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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第四章

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4-11 一緒に暮らしていいのよね

 結論から言うと、100パーセント本気だった。


 翌日にはさっそく不動産を仲介する商店に行こう、と誘われて出掛けることになり、その道すがら大きな家の建ち並ぶ閑静な住宅街を通る。

 パトリシアたちはその家々を眺めながら、あの屋根の形がどうとか壁の色が云々とか、楽しそうに話し合っていた。

 ……もうこれ、本当に家を買っちゃう勢いだよ。そりゃまあ僕だって男だし、3人の女の子たちと同じ家に住めるなんて嬉しい話だけど。


 そう言えば、パトリシアはしょっちゅう僕の部屋に来てるけど、僕は彼女の部屋に行ったことがない。もしも一緒に暮らすなんてことになったら、そんなチャンスもあるのかなぁ。

 パトリシアの部屋で、二人で…… うわヤバい、想像したらドキドキしてきた。


「わぁ……」


 ふとそのパトリシアが小さく声を上げ、一軒の邸宅の前で立ち止まる。

 カスタール帝国でよく見かけたような、木組みのきれいな木造家屋だ。広い庭付きで、二階建ての建物自体もかなり大きい。


「すごく可愛い。こんな家に住めたらいいわね」


「確かに悪くはないですが、4人で住むにはちょっと大きすぎますよ」


「これだけ大きいと掃除とか大変そうだよな」


 アナベルとプリムラもなんだかんだ言いながらその家が気に入ったようで、足を止めて見入っている。

 うん。僕もいい家だとは思うけど、他人の家だよ。あんまりジロジロ見ない方がいいと思う。特にプリムラ、背が低くて見えにくいのは分かるけど、塀の前でぴょんぴょん飛び跳ねないように。



「シモン殿のお連れ方は、この家をお気に召したようだな」


 いきなり背後から渋い声がして、思わずビクッと身を縮こまらせる。

 パトリシアたちも僕と同じように強張った表情で恐る恐る振り返ると、そこにいたのはなんとカスタール帝国の皇子、グスタフさんだった。


「グスタフさん、どうしてメリオラに?」


「実はシャルがメリオラへ留学することになってな。私はその護衛なのだ」


「シャルロッテ姫が? ……ああ、それじゃあここは姫様のお屋敷なんですね」


「いや、この家はシモン殿のものだ。陛下とシャルを救って頂いた一件の礼だと思って受け取って貰いたい」


「ええっ!?」


 治療のお礼に家一件!? しかもちょうど家探しをしているこのタイミングでって、いくら何でも都合が良すぎない?

 さすがにこれは辞退した方がいいかと思いながらパトリシアたちを見ると、彼女たちはキラキラと期待に満ちた目で僕を見ていた。……そうか、そんなにこの家が気に入っちゃったのか。それなら仕方ないな。


 僕がグスタフさんに、ではありがたく頂戴しますと返答すると、きゃあっと小さく歓声が上がった。

 ちょっと腑に落ちない部分はあるけど、こうしてパトリシアが喜んでるんだから、それでいいとしよう。





 グスタフさんに案内されて家の中に入ると、そこには見知った顔があった。


「わぁっ、シモンさま! またお会いできて嬉しいっ!」


 ひとりはシャルロッテ姫だ。これはまあ予想の範囲内。


「……あの、お久しぶりです。シモンさんが勇者様とは知らず、その節は色々と失礼を致しました」


 もうひとりは何と、エンディリア王国のクラリスだった。

 ツーリードの街を治める男爵家の当主である彼女が、どうしてこんなところでカスタール帝国の姫様と一緒にいるのかと尋ねると、


「私の家は、この隣なんです。実は国王陛下から直々にメリオラへの出向を命じられまして……」


 彼女の話を纏めると、「果てなき樹海」で勇者ミツルと共に魔王を倒した僕のことはエンディリア王国にも伝わっていて、その素性を調べるうちにクラリスとムラーノ伯爵の件が引っ掛かったらしい。

 ただその事件につけられた解釈というのが問題で、クラリスを気に入った僕が、ムラーノ伯爵の三男に彼女を渡すまいとして伯爵城を襲撃した、ってことになっているそうだ。まるで女性に見境のない無法者みたいな扱いで心外だな。


「それで、その…… 王国のために魔王殺しの勇者様と繋がりを深めるように、とのことで…… あの…… うぅ」


 うん、だいたい事情は分かった。

 つまり僕にクラリスを差し出すからエンディリア王国に魔王が現れた時は宜しく、って事だな。

 どんだけ女好きだと思われてるんだろう。頭が痛い……


「失礼ね! わざわざクラリスにそんなことさせなくても、魔王が出ればシモンが倒しに行くわよ!」


「そうです。クラリスさんは安心して領地に戻って下さい」


「でも陛下のご命令ですし、それに私も、シモンさんの近くにいられたらいいなと……思い……ますので……」


 話しながらクラリスは真っ赤になって俯き、パトリシアとアナベルがジト目で僕を見る。ええっ、僕は何もしてないよ!?


