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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第四章

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4-1 覇闘麗死悪見参!

 独立都市メリオラに帰って来た翌日の昼過ぎ。

 僕たち4人は、ダンカンの経営する勇者風料理……つまり日本料理店で遅めの昼食を食べていた。


 繁華街の一角にあるダンカンの店「名古屋」は…… 本当に看板に漢字でそう書いてあるんだけど、昼は定食、夜は酒とその肴をメインに提供していて、かなり繁盛している。

 食事時となればカウンターとテーブル合わせて20席ほどの店内はすぐ満員になってしまうので、こうして時間をずらして来ているわけだ。



「やっぱりここで食べる和食がいちばん美味しいな」


「ワショクってなんだ?」


「勇者風料理のことよ。ワショクとかニホン料理って言うのよね、シモン?」


「へえぇっ、なんかカッコイイな。ワショク、かぁ」


 プリムラがすごく納得顔で頷いてるけど、「和食」って単語がカッコイイだろうか?

 ひょっとして、ネイティブの使う砕けたフレーズ感覚なのかな。


 それはそうと、いま僕の目の前には川魚のカレー風味唐揚げにきんぴらごぼう、大根サラダ、豆腐の味噌汁、そして白米のご飯という献立が並んでいる。

 ちなみに隣の席ではパトリシアが親子丼を、テーブルの向かい側ではアナベルがきつねうどん、プリムラが味噌かつ定食を食べている。


 まさか異世界に来てこんなに和食が充実しているとは思わなかった。

 醤油、味噌、味醂に日本酒、マヨネーズやカレー粉と、このメリオラで手に入らない調味料はないってくらいだ。



「メリオラは、勇者さまにとって最初の街ですから。少しでも心地よく過ごして頂けるようにと、100年以上も努力を続けているんですよ」


 アナベルの説明に、今度は僕がなるほどそうかと頷く。


 確かに、メリオラは僕にとっても居心地がいい街だ。

 例えば市街地では上下水道が完備されていて、トイレは水洗が当たり前だ。衛生状態はとてもいい。

 そのうえ日本の銭湯そのものの公衆浴場があって、大きな宿には内風呂もある。おまけに「浄化」という便利な魔法もあるので、不潔そうな身なりの人はほとんど見かけない。


 さらに、高価ではあるけれど冷蔵庫のような機能を持つ魔道具がそこそこ普及しているので、料理店では新鮮な食材が揃い、冷たい料理やお菓子も食べられる。

 冷凍輸送も行われていて、海から馬車で7日間の距離にあるメリオラでも海の魚が売られているくらいだ。……と言ってもかなりの高級食材だけどね。



「よう、久しぶりだなシモン。どうだ、料理の味は」


「いつも通り美味しいよ。特にこの魚の唐揚げが最高!」


「ははっ、そうか。シモンの口に合うんなら、この味付けで間違いねぇな。これも作ってみたんだ、皆で食べてみて意見を聞かせてくれよ」


 そう言って差し出された小皿には、これも美味しそうな栗羊羹が乗っている。

 それが甘味であることを知っているパトリシアとアナベルが歓声をあげ、プリムラは見たこともない黒い塊を胡乱そうに見ていた。


 ダンカンには僕が勇者であることをカミングアウトしてあるので、時々こうして新メニューや試作料理の感想を聞かれているわけだ。

 ……で、何が言いたいかっていうと、メリオラにはダンカンみたいな腕のいい和食料理人が大勢いるので、食べるものにも困らないってことだ。





 昼ごはんを食べ終わり、宿へ戻る道の途中で公園の傍を通りがかる。

 天気の良い昼下がりということもあって、そこには多くの子供とお年寄りの姿があった。


 お年寄りはベンチに座って将棋を打っている。この手のボードゲームは将棋だけじゃなくて囲碁もチェスもリバーシも普及しているけど、その中でも将棋が一番人気がある。

 理由は、駒に難体勇者文字……つまり漢字が描かれているからだそうだ。メリオラのお年寄りには漢字が人気らしい。


 子供たちは鬼ごっこでもしているのか、大騒ぎしながら走り回っている。あとは縄跳びや山崩しや…… お、あれはビー玉遊びかな?

