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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第五章

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5-2 あたしにも教えてよ

 ちょっとしたトラブルはあったけど、その後は何も問題なく市場と工房街を巡ってパトリシアたちと買い物を楽しんだ。

 帰り道は忠告に従って、少し遠回りにはなるけど安全な大通りを歩いて戻る。


 こっちでもやっぱり目立つ女性陣は時々声を掛けられるけど、これは単なるナンパだ。

 クラリスは慣れてないようで僕の後ろで小さくなっているけど、パトリシアとアナベルが悪いけど急いでるのよ、とか残念ながら売約済みです、とか軽くあしらって終わり。しつこく絡んでくることはない。

 僕は時々、立ち去り際に殺意のこもった目で睨まれたりするけどね。



 そんなわけでお昼をだいぶ過ぎてから家に戻り、玄関をくぐると、僕たちを迎えてくれる声があった。


「シモンさま、お帰りなさぁーい!」


 長い金髪がふわりと舞い上がるほどの勢いで元気よくリビングから玄関ホールへ走り出てきたのは、カスタール帝国の皇女シャルだ。

 彼女はそのまま僕に飛びつこうとしたみたいだけど、そこへ素早く割り込んできたアナベルにインターセプトされた。


「むぎゅ」

「んぷっ」


 二人は身長が近いから、顔と顔でぶつかってる。


「な、何をするんですかアナベルさんっ」


「それはこっちのセリフです! そういうのは私の役割なんですよっ!」


「騒がせてすまんな、シモン殿。留守だったようなので、勝手に入らせてもらった」


 手で鼻を押えながらきゃあきゃあ騒いでいる二人の後ろから、グスタフさんが苦笑しながら歩いてくる。

 こういう事もあろうかと、家の鍵はシャルとグスタフさんにも渡してあるんだ。僕が戴いたとは言え、この家はもともとカスタール帝国の持ち物だしね。



 それから皆でリビングに入り、クラリスがお茶を淹れてくれたので、それを飲みながらゆったりと寛ぐ。

 女の子たちが5人で暖炉前のソファを占領してお喋りに花を咲かせているので、僕は別のテーブルでグスタフさんと差し向かいだ。これといって特に話題もないので、さっき遭遇したストリートギャングの話をしてみた。


「確かに、アルバーナにもそういった輩はいるな。善良な市民に害をなす存在ではあるが、かと言ってまさか魔獣のように皆殺しにして解決というわけにもいかん。どう対処するか難しいところだ」


「なるほど、そうなんですか」


 そうか、このあたりでも僕は少しこの世界について勘違いしていたみたいだ。てっきり悪党は斬り捨て御免、みたいな感じかと思ってたよ。

 魔獣や魔王が跋扈する剣と魔法の世界で、ガチガチの封建制社会なのに、そういうところは案外平和的なんだなぁ。戦争でも死人が出ないよう配慮されてたし。



 そうこうしている間に時間は過ぎて、夕方近く。


「シモンさま。私、今日はお外で食事をしていいのよ!」


「シャルは初めて外食を許されたから、みんなでどこかに食べに行きたいんだって」


 シャルに手を引っぱられて来たパトリシアが、まるで自分の事のように嬉しそうに説明してくれた。

 当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど、シャルはこれまで一度も僕たち庶民の行くような食堂に入って食事をしたことがないらしい。

 でも今日は、僕とグスタフさんが一緒なら、という条件で皇太子殿下(おとうさん)から許可が出て、食べに行ってもいいことになったという事だ。


 そしてグスタフさんからも、どこか信用できるいい店を紹介して欲しい、と頼まれた。

 なるほどそう言うことならもう、心当たりはあそこしかないな。


「それなら、いい和食の店を知っていますよ」


「ワショク……。なるほど、勇者殿お勧めの勇者風料理の店というわけか。それは是非とも行ってみなければなるまいな。それで良いか、シャル?」


「はい、叔父さま! ではシモンさま、お願いしますね」


 屈託のない華やかな笑顔でそう言ったシャルが、ぱっと僕の左腕にしがみついて来た。パトリシアとアナベルがそれを見て、ああーっと叫ぶ。

 そのあと僕の右腕の争奪戦が始まったので、出発は少し遅れた。





 少し薄暗くなってきた大通りを、繁華街に向かって歩く。


 結局、僕の右にはパトリシアが来てくれた。密着されてちょっと恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい。

 もしかしてこういう場合、僕の方から彼女を誘った方がいいのかな? 何ていうかこう、彼氏っぽく? こっちに来いよ、パトリシア、みたいな?


