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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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3-7 こんなんじゃないハズなんだ

 ダンジョン入口近くの通路は人で混みあっていたけど、それはいくつもの分岐を通る都度減って行き、小一時間も歩く頃には前にも後ろにも人影はなくなった。

 このダンジョン、とにかく分岐が多い。うねうねと湾曲した通路の先を警戒しながらのゆっくりとした歩きでも、2、3分ごとに三叉路や四つ叉を通過する。

 分岐は必ず木の枝のように先へ向かって分かれているので、帰り道で迷うことはない。ただ、このダンジョン「果てなき樹海」は、その名の通り終端がないらしい。


 分岐した道の片方がその先で小部屋や行き止まりになっていることはあっても、分岐の全てが行き止まりになることはない。必ずひとつは先に進む道がある。

 ……と、そんな仕組みになっていて、高レベルのパーティが2ヵ月以上潜り続けても、とうとう終端に辿り着くことはできなかったんだそうだ。





「……っと。巨大イモムシ(メガクロウラー)、2。アタック」


 急なカーブを切る通路の先に、長さ2メートルほどの緑色をしたイモムシを発見。

 向こうもこちらに気づいて頭を高く持ち上げる。その口からは粘液や溶解液を吐き出すらしいけど、その射程内に入る前に僕の新作ゴーレム銃、FN P90もどきがフルオートで大量の10ミリ弾丸ゴーレムを射出する。


 ズパタタタタタタンッ! パタタタタタンンッ!


 それぞれ頭部付近に10体以上の弾丸ゴーレムを撃ち込まれた巨大イモムシ(メガクロウラー)は、かなりグロ注意な見た目になりつつサラサラと崩れて消えた。

 よし、殲滅完了!



「なあ。ダンジョンアタックって、こんなんじゃない気がするんだけど」


「何を言うんですか。安全でラク、これに越したことはないでしょう?」


「シモンって、詠唱しなくていい魔術士みたいなものよね。反則だわ」


 何やらプリムラが不満顔だけど、遠距離攻撃で難なく倒せる相手にわざわざ前衛を突っ込ませて戦うようなリスクは冒せない。リーダーとしては。

 そう。相談の結果、なぜか僕がこのパーティのリーダーに決まってしまった。僕は実戦経験豊富なパトリシアを推したんだけど、即行で却下されたんだ。


「どんな状況でも冷静でいられる人が、リーダーに向いてるのよ」


 ……と、パトリシアは言ってたけど。過大評価もいいところだ。



 そんなことを考えつつ地面に落ちた魔晶石を拾って少し歩くと、その先は小部屋になっていた。

 残念、こっちの分岐は行き止まりだな。


「オーク、4。アタック」


 ズパタタタタタタタタタタタタタンッ!


「なあ、アナベル……」


「安全第一です」


「だけどよぉ……」


「シモン、ついでだからここでちょっと休憩にしない?」


「あー、そうだな。もう昼時か」


 オーク4匹を瞬殺して小部屋に入る。「地下城」と同じく、ここでも魔獣を排除したあとの小部屋は安全地帯だ。

 僕は〈ストレージ〉からテーブルセットを出し、その上に食器と出来たてスープに何種類かの軽食を並べて、昼食の準備を整えた。


「……こんなんじゃないハズなんだ」


「ダンジョンっぽくないのは認めるけど、快適なのはいいことよ?」


「せめて、一回くらいは戦いてぇ……」


 プリムラが情けない表情で言うのを聞いて、皆で苦笑する。

 まあ、気持ちは分からなくもないけど。入口からここまで3時間あまり、僕以外の3人はただ歩いてるだけだもんな。だけど誰にも怪我なんかさせたくないし。

 ……リーダーって難しいなぁ。





 さらに2時間後。

 僕たちは幾つめかの小部屋で魔物を殲滅したあと、小休止をとる。


「よし、今日はこの辺で切り上げようか」


「そうね。日が落ちる前には入口に戻りたいわ」


「ええーっ。もう一日行こうぜ、シモン」


「今日は日帰りの予定ですよ。野営はまた次回の楽しみです」


 アナベルの言う通り、今日はあくまで様子見なので、ダンジョン内で野営をするつもりはない。

 もちろん、するとなればパーティションも着替えもタライもベッドも全部〈ストレージ〉に入っているから、問題なくできるんだけどね。食料だって非常食を除いても余裕で10日分以上あるし。


