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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第五章

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5-5 まあ、シモンがそう言うなら

「お風呂を作り直すの、シモン?」


「いや、ちょっと改造するだけだよ。パトリシアが付きっきりでお湯の温度を見なくてもいいようにね」


「本当に? 実を言うと、毎日じゃちょっと大変かなって思ってたの。嬉しい!」


 朝食の片付けが済んでから、僕は風呂場を改装すると宣言して外に出た。新たに作る給湯設備は屋外に設置する予定だからだ。もちろんパトリシアだけじゃなく、他のみんなも付いてきている。

 今回作るのは、ヒートポンプ。電気給湯器やエアコンに使われている熱交換技術だ。もちろん今回は電気は使わず、動力はゴーレムと僕の魔力で代用する。


 本格的な工作の前に、まずはちょっと実験してみよう。


 ミニゴーレムたちを使って水槽を作り、アナベルとプリムラの魔法で水を張ってもらう。

 そこへM61バルカンに使っている圧縮空気タンクを沈め、コンプレッサーを作動させて一気に空気を送り込み、圧縮する。するとすぐに水没しているタンクの表面からふつふつと泡が立ち始め、十数秒後には水槽の水全体が沸騰を始めた。おお、凄い。成功だ。


「わぁ。すぐにお湯が沸きましたね」


「おや? ですが、シモンさまには確か火魔法の適性は……」


「うん、ないよ。これはただゴーレムの力で空気を圧し縮めただけなんだ」


「……はい?」


 ヒートポンプは、断熱圧縮という現象を利用して高熱を発生させる仕組みだ。たとえばシリンダーに閉じ込めた常温の空気を一気に10分の1ほどの体積に圧縮すれば、その温度は瞬間的に数百度にも達する。

 これは紙や乾燥した植物を自然発火させるのに十分な温度で、実際、この原理を使ったアウトドア用の発火装置もあるくらいだ。


 逆に、水に熱を奪われたこの圧縮空気を一気に元の体積に戻してやると……


「きゃあああっ!?」

「うわ冷てぇっ!」

「やめて下さいシモンさま、向けるならパトリシアさんの方へっ!」

「何でよっ!? ちょっ! ひゃああんっ!?」


 ……てな感じで、同時に氷点下数十度の冷気を作ることもできる。



 とりあえず実験は成功。この方法が十分に実用に足ることは分かった。

 なので、いきなり業務用冷凍庫なみの冷気を浴びせられた女性陣からの非難の視線を浴びつつ、僕は本格的な工事に取りかかることにした。


 まずは大型の貯水タンクを作り、その中に圧縮空気のタンクを入れる。これに新しく作ったコンプレッサーを接続し、高圧高温の状態を作るわけだ。

 それと同時に、湯を沸かすことによって冷やされた圧縮空気を排出する機構も作っておく。この冷気をただ捨てるのは勿体ないので、台所の氷冷式冷蔵庫に繋いでおこう。


 ひと通り給湯器が完成したところで、次はその全体をすっぽりと覆うケースを作り、さらにその隙間の空気を抜いて真空状態にする。これで断熱性も万全だ。

 そして今回は素材に鋼を使っているので、錆びないよう水に触れるタンクやパイプ内はミスリルでコーティングしておいた。本当はステンレス鋼があればいいんだけどな。

 ステンレスはたしか鉄とクロムとニッケルの合金だったはずだから、どこかでクロムとニッケルを……って、そんなのどうやって探せばいいんだろう?


 ついでに浴槽の方にも手を加えて、湯量と温度をゴーレム制御にした。

 これで「お湯はり開始」の一言で適量適温のお湯が浴槽に注がれる。もちろん保温と追い炊き機能付きだ。他にもぬるめ熱め、多め少なめなんかの曖昧な要求にもバッチリ応えてくれる。

 そして改装ついでに温水シャワーを4台と、脱衣所にはドライヤーも設置しておいた。プリムラ以外は髪を乾かすのも大変そうだったしね。魔道具としてのドライヤーは公衆浴場でも女湯にはあるらしいけど、別料金を取られるのであまり使う人はいないそうだ。

