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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第六章

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6-3 少しも怖くなんかないわ

 扉の隙間から覗き込む小部屋には、天井にぶら下がる1匹の大コウモリ(キラーバット)。ここから見える範囲に他の魔獣の姿はない。


 あの高さじゃ、前衛のプリムラやアナベルの攻撃は届かないかも知れないな。飛ばれでもしたら尚更だ。

 時間は昼前。ここまですでに5つの小部屋を難なく攻略して、プリムラの戦闘意欲もそこそこ満たされている。ここはパトリシアの攻撃魔法か僕のFN P90で安全に片付けるか。

 まず正面の大コウモリ(キラーバット)をパトリシアに倒してもらって、左右の死角を僕とアナベルたちで分担して……


「シモン、ちょっと」


「ん?」


 突入手順を考えていると、後ろからパトリシアが僕のヘルメットをとんとんとつつきながら囁く。

 何だろうと振り向くと、彼女は小さく指先だけでシャルを指し示した。その先でシャルがそわそわしながら、扉の隙間を覗き込もうと身体を動かしている。


 ああ、なるほど。そう言えばシャルはここまで後方で護られているだけだったもんな。さすがに退屈してきたか。


「アタックだ。手前右をアナベルとプリムラ、左を僕が警戒して、正面天井にいる大コウモリ(キラーバット)をシャルが攻撃してくれ。パトリシアはそのサポート、クラリスとグスタフさんには二人の防護を頼みます」


「いいぜ」

「了解です」

「まかせて」

「はい、頑張りますっ」

「うむ」


「えっ、私? いいの?」


「見てごらんシャル、魔獣の位置はあそこだ。僕が合図したら弓を引いて、扉が開くと同時に狙って撃つ。そのあとの事は矢に任せればいい。必ず当たるから心配ないよ」


「もしもシャルの弓で倒せなかった時はあたしの出番よ。安心して」


「は、はいっ。やってみるわ!」


 シャルは胸の前でむんっと両拳を握り、左腕の弓を展開した。

 最初は驚いたみたいだけど気合いは十分だ。緊張の面持ちで弓を構える彼女の前にクラリスが入り、大盾で壁を作る。僕とアナベルたちが扉の左右に別れて、準備完了だ。


「弓を引いて…… 撃てっ!」


 合図の一瞬前に扉を開け放つ。シャルが引き絞った弓を離し、ヒュボッ、と短く空気を切り裂く音がして矢が放たれる。


「きゃっ!?」


 たぶん弓の反動でよろめいたのだろう。矢はあらぬ方向へ飛んで行ったが、すぐに急カーブで方向を修正して大コウモリ(キラーバット)の頭のど真ん中を撃ち抜いた。

 魔獣はサラサラと崩れ去り、一粒の小さな魔晶石がこつんと床に落ちる。

 そしてその時には僕とアナベル、プリムラはもう小部屋に突入していた。手前左右に敵影なし。制圧完了だ。


「……あ、当たったわ、シモンさま!」


「お見事!」

「やったわね、シャル」

「ちぇ。もう一匹くらいいてくれよな」

「私はラクができる方がいいんですが」

「そうですよ。何事もないのが一番です」


「ほう、面白い。矢羽が動いて軌道を変えるのか。まさに必中の矢だな」


 あんな高速で飛ぶ矢の形が見えてるの、グスタフさん!?



