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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第四章

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4-5 俺たちが相手をしてやる!

 翌日。


 朝起きて身支度を整え、部屋に運ばれてきた簡単なご飯を食べる。

 食事を運んで来てくれた兵士以外は誰も来ないし、昨日の警戒されっぷりを考えると勝手に出歩くのも問題かなと思ったので、大人しく部屋でゴーレム増産に勤しむことにした。

 最近では「地下城」で手に入れたアダマンタイトの残量も寂しくなってきたので、弾丸ゴーレムは100パーセントのアダマンタイト製じゃなく、鋼を芯にしたフルアダマンタイトジャケットに変更して希少素材を節約している。


 そうして時間を潰し、少しお腹が空いてきたかなと思った頃にドアがノックされた。

 僕は黙々と作業を続けながらどうぞ、と答える。


「大変お待たせ致しました、勇者殿…… ひ、ひぃえぇっ、ななな、何!?」


 入ってきたのは、昨日マルトニー伯爵の前にいた軍人さんの一人だ。

 彼は床にずらりと並んだ500体ほどの20ミリ弾丸ゴーレムを見て反射的に後退り、閉じかけたドアにぶつかってバタンゴトンと騒がしい音を立てている。

 何もそんなに驚かなくてもいいのに……


「し、失礼しました。伯爵閣下より、勇者殿には本日午後の会戦に参加いただきたいとのことです」


「それじゃあ、エディンバー伯爵との話はついたんですね。分かりました」


 思いのほか、マルトニー伯爵の仕事は早かった。

 ひょっとして今朝一番にエディンバー伯爵のところへ相談に行ってくれたんだろうか?

 てゆーか総大将自ら敵陣に行って戦力増強の報告とか、これ本当に戦争?



 ともあれ、これでいよいよ僕も参戦できることが決まったので、配置や作戦の手順について他の軍人さんと打ち合わせる。

 その話し合いの結果、僕の希望はほぼ100パーセント通った。


 ここに来て、ようやく少し情況が飲み込めてきた。

 ひょっとして僕、かなり恐れられてる?


 昨日の会話と態度を思い返してみると、本当はたぶんマルトニー伯爵も僕を参戦させたくはないんだろう。

 でも断ると何をされるか分からないから、とりあえず保留にしておいて、もう一人の当事者であるエディンバー伯爵と対応を相談した。

 その結果どういった結論が出たのかは知らないけど、戦場に出させなければやはり僕が何をするか分からないから、ひとまず好きなようにさせておくことにする。


 ……と、たぶんそんなところじゃないだろうか。

 この予想が正しければ、両軍の総大将が結託して僕への対抗策を準備しているかも知れないな。

 今のところそれが何かは分からないけど、とにかく気をつけることにしよう。





 朝ごはんとほぼ変わらない軽い昼食を摂ってから、僕は軍人さんに案内されて砦の外に出た。


 昨日入ったのとは反対側の、戦場となる平原に面した門をくぐると、そこには優に1000人を超える軽鎧姿の歩兵、つまり召集された民兵と、100人ほどの騎兵が整列していた。

 騎兵の防具も軽鎧だけど、民兵のものとは明らかに拵えが違って上等そうだ。こっちはおそらく職業軍人だろう。

 ざっと見回してウォーレンの姿を探してみるけど、これほどの数の人がいて、しかも全員兜を被っていられるとちょっと見つけようがないな。


 そして、その総勢1500人ほどの兵士たちは、門から出てきた僕を見て大きくどよめいた。

 なぜなら、今の僕は身長3メートル近い全身鎧の巨人だからだ。


「巨人族…… そんなものが本当にいたのか?」

「いや、あれはどう考えてもゴーレムだろう」

「あんなに自然な動きができるゴーレムなんて見たことないぞ」

「それよりもあの武器はなんだ? 槍ってわけでもないようだが……」


 周囲から聞こえるそんな会話を聞き流しながら、僕は悠然と歩いて隊列の先頭位置につく。


 そう、僕は今日は最初から〈ギガンティック〉のフレックスアーマーを装備している。

 その理由は、20ミリ弾丸ゴーレムを撃ち出すアサルトライフル、FN SCARもどきを扱うためだ。

 本来のFN SCARは5.56ミリか7.62ミリ口径だけど、いま持っているのは〈ギガンティック〉の体格に合わせてほぼ2倍にスケールアップしたものだ。生身で見ると、ス〇ープドッグの持つライフルを彷彿とさせて超燃える。


 カスタール帝国で「大鷹の魔王」に対して使ったM61バルカンは、ちょっと強力すぎて人に対しては使えない。いくらスタンモードとはいっても、同時に何体もの20ミリ弾丸ゴーレムに被弾すれば大怪我をさせてしまう危険があるからだ。