 プリムラには、さっきオークの集団と遭遇したときにわざと一匹だけ残しておいたヤツを倒してもらったので、今はもうそれほど不満顔ってわけでもない。

 その戦いぶりを見たパトリシアが、悪くないわね、と評していたので、けっこう強いんだろう。それでもできるだけ戦わせたくはないけど。





 ダンジョンの構造上、帰りは実質一本道になるので迷う心配はない。

 ただし、当然ながら帰り道にも魔獣は出現する。特に、大きな分岐点を兼ねた広場は要注意だ。避けて通ることはできないし、通路や小部屋に比べて魔獣の出現数も多い。


 僕は注意深く、通路脇に密生する木の幹に隠れながら、その広場の中を窺った。

 ここは、僕たちが通ったルートでは最大の広場だ。バスケットボールのコートくらいの広さがある。天井も高く、びっしりと間隔の詰まった枝がドーム状となって頭上を覆っている。

 往路では大型犬サイズの巨大蟻が20匹ほどいたんだけど…… ああ、帰りもまた同じか。


大喰い蟻(グルトニーアント)、20。左奥寄り。パトリシア、頼む」


 往路ではパトリシアの範囲攻撃魔法と僕の銃撃で殲滅した相手だ。同じように魔法攻撃を頼むと、彼女は小さくひとつ頷いて小声での詠唱を開始した。

 アナベルとプリムラは突撃に備え、僕の後ろへ移動して待機している。


 そして待つこと数秒で、パトリシアの詠唱が完了した。

 彼女のアイコンタクトを受けて、よし、と今度は僕が小さく頷く。


「ダズンエクスプロージョン!」


 複数の爆発音を合図に僕とアナベル、プリムラが広場へ飛び込んだ。


 ズパタタタンッ! タタタン! タタタン! パタタンッ!


 僕は入口近くで足を止め、パトリシアの範囲攻撃魔法が撃ち漏らした魔獣を仕留めていく。

 広場の右手前から掃討を始める僕に対し、プリムラは左手前方向へと走る。アナベルはそのフォローだ。


「ぅらああぁっ!」


 気合いの叫びとともに、一匹の大喰い蟻(グルトニーアント)が縦半分に断ち切られた。

 勢いあまって地面にめり込んだサーベルを引き抜こうとするプリムラに、別の大喰い蟻(グルトニーアント)が迫る。


「……ふっ!」


 その頭部に向けてアナベルの突き出したアダマンタイト製の棍が、甲殻を突き破ってぐさりと刺さる。

 ただし、それだけで生命力の強い魔獣が息絶えることはない。頭のど真ん中に棍を突き立てたまま攻撃態勢を取ろうとするところへ、体勢を立て直したプリムラのサーベルが一閃。胴をふたつに切られて崩れ落ちた。


「よし、次…… って、もう終わりかよ」


「シモンさまが全滅させる前に2匹も仕留められたんですから、上出来ですよ」


「うぅーん…… まぁ、それもそうか」


 こらそこ。人を殺戮マシーンみたいに言わないように。

 そこで遅れて広場に入ってきたパトリシアが、お疲れさま、と声をかけてくれた。僕は軽く手をあげてそれに応える。


 敵を殲滅したあとの小部屋や広場は安全地帯。

 その認識が、僕たちを緊張から解放し、空気を弛緩させた。



 ……だけど、何事にも例外ってものが存在する。

 この直後、僕たちはそれを思い知ることになった。



 パキィィン!


 と、何かが割れ砕けるような音がして…… と言うか、実際に何もない宙空にヒビ割れが走り、それが砕けて、のそり、と巨大な影が姿を現した。

 その背の高さは7、8メートルほど。鷲や鷹を思わせる猛禽の胴体に、翼ではなくコウモリの羽根を備え、首は3つに分かれてそれぞれ別の頭が付いている。右には蛇、左には狼、そして真ん中の首には、おそろしく歳をとった老人の頭が付いていた。


「……なによ、あれ?」


「なんてぇバケモンだよ」


「まさか……!」



 僕の〈簡易鑑定〉が発動して、その化け物の姿に文字が重ねられた。


 ステータス「SS」、危険度判定、+100。……大鷹の魔王、と。

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