 十字に穴を掘ってする本格的なゲームだ。確か、天国と地獄とかいうやつ。



「どうしたの、シモン?」


 足を止めて公園の様子を眺めている僕に、パトリシアが声をかけてくる。

 少し首を傾げて見上げてくる顔が近くて、なんとも言えない甘い香りがして、いつもながらドキドキしてしまう。


「なにか気になることがあるんですか、シモンさま? うおぅ」


 その近い距離の隙間に体をねじ込むようにして現れたのはアナベルだ。

 だけどすぐパトリシアにもうっ、と押しのけられた。


「何でもないよ。ただ、いろんな日本の遊びが流行ってるんだなと思って」


「そうね。そう言えばアヤトリってのもシモンの世界からきた遊びよね。あたし、ちょっと得意なのよ」


 パトリシアはそう言って、器用に指を動かしてみせる。エアあやとりだ。

 僕はまったく詳しくないので、彼女が何を作っているのかさっぱり分からなかったけど。



 そのとき、子供たちの間からあーあ、という声が上がって、僕たちの足元にひとつのビー玉が転がってきた。

 何気なくそれを拾い、手に取ってみる。日本のものと同じ、なんの変哲もないただの透明なガラス玉だ。

 ……あ。ちょっといいこと思いついたぞ。


 僕は手の中にビー玉を握りこみ、イメージを固めて〈ゴーレム作成(クリエイトゴーレム)〉と呟く。

 そして完成したゴーレムに素早く命令を実行させて、またすぐに〈素材に戻す(ターンマテリアル)〉した。


「兄ちゃん、俺のビー玉返してよ!」


 ビー玉の持ち主だろう7歳くらいの子供が走ってくる。

 僕はその子に、取ったりしないよ、と答えて加工済みビー玉を返す。元気にありがとうと答えて踵を返したその子の動きが、そこで固まった。


「うわ。なんだこれ、すっげー!」


 その子の持つビー玉には、3Dクリスタルの要領で中心部に「龍」という漢字が刻まれている。ちなみに毛筆体だ。

 やっぱり子供も漢字が好きなのか、その子はもう一度大きくありがとう、と礼を言ってビー玉遊びの輪の中に帰っていった。


 その直後、僕は20人くらいの子供たちに囲まれて、全員のビー玉の中に漢字を書かされる事になる。

 みんな大喜びしてくれたから、この程度の労力はどうってことないけどね。





「あのね、シモン。あたしもこれに書いて欲しいんだけど、いい?」


「私もお願いしたいです」


「おれも、頼む」


 そのあと帰り道でビー玉を買ったパトリシアたちに頼まれて、彼女たちにも3Dクリスタル風ビー玉を作ることになった。

 もちろん僕に異存はない。よし、と気合を入れて花の立体画像でも彫刻しようかと思ったら、


「そうじゃなくて、難体勇者文字でパトリシアって書いて欲しいのよ」


 そうそう、と頷くアナベルとプリムラのリクエストも同じ。

 どうやら漢字はお年寄りや子供だけじゃなく、女性にも人気らしい。


 まあそれはいいけど、漢字でパトリシア?

 僕の頭に「覇闘麗死悪見参!」みたいな文字が浮かんできて、あわてて振り払う。ちがうちがう、パトリシアの名前なんだからもっと可愛く…… うーん、可愛い当て字って難しいな。



 さんざん悩んだ挙句、「波都璃志愛」「杏奈米瑠」「風里夢楽」に決めて加工する。なんかもうキラキラネーム全開って感じ。

 さらに追加リクエストで僕の名前入りのビー玉も作った。「帯刀志門」だ。


「あっ。あたしのこの『志』って文字、シモンとお揃いね!」


「納得いきません。私の名前にもシモンさまと同じ文字を入れてください」


「この『刀』って文字カッコイイな。おれの名前にも入れてくれよ」


 僕の名前の漢字表記を見てパトリシアが上機嫌、逆にアナベルは頬を膨らませている。

 アナベルとタテワキシモンじゃ一文字も被ってないし、そりゃ無理だよ。

 プリムラはプリムラで漢字の意味なんて分からないはずなのに、見た目でそれを選ぶとはなかなかやるじゃないか。



 彼女たちに作ったそれぞれふたつの名前入りビー玉は後日、パトリシアがイヤリング、アナベルがペンダント、プリムラはアームレットに加工して披露してくれた。

 僕の名前入りのアクセサリーを3人の女の子が身につけてるなんて、なんだか恥ずかしいような嬉しいような、妙な気分だな。

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