 それならどうして、より口径の小さい10ミリ弾丸ゴーレムを使わないかと言うと、これは魔法陣を内蔵できないため、弱い〈サンダーボルト〉で気絶させるという方法が取れないから。

 10ミリ弾丸ゴーレムのスタンモードは、洗濯バサミのように肉を挟み込んで激痛を与えるものなので、今回の戦闘では使いたくない。敵兵だって、そのほとんどは召集された民兵だからね。





 はるか遠くの敵陣、エディンバー伯爵の砦の前にも、こちらとほぼ同数の歩兵と騎兵がずらりと整列している。

 その様子を眺めながら僕が事前の打ち合わせ通りの位置につくと、指揮官の騎兵から進軍の号令が出された。

 それとほぼ同時に、敵陣の兵士たちも前進を始める。


 ……戦闘開始だ。


 僕は〈ギガンティック〉をゆっくりと歩かせて前に進む。

 身長が3メートルもあれば、普通に歩くと後続の歩兵との距離が離れすぎてしまう。最終的には隊列を離れて突貫する予定ではあるけれど、今はまだそれには早い。


 しばらく歩いて両軍の距離が縮まると、双方ともに遠距離攻撃の射程に入った。

 攻撃魔法が使える者は魔術士部隊として数ヵ所に配置されていて、一斉に敵軍に対して同じ魔法を放つ。火魔法は他に比べて使える人が圧倒的に多いので、ほとんどは〈ファイアアロー〉だ。

 さらに最前列にいる歩兵が弓を構え、これも一斉に矢を放つ。


 そして攻撃を行うと同時に、魔法による防御も行われた。

 〈ウインドシールド〉が敵の放った矢を吹き散らし、広範囲に展開された〈アンチマジックシールド〉が魔法を無効化する。

 この攻防では両軍ともにほとんど被害は出ないけど、徐々に距離を詰めながら何度かの斉射が繰り返される。要するに牽制射撃みたいなものだ。



 通常であればこのまま前進を続けて、十分に距離が縮まったところで本格的な交戦が始まるらしいけど、今日は違う。

 マルトニー伯爵軍は打ち合わせ通りここで足を止め、僕ひとりだけがそのまま前進を続ける。敵軍は既に20ミリ弾丸ゴーレムの射程内だ。歩きながらFN SCARを構え、僕はフルオートでゴーレムたちをバラ撒いた。


 ズバババババババババババンッ!


 展開された〈アンチマジックシールド〉は、既に発動した魔法を無効化するためのものなので、弾丸ゴーレムたちには効果がない。

 さらには〈ウインドシールド〉も、魔法耐性の強いアダマンタイトをコーティングした弾丸ゴーレムたちは易々と貫通していく。

 両軍の隊列の中には青地に白い十字という目立つ胴鎧をつけた治癒魔術士がいて、彼らに攻撃を加えるのは厳重に禁止されている。だけど今朝手を加えた弾丸ゴーレムたちには尾部にフィンが取り付けられていて、無差別に射撃してもちゃんと治癒魔術士を避けながら目標に向かって飛んでいくという誘導機能があるので安心だ。


 おまけにスタンモードにも改良を加え、盾や鎧を貫いたあとには先端部がスプリングのように変形し、目標に与える物理的ダメージを最小限に抑えながら〈サンダーボルト〉で確実に気絶させていく。

 そんなわけで僕のするべきことは、極力同じ人に複数体の弾丸ゴーレムが着弾しないように気を付けながら撃ちまくることだけだ。



 あっという間に100人以上が気を失って戦闘続行不能になり、敵軍の遠距離攻撃が僕に集中するけれど、普通の鋼の矢や中級上級の魔法程度では〈ギガンティック〉の装甲に傷ひとつ付けることすらできない。

 そして僕の接近に押されてじりじりと後退し始めた敵軍に対して、さらに距離を詰めようと歩調を早めたとき、彼らが現れた。



 歩兵たちの間を縫うように、素早く隊列の前に出てきた全身鎧の4人の戦士が、手にした長剣で20ミリ弾丸ゴーレムを弾き飛ばす。

 薄い金色に輝く長剣の刀身は、フルアダマンタイトジャケットの弾丸ゴーレムに何度も接触したというのに折れても欠けてもいない。あれは普通の鋼やミスリルじゃない。もっと遥かに強靭な……


「勇者シモン! ここからは俺たちが相手をしてやる! 兵士には手を出すな!!」


 僕を睨みつけてそう言い放った人物に対して、敵軍から大歓声が湧き上がる。

 同時に〈簡易鑑定〉が発動して、彼の姿に文字が重ねられた。

 ステータス「S」、危険度判定+50、勇者トウヤ、と。


 あれっ? この雰囲気、なんだか僕のほうが悪役っぽい感じじゃない?

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