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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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3-14 そんなに重くないわよ!

 ナノゴーレム治療の効果は劇的だった。


 僕の体内にいるのと同じ、20回の〈自己複製〉を命じられたナノゴーレムたちはあっという間に増殖して体内くまなく広がり、シャルロッテ姫と皇帝陛下の体内に巣食う寄生虫を駆除していった。

 病原体がなくなれば、すぐに〈痛み止め(ペインキラー)〉と〈ヒーリング〉の効果が傷ついた体を癒し始める。


 シャルロッテ姫は苦しそうだった表情が和らぎ、頬に血の気も差してきて、すうすうと安らかな寝息をたてはじめた。

 皇帝陛下に至っては、楽になった途端に立ち上がろうとして医師に止められていたくらいだ。

 〈ヒーリング〉では体内の傷は消せても消耗した体力までは戻せないので、しばらくは静養が必要になるだろう。



「勇者シモン、シャルロッテを救ってくれたことに感謝する。そなたにはまた借りができてしまったな」


「私からも礼を申し上げる。シモン殿は陛下の命の恩人だ。望みのものがあれば何なりと仰られよ」


「いえ、僕は別にそんなつもりで治療したわけじゃ……」


「いいや、グスタフの言う通りだ。ここまでの恩を受けて何も返さぬでは面目が立たん。これは帝国の威信にかけて、どうあっても何か受け取ってもらわねばならんぞ」


 皇帝陛下はそう言って愉快そうに笑った。本当に何もいらないのになぁ。

 人助けをするのはいいけど、謝礼のことでこんなふうに頭を悩ませなきゃいけないとか、おかしいよね?





 皇帝陛下が医師から最低3日の安静を言い渡されてしまったので、今日の晩餐への招待はキャンセルとなった。

 ただそれで皇宮から開放されるかといえばそうでもなく、近いうちにまた日をあらためて、と言うことだそうだ。パトリシアのドレス姿は楽しみだったので、この事自体はありがたい。

