丸ゴーレムが撃ち出される。今回はいつもの鋼芯フルアダマンタイトジャケットではなく、久々に100パーセント無垢のアダマンタイト弾だ。


 狙い通り敵の胴体胸部に着弾した弾丸ゴーレムは、その構成素材であるアダマンタイトをガリガリと削り取っていく。

 瞬く間に胸部に大きな凹みを作ったアダマンタイトゴーレムが、それをM61の射線から隠すように身を捩った。


 逃がすもんか。


 ギガンティックの背中から、一本の太く長い筒が伸びる。右肩に担ぐような格好で形成された全長2.5メートルを超えるその筒は、新開発の24口径8.8センチ砲だ。

 圧搾空気の使用量の都合から、いったんM61バルカンの斉射を中止する。12基のコンプレッサーから送られる空気を限界までタンクに溜め込み、それを一気に解放して直径8.8センチ、長さ35センチで20キロ近い重量を持つアダマンタイトの砲弾を亜音速まで加速する。


 ドッゴオオオォン!!


 あまりの反動の強さに、床にしっかりと打ち込んだはずのスパイクが抜けてたたらを踏む。このたった一発で、アダマンタイトゴーレムの胸から上が砕け散った。

 その断面に、明らかに金属ではない滑らかな光沢を持つ拳大の球体の一部が見える。それは自律型ゴーレムの動力源である魔晶石だ。

 完全に空になった圧搾空気タンクのせいで、すぐには撃てないM61を再びFN SCARに持ち替え、その魔晶石を狙い撃つ。


 パキン、と軽い音を立てて魔晶石は粉々になり、巨大で強力なゴーレムはもうそれ以上動かなくなった。

 ……やった。今回は正面からの力押しで勝ったぞ!



「シモン、すっごーい! あっという間に勝っちゃった!」


「まだ耳がキーンって鳴ってますよ」


「最後のあのデカいの、あれ、おれにも撃たせてくんないかな?」


「いや、とんでもない戦いを見せてもらった。まったく何もかも別格だな、シモン殿の力は」


 アダマンタイトゴーレムとの戦いが終わり、みんな口々に何か言いながら僕の所へ集まってきた。

 けど、実は耳鳴りが酷くて何も聞こえない。たった一発でこれじゃ問題だ。何か対策を考えなきゃだな。



 アダマンタイトゴーレムの残骸をひとつ残らず回収し、少し休んで聴力が回復してから、奥の扉をM61バルカンでぶち破って中の小部屋を確認する。

 前回はここに山ほどの財宝があったんだけど、今回は空っぽだ。どうやらこっちは復活しなかったみたいだな。でもパトリシアとの脱出時に開けたはずの壁の穴は、もうどこにも見当たらない。


 グスタフさんの言葉通り、できるだけ前回と同じ状況を作るために、パトリシアと二人で相談しながら再び壁に穴を開ける位置を決める。

 場所が決まれば、あとは掘るだけだ。ギガンティックの手をスコップのように加工して、ガシガシと掘り進んでいく。ものの数分で7人全員が一度に入れる大きさの穴ができあがった。


「それじゃ、帰ろうか」


 みんなで穴に納まり、それぞれ帰還の護符を発動させる。7枚の護符の消費は痛いけど、手に入れた素材の価値に比べれば微々たるものだ。

 一瞬の浮遊感があって転移は成功し、僕達は揃って「地下城」入口近くへと帰還した。

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