 魔獣を排除して魔晶石を拾い、この小部屋が安全地帯となったところで、そろそろ昼食を摂っておこうということになった。

 でも万一に備えて、フレックスアーマーは装備したままだ。「果てなき樹海」での魔王の一件もあるからね。世の中、油断していると何が起こるか分からない。


 食事のために〈ストレージ〉からテーブルセットを取り出そうとすると、突然キイィィンッという耳障りな音がして、小部屋の床全体が光り始めた。

 その白い光は瞬く間に僕たちを飲み込み、視界がゼロになる。自分の体以外には何も見えないし、物音も聞こえない。


「パトリシアっ!!」


 ついさっきまで彼女がいたあたりに手を伸ばそうとしたところで、どこか覚えのある浮遊感に包まれた。

 それはまるで、帰還の護符を使った時のような……



 その時、僕の手が何かを掴んだ。同時に白い光が薄れ、視界が回復してゆく。


「シモン!!」


 握った手の中にあったのは、パトリシアの腕だった。どうやら彼女も僕の方に手を伸ばしていたらしい。急いで引き寄せ、背に庇う。

 FN P90を構えて周囲を見回すと、アナベル、プリムラ、クラリスにシャル、グスタフさんと、全員の姿が確認できた。

 ……それと、5匹の牛並みの巨躯をもつ黒い犬、ヘルハウンドも。


「ふんっ!」


 最初に動いたのはグスタフさんだ。振り下ろした剣が1匹のヘルハウンドを両断する。


 タタタタタタタタンッ!


「うりゃっ!」

「てい!」


 続いて僕が2匹を撃ち抜き、プリムラとアナベルが1匹を始末。

 残る1匹は……


「いやあああああっ! えいっ、えいっ! たあ!」


 クラリスが、シャルを護りながら2枚の大盾でボコボコに叩きのめしていた。





「部屋ごとの転移罠か。まさかあのような低層でこんな大掛かりな罠に遭遇するとはな」


「すみませんグスタフさん。僕の油断です」


「ただ運がなかっただけだ。シモン殿のせいではないよ。しかし参ったな、転移の護符が発動しないとなると、今日中の帰還は難しいか」


 そう、さっきの光は転移罠だった。そして転移の護符を阻む結界に、ヘルハウンド。

 小部屋の外の通路を覗いてみると、そこにいたのは予想通り、全長3メートルの巨大ダンゴムシ(ギガントピルバグ)の群れ。


「ねぇシモン、ここってまさか……」


「うん、前に来たことのある通路みたいだね」


「おおー。ここがそうか」


「ちっ。このイベントさえなければ、シモンさまは私だけのものでしたのに」


「何言ってんのよ、このことがなくてもあんたのじゃないわよ!」


 アナベルがまた何か妙なことを口走ってパトリシアときゃあきゃあやり合っているけど、彼女たちはこの転移罠の一件をパトリシアから聞いて知っている。

 なので僕は残る3人に、すぐに脱出できる方法がある事をざっと掻い摘んで説明した。


「なるほどな…… それはまた、シモン殿ならではの方法だな。私たちだけでは何日かかるか予測もつかんところだ」


「じゃあ、ちゃんと帰れるの?」


「ああ。大丈夫だよ、シャル。怖い思いをさせてごめん」


「ううん。シモンさまと一緒だから、少しも怖くなんかないわ」


 少し頬を染めながらそんなことを言うシャルの声に、パトリシアとアナベルの舌戦がぴたりと止んだ。


「ちょっとアナベル。こんな事をしてる場合じゃないみたいよ」

「まったくです。一時休戦しましょう」

「……わ、私も。私も怖くないです、シモンさん」

「しれっと何言ってるんですか、クラリスさんもこっち側ですよ!」

「ああっ……」


 なんか緊張感ないな……

 前の時と比べると装備も戦力も段違いだし、しょうがないか。


「それじゃあさ、この先にデカいゴーレムがいるんだろ? どうせならそいつ倒してから帰ろうぜ」


「一度倒したからもういないかも知れないし、いたとしたらそれはそれで危険だよ」


「えぇーっ。そんなこと言わないで行こうぜ」


「でもなぁ……」


「いや、シモン殿。万全を期すなら、前回と同じ方法と状況で転移の護符を使うべきだ。プリムラの言うことにも一理はある」


「さっすがグスタフ、話が分かるじゃねぇか!」


 助け舟を出したグスタフさんの背中を、プリムラがバシっと叩く。

 て言うか呼び捨て!? 相手は皇子様だぞプリムラ。

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