 ただ困ったのは、ではそれまでの間、皇宮でゆっくりと過ごされよ、というグスタフさんからのお誘いだ。苦戦の末、これだけはどうにか振り切ることに成功した。


 帝都の秋の大祭まであと4日、それまでは街中の観光を楽しみたいからね。



「それはつまり、病気を治療する魔法を編み出した、という事なのではないですか、シモンさま?」


「そうね。アナベルの言うとおり、シモンがしたのはとんでもないことよ」


 皇宮からの戻りの馬車の中で、皇帝陛下とシャルロッテ姫を治療した経緯を説明すると、アナベルとパトリシアが目を丸くして驚いていた。


 彼女らが言うには、〈ヒーリング〉などの治癒魔法で治せるのは基本的に怪我だけで、病気の治療は医師や薬師の領分なんだそうだ。

 その医師薬師の治療にしても、できるのは症状を抑えるとか体調を整えるとかであって、僕がしたように病気の根源を直接根絶やしにするような治療法はないらしい。

 ちなみに、皇帝陛下たちを治療したあとで僕も自分の体に異物駆除ナノゴーレムを入れておいた。ハイパー血小板に続く、ハイパー白血球だ。



「シモンと姫様だけなんてずるいわ。あたしにもしてよ」


「そうですよシモンさま。私も優先権を主張します」


「おれは、えーと…… どうしようかな?」


 僕と姫様だけじゃないよ。皇帝陛下を忘れてるよパトリシア。

 でもってプリムラは無理に参加しようとしなくていいから。


「いや、まだナノゴーレムを体内に放置してると何が起こるかわからないから、それは安全が確認できてからにしよう」


「そうなの? もし何かあったとき、シモンは大丈夫?」


「大丈夫だよ。僕自身のことなら、すぐ〈ターンマテリアル〉でナノゴーレムを分解できるからね」


 皇帝陛下とシャルロッテ姫の体内で増殖させたナノゴーレムたちも、治療後に〈素材に戻す(ターンマテリアル)〉済みだ。

 そう話すと、


「じゃあ、もしあたしが病気にかかったら、姫様と同じように治してくれる?」


 ……と、お願いされたので、もちろんいいよと答える。

 パトリシアはありがと、と短く言ってちょっとだけ身を寄せてきて、嬉しそうに微笑んだ。いつもながら笑顔が可愛くてふわっといい匂いがして、ドキドキする。


「あ、それならおれも」


「私もお願いします! いますぐ病気にかかりますから!」


 いますぐってなんだよ。なんの競争だよ。





 そしてその日からたっぷりと帝都の郷土料理と観光を楽しみ、ついに秋の大祭の日がやってきた。

 昼前に宿を出ると、大通りはすでに大変な混雑ぶりだ。

 ていうか、これは……


「……どう? シモンの世界のお祭りって、こんな感じなのよね?」


 パトリシアが、驚く僕の顔を見上げて言った。


 彼女の今日の服装は、どこからどう見ても浴衣だ。朝顔の柄の。すごく似合ってて可愛い。アナベルとプリムラも浴衣姿で、足元までちゃんと下駄履きになっている。

 そして、広い大通りの両側には屋台がずらっと並んでいた。それも、この世界で見慣れた料理の屋台に混じって、たこ焼きやたい焼きに焼きとうもろこし、くじ引きなんかの屋台もちらほら見える。

 通りの向こうを、威勢のいい掛け声とともにゆっくり進んでいるのは神輿で間違いない。


 確かにこれは、日本のお祭りだ。

 そうか、パトリシアはこれを僕に見せるために……



 そのとき、不意にガシャン、と大きな音がして歓声と悲鳴が上がった。

 何事かと思ってそちらを見ると、さっきの神輿が通りを対向してきた別の神輿と衝突していた。最初は事故かと思ったけど、神輿はお互いにいったん後退して、再び勢いよく突っ込んでは激突を繰り返している。

 ……喧嘩神輿?


 通りの反対側では、子供たちが泣き叫びながら逃げ惑いはじめた。

 その後ろから子供たちを追い立ててくるのは、異様な姿をした何人もの…… なまはげ?


 別の場所では、20メートルはあろうかという巨大な丸太に乗った男たちが急坂を猛スピードで滑り降りている。

 そうかと思えば向こうでは、若い女性たちが顔を赤らめつつモザイク必須なデザインの丸太に跨って黄色い声を上げていた。


 ……日本の奇祭オンパレードか?


「あ、そっちのはプリムラちゃんは見ちゃいけません。もっと大きくなってからです」


「何言ってんだアナベル、同い歳じゃねぇか。何を見ちゃいけないって…… きゃあぁっ!?」


「……ほ、ほらシモン、向こうはもっと面白そうよ!」


 顔を赤くしたパトリシアに手を引かれて、また別の奇祭会場へ移動する。

 パトリシアの手、柔らかくてほんの少しひんやりしてて気持ちいいなぁ。 ……ていうか手! 手、繋いでる! パトリシアと!





 屋台で買い食いしながら広大な会場でいろんな祭りを見て回るうちに、次第に空が薄暗くなってきた。

 それに従って、少し開けた場所に陣取って同じ方向を見上げる人の数が増えてくる。


「まだかよパトリシア、どこまで歩くんだよ」


「もうちょっとよ。あの少し高くなってるところまで行くわ」


「えぇーっ」


 プリムラがはしゃぎ過ぎてお疲れモードだ。

 僕はまだパトリシアと手を繋いだままで、そしてもう一方の手にはアナベルがぶら下がっている。いわゆる両手に花だけど、僕を挟んで牽制し合うのはやめて欲しい。


「アナベル、もうちょっと離れてよ。シモンが歩きにくそうだわ」


「私はパトリシアさんより軽いですから、大丈夫なはずですよ?」


「あたしだってそんなに重くないわよ! ……ないわよね?」


 ちょっと自信なさそうなパトリシアに、そんなことないよと答えると、そこからまたきゃあゃあと一悶着だ。よく飽きないよなぁ。



 そうして騒ぎつつパトリシアの目指す高台に辿り着くと、ちょうどひとつめの花火が打ち上げられたところだった。

 ドォン、と街中の人の注目を集めるように巨大な花が咲き、そこから次々といろんな種類や大きさの花火が打ち上げられる。

 パトリシアもアナベルもプリムラも、その幻想的な光景にずっと目を奪われ続けていた。


 ……僕は、時々パトリシアの綺麗な横顔に見惚れていたけど。

この世界の花火は火薬ではなく、火魔法を利用した魔道具という設定です。

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