 おまけに、お湯を抜くと自動で浴槽浴室の掃除をしてくれるル〇バ風ゴーレムも追加だ。



 ところでこれらのゴーレムたちの動力限はもちろん僕の魔力なんだけど、それだけじゃ僕が外出している時には作動しなくなってしまう。

 それを回避するために、以前開発した二次魔晶石を組み込んだ。これは僕がゴーレム化した魔晶石で、充電池のように僕の魔力を蓄積しておくことができる。


 本来は、すごい勢いで増え続ける20ミリ弾丸ゴーレムに組み込む魔晶石をこれで置き換えられないかと思って作ってみたものなんだけど、残念ながらやっぱり元が僕の魔力では属性魔法の発動はできなかった。

 だけどゴーレムの動力源としてだけは利用できるので、今回ようやく日の目を見ることになったわけだ。



 ……というわけで、これでほぼ全自動、装備充実のお風呂システムが完成した。

 使い方は簡単。誰でも「お湯張り開始」のキーワードひとつで、各部のゴーレムたちを動かしてお湯の準備をさせることができる。

 そして面倒な湯温や量の調節も不要。途中で熱くしたりぬるくしたりしたい場合も、ただ声に出してそう命令すればいいだけだ。


 簡単に使い方の説明を済ませると、みんなしばらくあちこち弄ってはしゃいでいた。


「すげぇ。面白いな、これ」


「わぁ。個人の家に温水シャワーがあるなんて、まるで王族みたいですね」


「それよりこっちの方が大変です。なななんとドライヤーが人数分ありますよ!」


「もう今からお風呂が楽しみだわ。ありがとう、シモン!」


 大好評だ。作った甲斐があったな。



 パトリシアたちの喜ぶ顔を見て調子に乗った僕は、それから立て続けに洗濯機に乾燥機、食器洗浄機、それに床も壁も天井もお構いなしに掃除して回る〇ンバもどきを10台ほど作った。

 どれも喜んでもらえたけど、ルン〇もどきに関してだけはプリムラがちょっと微妙な表情だった。大きい家だと掃除が大変だって言ってたのに、代わりに掃除してくれるゴーレムが気に入らないのかな。なんでだろう?


「プリムラはね、お掃除するのが好きなのよ」


 不思議に思っていると、そうパトリシアが耳打ちしてくれた。

 なるほど、何度も掃除が大変そうだって言ってたのは、嫌がってたわけじゃなくて本当は楽しみにしてたのか!

 それなのに僕が掃除用ゴーレムを何台も作っちゃったから、自分の掃除できる範囲が減ると思ってがっかりしてたんだな。これは気の利かないことをした。


 とは言え、もう作っちゃったル〇バもどきをなかった事にはできないので、もう一台プリムラのためにスティックタイプの掃除機を作ることにした。

 軽量かつ強力で、ゴミを吸引するだけじゃなくブロアーにもなり、さらには拭き掃除までこなせる特製品だ。


「ゴーレムたちだけじゃ行き届かないところがあると思うから、これで仕上げを頼むよ、プリムラ」


「なんだよ、しょーがねぇな。……まあ、シモンがそう言うならやってやるけどさ」


「ぷふっ。プリムラちゃん、口ではそう言いながらも顔がニヤけてますよ」


「そっ、そんなことねぇよ!」


 どうやら気に入ってくれたみたいだ。よかった。





「叔父さま、今日は私もここでお風呂に入って帰りたいわ!」


「いや、しかしな、シャル……」


 お昼すぎ、今日も遊びに来たシャルが改装済みの風呂場を見て、グスタフさんを困らせていた。

 気に入ってくれたのは素直に嬉しいけど、皇家別邸にはもっと立派な浴室があるんじゃないのかな。それにそもそも風呂上がりに馬車で移動なんかしたら、確実に湯冷めしちゃうよ。

 そうでなくても、シャルの予定を急に変更するとなると多くの使用人に迷惑をかけることになる。グスタフさんにそう諭されて渋々諦めかけたシャルだけど、ここで意外な方向から援護射撃が入った。


「それじゃ、今からみんなで入ればいいじゃねぇか」


「あ、そうね。昼間のうちなら湯冷めもしないんじゃない?」


「私も今すぐ入りたい気分ですし、いい案だと思います」


「それなら洗濯機と乾燥機もすぐに試せますね」


「えーと…… みんなこう言ってますし、どうでしょうグスタフさん?」


「うぅーむ……」


「ね、叔父さま、お願い!」


 そんなわけでその日、女の子たちは真昼間から入浴ってことになった。

 僕は急遽シャワーとドライヤーをもう一台追加することになったけど、シャルが大喜びする姿を見られたから、そのくらいの労力はどうってことないよね。

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