「私もシモンさまのお傍にいたくて、お父様を説得してメリオラへ留学させていただいたのよ。クラリスさんとはここで偶然にお会いして、ちょうどシモンさまのことで話が弾んでいたの! そこへ本当にシモンさまが来て下さるなんて、きっとこれが運命なのね!」


「…………」


 そこへシャルロッテ姫が追い打ちをかけて、パトリシアとアナベルの非難を含んだ視線が僕に突き刺さる。

 いやだから僕は…… あれ? 僕が悪いのかな?





「ひとつ誤解のないよう申し上げておくが、この先に皇族の別邸がある。シャルは基本的にはそちらで起居することになろう。ここでシモン殿と共に暮らすことに関しては、皇太子殿下(あにうえ)の許可が出ておらんからな」


「でも、皇帝陛下(おじいさま)は構わないって仰ってくださったのよ」


「そう我儘を言うな。兄上にしてみれば、シャルをメリオラに出しただけでも大きな譲歩なのだぞ」


「……はい、叔父さま」


 目の前で凄い会話が交わされている。とりあえず登場人物が雲上人すぎだ。

 しかもその内容が、皇女様が僕と一緒に暮らしていいかどうかって話だとくれば、もう笑うしかない。



「あ、あたしはこの家で一緒に暮らしていいのよね、シモン?」


「私も! 私もです! あなたのアナベルをお忘れなく!」


「おれも一緒に住みたいけど、掃除が大変そうなんだよなぁ」


「……あ。私、掃除もお料理もちょっと得意なんですよ!」


「クラリスの家は隣にあるじゃない」

「そうです。クラリスさんは優雅な一人暮らしを満喫してください」

「……クラリスさん?」


 最後にさりげなくクラリスが参加してたけど、パトリシアとアナベル、シャルロッテ姫に睨まれて引き下がった。小さな声で、いいじゃないですか、独りでいるのは寂しいんですよぉ、なんて呟いている。

 何人もの女の子と同居すると考えると、何となく罪悪感って言うかそんなのいいのかな、って思ってしまうけど、これだけ広い家なら同じ宿の別の部屋にいるって感じで割り切れそうな気がしてきた。

 どうせみんな僕の部屋でたむろすることになるんだろうから、今までとそう大して変わらないよな。


「部屋はたくさんあるんだから、みんなで住めばいいよ。クラリスも」


「えっ。いいんですか!?」


「……シモンがいいって言うのなら、仕方ないわね」


「まあ、クラリスさんの作る料理は美味しいですしね」


「そうなのか!?」


 これでクラリスは立ち直ったけど、あともう一人。

 シャルロッテ姫が不機嫌そうに頬をぷぅと膨らませている。


「ほらみて叔父さま、お父さまのせいで私だけ仲間はずれよ!」


「うぅむ…… だがなぁ……」


「姫様も、どうぞ好きな時に遊びに来て下さい」


「遊びに来て欲しいなら、シャルって呼んでくれなきゃイヤ!」


 膨れっ面でグスタフさんに食ってかかっているシャルロッテ姫を誘ってみたけど、彼女はそう言ってぷいとそっぽを向いてしまった。

 そうか、確かに彼女一人に対してだけ敬語ってのもおかしいよな。しかもこの中では最年少なのに。


「えっと。……シャルも、好きな時に遊びに来ていいよ」


「うんっ。不束者ですけど、これから末永くお願いしますね、シモンさま」


 変化は劇的で、一瞬でぱあっと花の咲いたような笑顔になった。

 可愛らしいけど、そんな挨拶をされるとこっちが恥ずかしくなってしまう。さてはさっきまでのも怒ったフリか。6つも年下の女の子にからかわれて照れてるなんて、我ながら情けないなぁ。


「ちょっとパトリシアさん、ガチの強敵出現ですよ!」


「わ、分かってるわよ! 負けないんだから!」


 一緒に住むということになって、パトリシアとの距離が一気に縮まるのかなとちょっと期待もしたけれど、どうやらそんな事もなさそうだ。

 この家に僕とパトリシア、アナベル、プリムラにクラリス。そしてシャルも、時々か毎日なのかは分からないけど遊びに来る。


 これは間違いなく、今まで以上に賑やかになるな。

お読みいただき、ありがとうございます。第四章完了です。


ヒロインは増えましたが、やっぱりハーレムかどうかは微妙です。

アナベルの目の黒いうちはそんな展開にならないような気もしますね。

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