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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第四章

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4-2 ね、何もないところでしょ?

 パトリシアが、故郷のライタスの街に帰省するらしい。


 目的はご両親のお墓参り。パトリシアの両親は彼女がまだ物心つく前に亡くなっていて、毎年秋のこの時期に墓参のため帰省しているそうだ。

 今回はそのついでに、先に故郷に戻ったアンナとウォーレンの様子見も兼ねている。


「そっか。じゃあ、送って行くよ」


「えっ。シモンも一緒に来てくれるの?」


 ちょっとしんみりしていたパトリシアの顔が、ぱっと綻んだ。


 ライタスは独立都市メリオラの北西、レトナク王国にある田舎町だと聞いている。馬車で5日の距離だそうだけど、小型RVゴーレムを走らせれば余裕を見ても2日で着く。ここは当然送って行くべきだろう。

 それに、前から行ってみたいと思ってたんだ。何せパトリシアの故郷だからね。


「だけど、本当に田舎だから何もないわよ。……それでもいい?」


「もちろんいいよ。ウォーレンたちにも会えるしね」


「シモンさまが行くのなら私も行きます」


「あ。じゃあおれも」


「……あんたたちは何しに来るのよ?」


 とまあ、そんな感じで、結局みんなで行くことに決まった。





 車内の席はまたくじ引きで決めたんだけど、結局前回と同じでパトリシアが助手席、後部座席にアナベルとプリムラとなった。

 アナベルがかなり悔しそうだ。くじ運ないなぁ。


「次はシモンさまの膝の上を候補に加えましょう!」


「いいけど、きっとあたしが取るわよ。シモンの膝の上」


「……うっ。やっぱり撤回します」


 二人とも本気で言ってるわけじゃないだろうけど、さすがにそれは勘弁して欲しい。僕が恥ずかしいから。

 だいいち、女の子を前に座らせてちゃ運転が…… いや、運転はゴーレムに任せればいいのか。それなら大丈夫かも? でもやっぱり恥ずかしいな。



 僕たちは昼前にメリオラを出発して、その日はレトナク王国のサルザリスという大きめの街で一泊。翌朝早めにサルザリスを発って主街道を外れ、人通りがなくてちょっと寂しいけど走りやすい道を快調に飛ばし、2日目の昼過ぎには目的地のライタスに到着した。


 ライタスは話に聞いていた通り、長閑な農村って感じのところだ。

 四方を起伏の少ない地形に囲まれて、山ははるか遠くに小さく見えるのみ。大きな森もなく、あるのは小さな集落が幾つかとその周囲に広がる麦畑だけだ。


「ね、何もないところでしょ?」


「そうかもね。でも景色は綺麗だよ」


 パトリシアがちょっと恥ずかしそうに聞いてくる。

 だけど、遠くに霞んで見える青い山々を背景に広がる麦畑は実に素晴らしい風景だと思うので、そう伝えたらにこっと笑顔になってありがと、と言ってくれた。


 風景が素晴らしいのは本当だけど、パトリシアの笑顔はそれ以上だ。

 思わずその表情に見惚れていると突然視界にアナベルが現れ、ばちんとウインクされた。

 すぐにパトリシアに引き戻されていたけど、今のは何だったんだろう?





 パトリシアを先頭に、あちこちに点在する集落のひとつを目指して歩いていく。

 そこに、彼女が12歳になるまでを過ごした孤児院がある。ちなみにアンナもその同じ施設の出身なんだそうだ。


 孤児院の建物は思ったよりも立派で大きなものだった。

 ここにはライタスだけじゃなく、周辺の街や村からも身寄りのない子供たちが集まってくるらしい。施設は国営だそうなので、大きいのも頷ける。


 パトリシアが慣れた様子で門を開けて中に入ると、遊んでいたり雑用をこなしていたりした子供たちが僕たち……というかパトリシアに気づいて大声を上げた。


「あー、パトリシアお姉ちゃん、お帰りー」


「うわっ、パトリシア姉が男連れで帰ってきたぞ!」


「ほんとだ、奇跡じゃん! 急いで院長先生に報告だ!」


「奇跡じゃないわよ! ちょっと待ちなさい、ビフ、マールっ!」


「逃げろー!」

「待つわけないじゃん!」


 男の子たちは建物の中に逃げ込み、パトリシアはしょうがないわね、と腰に手を当てて呟いた。

 これはまた、やんちゃな弟に手を焼くお姉ちゃんって感じで新鮮だ。こんなパトリシアもいいなぁ。



「あらあらパティー、一年ぶりね。元気そうで何よりだわ。今年はお友達も一緒なのね? 初めまして」


 建物の中に入り、この施設の院長だと言う上品そうな老婦人に、挨拶と自己紹介をする。

 当然ながら彼女はパトリシアの帰省の理由を知っていて、この街にいる間は空いた部屋を好きに使ってくれていいと言ってくれた。

 来てしまってから初めて聞いたんだけどライタスには宿がないそうなので、これはすごく助かる申し出だ。


 挨拶が終わって一息つくと、今度は子供たちが集まってきて、パトリシアにお土産をねだり始める。


「パトリシア姉、お土産はー?」


「もちろん、あるわ。今年はちょっと凄いわよ? シモン、お願い」


「分かった。それじゃあ、出すよ」


 去年の帰省では手土産は焼き菓子程度だったらしいけど、今年は僕の〈ストレージ〉があるから、どんなものでも運べる。

 僕がテーブルの上に出現させたのは、この世界の田舎町ではなかなか手に入らない、プリンやアイスにシュークリーム、チョコレートといった甘味の数々だ。

 全部過去の勇者とメリオラの料理人たちが再現してくれていたので、僕はただそれを買って運ぶだけ。楽でいい。


 子供たちは次々に現れるお菓子の山に歓声をあげ、キラキラと目を輝かせていた。それとプリムラがごく自然に子供たちに交じって、物欲しそうにお菓子を見つめている。

 ついでながら、僕が作って持ってきていた漢字入りビー玉も出してみるとやっぱり大人気だった。それも子供たちだけじゃなく、先生たちにもだ。

 院長先生は「誠」がお気に召したようで、選んだあとで意味を教えると、それは素敵な言葉ね、と微笑んでいた。





「そう言えばパティー、アンナちゃんにはもう会ってきたの?」


 院長先生の問いにパトリシアがまだだと答えると、老婦人の穏やかな表情が少しだけ曇る。


「そう。それじゃあ明日はきっと行ってあげてね。アンナちゃん、寂しがっていると思うから」


「アンナに何かあったんですか?」


「あら、まだ聞いてなかったのね。アンナちゃんのご主人、戦争に召集されちゃったのよ。新婚さんだって言うのに、ほんと伯爵様も気が利かないわね」


「……えっ。ウォーレンが?」


 パトリシアの表情に緊張が走る。たぶん僕の顔もそうだろう。

 隣ではアナベルとプリムラが顔を見合わせている。


 ウォーレンが戦争に?

 それも、結婚したばかりのアンナを置いて?


 想像したくもない嫌な未来が頭をよぎる。

 僕は慌てて小さく頭を振り、それを追い払った。


「パトリシア、明日なんて言わずに今から行ってみよう」


 思わず立ち上がってそう言うと、パトリシアがうん、と小さく頷いた。

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