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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第五章

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5-12 もう一度だけチャンスを与えてやる。

 街に蔓延(はびこ)るならず者たちをどうすればいいか、僕なりにいろいろと考えてみた。


 まず、皆殺しは除外。

 確かに殺してしまえば再犯は起こらないけど、これはあんまりにも乱暴すぎる。それに第一、僕の精神的にも無理だ。


 次にメリオラからの追放。

 たとえ二度とメリオラに戻ってこられないようにできたとしても、他の街で悪事を働いたり野盗になったりするだけなので無意味。


 そして、一般社会からの隔離。

 要するに監獄に入れるとか島流しにするとかって事だけど、どちらにせよそれなりの設備や運営管理者が必要だし、費用もかかる。

 今の僕の手持ちならできないことはないだろうけど、実際にそれをするのは馬鹿馬鹿しい。


 よって理想的なのは、メリオラで暮らさせながら悪事を働かないよう常時監視し、違反すれば罰を加えること。

 では、いったい誰がそれをするのか。どうすればそれが可能となるのか。そこでいよいよ僕のゴーレムの登場ってわけだ。





「テメェ何のつもりだコラ! 離しやがれこの〇〇野郎!!」


 仕込みは完了したので、状況説明と見せしめのためにボスのラゲドを拘束したまま宙吊りにした。

 ギャーギャー汚く喚き散らしているけど放っておく。


「黙ってよく聞け! 今、お前たち全員に呪いを掛けた! 悪事を働くと恐ろしい罰を受ける呪いだ!」


 僕がそう大声で宣言すると、拘束された男たちから失笑が漏れた。全く本気にしていない、何を馬鹿げたことを、という笑いだ。

 この反応は想定内。むしろここはそう思っておいてもらった方が、この後のデモンストレーションの効果が上がる。


「けっ。何を言い出すかと思えば、呪いだぁ罰だぁ? ガキじゃあるまいし、そんなチンケな脅しが通用するわけねぇだろこの〇〇がっ!! やれるもんならやってみろ!!」


「いいだろう。それならお前自身の体を使って、実際にどんな罰が下るのかを見せてやろう」


 こちらの注文通り、勢いよく啖呵を切ったラゲドに向かって、僕はパチンと指を鳴らす。

 すると彼の右腕が指先の方から順に5センチほどの輪切りになって、大量の血液とともにボタボタと床に落ちていった。


「ーーー!!!ーーーーー!!ーーーーーーー!!!」


 その激痛と恐怖に、ラゲドが声にならない悲鳴を上げる。

 言うまでもなく、これは彼の体内にいるナノゴーレムたちの仕事だ。切断面に集合して組織を切り離し、移動してはまた切断を繰り返す。

 切断面を放っておくと出血多量で命に関わるので、適度に止血しておくことも忘れない。


 輪切りは右腕だけに留まらず、左腕と両脚の膝下も同様に切り落とされて行く。

 その効果は抜群で、実際に痛い目にあっているラゲドはもちろん、ギャラリーたちも顔面蒼白だ。

 よし、そろそろ止めを刺そう。僕がもう一度指を鳴らすと、ラゲドのズボンの股間が鮮血に染まり、彼は一際奇怪な叫び声を上げたあと泡を吹いて失神した。


 現物は見えていないけど、今ので彼の股間がどうなったのかを想像できない者はいなかったようだ。みんな心持ち内股になっている。

 そしてもちろん、僕も例外じゃない。痛たたた…… ちょっと目の前がクラクラしてきたけど、もう一仕事残っているので小さく頭を振って気を取り直す。


「これを見てもまだ、自分自身の置かれた立場が理解できないような馬鹿はいないだろうな? 今後ずっと、お前たちは見張られている。そして盗み、詐欺、脅迫、暴行、その他メリオラの法に定める禁固刑以上に相当する犯罪を犯したとき、お前たちはこうなる。分かったか!?」


 そう言って見回すと、100人の男たちが無言のまま一斉にコクコクと頷いた。

 よしよし。それじゃあラゲドを救っておこう。僕は〈ストレージ〉からエルフの霊薬を一服取り出して、気絶したままの彼の口に流し込んだ。


「この愚か者にも、もう一度だけチャンスを与えてやる。真っ当に生きていれば20年ほどで呪いは解けるだろう。街の人の役に立つ事をすれば、解呪はもっと早まるぞ。ちゃんと理解できたか!?」


