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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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33/79

3-9 なんだよ、何がなるほどだよ。

「その…… いろいろ悪かったな、シモン……君」


「いいよ、気にしてないから。それより、日本に帰れるんだろ? おめでとう」


「ああ、何もかも君のおかげだ。ありがとう」


「ところでサキさんて彼女? いいねぇ」


「……そ、それは忘れてくれ。あの時はどうかしてた」


 勇者ミツルは魔王討伐が認められたようで、元の世界に戻れることになった。

 彼の話では、魔王に止めを刺した瞬間、目の前に「日本に帰還しますか? はい/いいえ」みたいなメッセージが現れたらしい。なんか雑だな。そこは女神様とかが出て来るところじゃないの?


 とは言え、実際には皇帝への挨拶やら何やらで、すぐ帰るってわけにもいかないみたいだけど。

 でもまあ、とにかく良かった。


「だけど本当によかったのか? シモン君は日本に……」


 ミツルが何か言いかけたちょうどその時、僕の後ろにいたパトリシアたちがフレックスアーマーを解除して、あっつーい、ちょっと休憩です、なんだよだらしねぇな、とか言いながらくつろぎ始めた。

 ミツルはそんな彼女たちを見て、ああなるほどな、と納得顔で頷いていた。なんだよ、何がなるほどだよ。





「そうか、勇者シモン殿は下野なされたのか。して、此度はカスタールに如何なご用で?」


 眼光鋭い剣士グスタフさんの質問に、正直に観光ですと答えると、彼はいかにも面白いことを聞いたと言わんばかりに呵呵と笑い始める。


「ではカスタールが気に入ったならば引越して来られよ。陛下もきっとお喜びになろう」


 ……と、笑顔で勧誘してきた。

 いえ、そんな雲上人とお近付きになる機会はいらないです。気楽に過ごしていきたいんですよ、僕は。



 もう一人の剣士は、兜を取るとなんと20歳くらいの美しい女性だった。名前はドーラと言うらしいけど、全然気付かなかった。強いし体格いいし、身長180センチはありそうだし。

 彼女はパトリシアたちに混じり、僕が〈ストレージ〉から取り出したテーブルセットでお茶を振舞われている。どうも「地下城」で手に入れた茶器に興味津々のようだ。大丈夫、毒や呪いはないよ。


 ちなみに魔術士の名前はレオポルト。3人並ぶと彼が一人だけ小柄に見える。実際には僕と大して違わないんだけどね。





 そしてその夜、僕はペルデリアの宿の部屋で一人になってから、魔王と遭遇した時のことを思い返していた。


 あの時ミツルは、僕が魔王を倒して日本に帰る権利を横取りしに来たんだと思い込むくらいに、切羽詰まっていた。

 この世界に召喚されて2年、彼はどれほどこの機会を待ち望んでいたんだろう。


 彼女に会うため、かぁ…… ひょっとしたら僕も2年後には、あんなふうに日本に帰りたくて堪らなくなっているんだろうか。

 パトリシアたちと一緒にこの世界を旅しよう、なんて浮かれたことを言っていられるのは、僕がまだこの世界に来て間もないからに過ぎないんだろうか。



 そんな取り留めもないことをぼんやりと考えていると、遠慮がちなノックの音がした。

 扉を開けると、そこにいたのはパトリシアだ。


「……その、ちょっと話したいんだけど、いい?」


 もちろんいいよと答えて、パトリシアを部屋に招き入れる。

 「金鴨亭」とは違って、ここの部屋にはちゃんとテーブルも椅子もあるので、二人で小さなテーブルに向かい合って座った。

 パトリシアはなんだか落ち着かない様子で、しばらく視線をあちこち泳がせたあと、意を決したように僕の目を見て切り出した。


「勇者は……シモンは、魔王を倒せば元の世界に戻れるのよね? シモンも、やっぱり、元の世界に帰りたい?」


 ああ。そんな話なんじゃないかなとは思ってたけど、やっぱりそうだったか。

 ミツルの取り乱しようは彼女たちもバッチリ見てたもんな。だから僕も内心ではそうなんじゃないかって、心配してくれてるんだろう。


「もちろん帰りたい気持ちはあるけど、それは別に今すぐじゃなくてもいいんだ」


 そう前置きしてから、寿命までこの世界で暮らしてから死んでも、向こうの世界で元の状態に戻れることを彼女に説明する。

 彼女もその辺は予めアナベルにでも聞いていたようで、特に驚きはしなかった。


「だから、この世界でのんびり過ごさせてもらおうって思ってる」


「そう…… でももし、また魔王に出会ったら? もしも他の勇者がいなくて、シモンが倒さなきゃいけなくなっちゃったら……」


「大丈夫だよパトリシア。魔王になんかそうそう出会うものじゃないと思うし、もしそれでも出会って、倒しちゃったとしても、僕はこの世界に残るほうを選ぶよ」


 僕がそう断言するとパトリシアはうん、と小さく頷いて、ちょっと笑顔を見せてくれた。

 でもそこからなぜか急に視線を逸らして、胸の前で組んだ両手の指をもじもじと組みかえ始める。


「し、シモンは、向こうの世界に誰か大事な人とかはいないの?」


「そりゃあ、いるよ。家族とか、友達とか」


「えと、そうじゃなくて、今すぐ会いたいような人って言うか、……ね?」


 ああなるほど、恋バナですか、パトリシアさん。

 これもミツルが叫んでたフレーズだな。でも残念ながら、そんな浮わついた話は僕にはありません。


「彼女なら、生まれてこの方、ずっといないよ」


「……へ、へぇー。そ、そうなんだ。それじゃあね、……あのね? フレデリックさんじゃないけど、もしシモンさえよければね? あたしが、シモンがこの世界に残る理由に……」

「はいそこまでですっ!」


 威勢のいい声とともに突然扉が開け放たれ、そこからアナベルと、なぜか顔を真っ赤にしたプリムラが姿を現した。彼女らの乱入によって、パトリシアの言いかけた言葉は遮られる。

 変だな。さっき、確かに施錠したはずなんだけどな。


「ちょ、ちょっとアナベル! いますっごく大事な……」


「私にとって大事な話はもう聞かせてもらいました。それ以上のところは見過ごせません」


「もうっ。いいじゃない、ちょっとぐらい!」


 そこからきゃあきゃあといつもの騒ぎが始まる。

 変な話だけど、これも慣れてくれば不思議と落ち着く光景だ。

 このままずっと彼女たちと一緒にいられたらいいなぁ…… なんてのは、厚かましすぎる願いだな。



 ところでさっきパトリシアにも言ったけど、メリオラの周辺6ヵ国で年に一体しか出現しない魔王に2度も3度も遭遇する確率なんて、ものすごく低いものだろう。

 それでも出会っちゃった場合でも、今日みたいにその国の勇者がすぐに倒しに来るんだから、その人に任せればいい。



 だからとりあえず、これで一件落着だ。

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