 ……うわぁ。想像するだけで顔が熱くなってきちゃったよ。

 これはちょっと無理だな。……うん、やめとこう。



 そんなことは置いといて、昨日と同じく美女美少女4人に加え、まだ10歳とは言え気品があり十分に将来有望な容姿のシャルが増えたというのに、今日は彼女たちに声を掛けてくるナンパ男が一人もいない。

 その理由は言うまでもない。グスタフさんがいるからだ。


 別に周囲を威圧するでもなく、黙然とただ歩いているだけなんだけど、それだけでちょっかいをかけて来る者がいなくなる。

 貫禄だな。僕もいつかあんな風になれるだろうか。パトリシアのためにも努力しなきゃな。



 僕たちがダンカンの経営する食堂「名古屋」に着いたのは、日没間際のことだった。どうやら混み始める時間の前に滑り込めたようで、店内には数人の食事客がいるだけだ。

 この店は夜には酒と肴の提供がメインになるから、あんまり夕食どきには来たことがない。


「ダンカン、今日は7人だけど大丈夫よね?」


「おう、空いてるとこに座ってくれ。……なんだよ、また女の子が増えてんじゃねぇか、しっかりしろよパトリシア」


「う、うるさいわよ、もうっ!」


「こんな時間に大勢で押し掛けてすまんな、大将。食事を頼む」


「……お、おう。……おい、この旦那もシモンの連れか?」


 最後に入ってきたグスタフさんを見て、ダンカンがちょっとたじろぐ。

 それに気付いたパトリシアが悪い顔をして、こそっと何かを耳打ちした。


「……か、カスタール皇家ぇっ!?」


 あーあ。バラしちゃった。

 まずい事をしたかなとグスタフさんに視線で問うと、苦笑が返ってきた。どうやらそれほど深刻ではないみたいでひと安心。



 それからダンカンの挙動が目に見えて不審になったけれど、幸い料理の味には影響しなかった。

 7人全員、この時間には提供していないはずの定食メニューだ。


「美味しいっ。宮殿(おうち)でいただく料理とは少し違うけど、とても美味しいわシモンさま!」


「シャルの口に合って良かったよ。クラリスはどう?」


「すごく繊細な味付けで美味しいです。特にこのお魚、川魚なのに全然臭みがないんですね」


 ダンカンの作る和食は、宮廷料理人の作る食事に慣れたシャルや料理上手なクラリスにも好評みたいだ。

 新鮮な海の魚が簡単に手に入る地域で育ったクラリスにしてみれば、内陸部で食べる魚料理が美味しいってだけでも驚きなんだろうな。


「ふむ。この値段でここまで凝った料理を出せるとは大したものだ。それに、シモン殿の好みに合うという事は、この味付けがよりシモン殿の故郷の味に近いと言うことなのだろうな」


「そうなの叔父さま? それなら私も勇者風のお料理、習ってみようかしら」


「わ、私もぜひ! ご主人、美味しい勇者風料理の作り方を教えて下さい!」


「い、いや、俺はそう言うのはちょっと……」


 クラリスに詰め寄られて、ダンカンの視線が泳いでいる。

 そうそう。彼女にああやって正面から来られると、ついつい顔よりちょっと下の方を見ちゃうから困るよね。


「ダンカン、あたしにも教えてよ」


「なんだよ今更。前に教えてやるって言ったら、あたしは食べるの専門なのよ、って言ってたじゃねぇか」


「よりによって今そんなこと言わなくてもいいじゃない!?」


 そう言えば、パトリシアが料理してるところって見たことがないな。ひょっとして苦手なんだろうか?

 パトリシアが作ってくれるものなら、何だって美味しそうだけどね。

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