 再び無言の頷き。


「理解できたのなら返事をしろ愚図ども!! それとも、もう一人二人犠牲にならないと理解できないのか!?」


「「「「「完全に理解できました!」」」」」


 少し脅すととてもいい返事が帰ってきた。そして霊薬を飲ませたラゲドは、見る見る手足が再生を始めている。すごい。本当によく効くなぁ。

 ちなみに「呪い」の持続期間として設定した20年間というのは、行動監視用のナノゴーレムたちの寿命だ。今、男たちの体内には100億体程度のナノゴーレムがいるけど、そのほとんどは「罰」の実行まで休眠状態でいる。行動監視用に常時活動するのは数百体で事足りるので、そうそう魔力が尽きることはない。


 それから僕は、意気消沈してまるでこの世の終わりみたいな顔をした男たちの拘束を解き、解散させた。





「見事なお手並みだったな、シモン殿」


「いえ。これが本当に上手く行けばいいんですけど」


「心配は要らん。何人かは禁を破る者も出るだろうが、その者たちの末路が抑止力になる。ぜひ帝国でも採用するよう進言したいところだが、シモン殿の力がなければ実現できんのが残念だな」


 ベックたちを家に送り届けた後の帰り道。

 グスタフさんは、カスタール帝国でもこの方法を取り入れられないものかと、かなり真面目に検討しているようだ。


 量刑、四肢及び〇〇切断。執行猶予20年、保護観察付き。


 そう言葉にしてみると、かなり重い刑罰のような気もしないではないけれど、要は今後犯罪に手を染めずに生きてくれればいいだけの事だ。

 でもそれに反すると、いきなり手足がポロポロ切り落とされることになる。できれば見たくない光景だな。

 とは言え一応、死なないように加減はしてあるし、この世界には手足くらいなら問題なく再生できる魔法や薬もあるので、これはこれでそこそこ妥当な刑罰なんだと思うことにしよう。





 数日後、食材を買うために午前の早い時間に市場へ行くと、道端に落ちている屋台料理の食べ残しやゴミをせっせと掃除している人がいた。

 それも一人や二人じゃなく、あちこちで同じような事をしている人を見かける。


 仕事じゃなく善意でやってるんだろうか。立派な心掛けだなぁ、なんて思いながら通り過ぎようとすると、突然その中の一人に話しかけられた。


「あ。こりゃあシモンの兄貴と姐さん方、お早うございます!」


「えっ?」


 名前を呼ばれたけれど、その顔には見覚えがない。誰だっけ?

 それに、向こうの方が明らかに年上なんだから、僕に対して「兄貴」はないだろう。


「憶えておられませんか。以前、あっちの裏通りで……」


「ああーっ! もしかして、あたしたちに絡んできてシモンにやっつけられた人!?」

「今日は以前よりサッパリした格好ですね。それでもお誘いは断固お断りしますけど」

「おっ、仕返しか? なんなら今日はおれが相手してやるぜ?」

「あの皆さん、あんまり挑発するような事は……」


「いえいえ、そんなつもりはこれっぽっちもありませんよ。ナニをちょん切られるのは御免ですからね。それよりも、兄貴のお陰で真面目に生きて行く踏ん切りがついたって言うか、綺麗さっぱり足を洗えたことに感謝してるんです」


 あー、あの時の元ラゲドファミリーの一員か。

 アジトでの一幕では僕は顔を見せていなかったけど、パトリシアたちに絡んできた男たちの一人なら僕の顔を覚えていても不思議じゃない。


「このゴミ拾いだって、以前は他人のためにタダ働きするような奴は底抜けの馬鹿野郎だなんて思ってたんですけど、やってみるとこれがなかなか気持ちのいいもんで。自分のした事を他人に感謝されるってのも久々に味わうともう、病みつきですよ」


 それだけ言うと、男はまた黙々とゴミ拾いの作業に戻って行った。

 最初から最後まで、ずっといい笑顔だったな。あれじゃあ、もし以前の顔を覚えていたところで誰だか分からないよ。

 あとはこのまま順調に更生してくれればいいんだけど。


「シモンのお陰で、メリオラはまたちょっといい街になったわね」


「僕は何も大した事はしてないし、メリオラは元からいい街だと思うよ」


「なぁシモン。さっきアイツが言ってたナニをちょん切るってのは、何をちょん切るんだ?」


「ナニと言えばもちろんアレの事ですよ、プリムラちゃん」


「だからそのアレってのは何なんだよ?」


「……あ、アレを……うぁ……」


 クラリスが真っ赤になって俯き、アナベルが仕方がないですね、と前置きしてプリムラに耳打ちをする。

 そのプリムラのきゃああという可愛い悲鳴に合わせるようにして、パトリシアが僕の左腕を抱えこんだ。その後はいつものように、パトリシアとアナベルの舌戦だ。


 平和だなぁ。

 これからもずっと皆とこうしていられれば…… って、それじゃあパトリシアとの仲が進展しないよ。ダメじゃん。

第五章終了です。次章が最終章となります。

次回も金曜日に投稿予定です。

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