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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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3-5 いいものをお見せしますよ

 プリムラを新たに旅の連れに加え、宿の部屋取りがちょっと難しくなった。

 というのも、宿側が必ずと言っていいほど二人部屋ふたつを勧めてくるからだ。そしてその度にパトリシアとアナベルがきゃあきゃあやり始める。


「パトリシアさんは『くるま』でずっと隣に座ってるんだからいいじゃないですか! 部屋では私がシモンさまの隣です!」


「あたしが同室の方がシモンも落ち着けるわ! アナベルはすぐ変なことしようとするじゃない!」


「人聞きの悪いことを言わないでください。あの時はちょっとシモンさまの脱ぎたてシャツを拝借しようとしただけじゃないですか!」


「それが変なことじゃなくて何だって言うのよ!?」


 パトリシアと同室って、絶対に落ち着けないと思うなぁ。たぶん寝られないよ、ドキドキして。

 それはそうと、どっちとも一緒の部屋にはならないから。僕は一人部屋だからね。


 ちなみにこの間プリムラは、二人の間でおろおろしながら口を挟む隙を探していたりする。無理に参加しようとしなくていいから。





 翌朝、目が覚めて身支度を終えると、遠慮気味なノックの音が。


「シモン、ちょっといい?」

「シモンさま、いいものをお見せしますよ」


 ドアを開けると、いかにも悪巧みしてますって顔のパトリシアとアナベルがいて、彼女たちの部屋に来るよう誘われる。……いいのかな?

 静かにね、そーっとですよ、と念を押されつつ部屋に入ると、プリムラだけがまだベッドですやすやと寝ていた。


「プリムラ、朝よ。起きなさい」


 パトリシアが、普段の彼女とは違うちょっと大人びた声で呼びかける。

 その声音に色気というか、艶っぽさを感じてドキッとした。こんなパトリシアもいいな。


「んんっ……ぅん。ふぁ…………まだ眠いの」


 この可愛らしい声は、なんとプリムラだ。いつもと全然違うじゃないか。

 寝ぼけて寝返りをうつと、さらさらの銀髪が枕元に散らばる。彼女は幸せそうな顔でぐりぐりと枕に頬を埋めてふすぅーと鼻息をつき、そこで異変に気づいてばちっと目を見開いた。


「……な、なんでシモンが…… パトリシア! アナベル! て、てめぇら、なんて事しやがんだよ!?」


「だって、プリムラちゃんの寝起き可愛いからー」


「シモンさまにプリムラちゃんの隠された魅力を紹介したんですよ。感謝してください」


「こ……のっ、待ちやがれ、こらぁっ!!」


 顔を真っ赤にして二人を追い回すプリムラがかなり際どい格好だったので、僕はそぉっと部屋から抜け出した。

 ……プリムラ、本当にぺったんこだったな。





 そんなこんなで賑やかな道中を3日続け、僕たちは最初の目的地、「グレートラグーン」のあるペルデリアという街に辿り着いた。

 第二の目的地であるダンジョン「果てなき樹海」へも馬車で一日の距離だということなので、この街をとりあえずの拠点とすることに決める。小型RVゴーレムを走らせれば2時間くらいだし。


 森林地帯だけあって、街の建物は木造が多い。とは言ってもべつに質素な建物ってわけじゃない。

 通りに面した建物は3階建てが普通で、壁に施された木組みは複雑で美しく、まったく同じものはないってくらい種類が多い。装飾としても十分に目を楽しませてくれる。


 そしてこの街の目玉である巨大温泉「グレートラグーン」は、街の奥、レントという大河の河原にあるらしい。

 宿も食堂も、大半が「グレートラグーン」付近に集中しているそうなので、まずはそちらを目指すことにした。





「これは…… 広いな」


「すごい。まるで海みたいね!」


「海よりはだいぶ小さいと思いますけど、圧巻の眺めですね」


「へえぇ、海ってそんなにデカいのか?」


 手頃な宿の部屋を押さえ、さっそく「グレートラグーン」にやってきた僕たちは、一目でその規模に圧倒された。

 それは一言で言えば、野球場が二つ三つ収まってしまいそうな広さのある露天風呂だった。それが通路やちょっとした島で幾つかに仕切られている。観光名所だけあって人もそこそこ多いけど、とにかく広いので混んでいるという印象は全くない。

 さらに凄いのは、「グレートラグーン」の向こう側を流れるレント河。もう広すぎて対岸が見えない。その大河の上を、何隻もの帆船がゆったりと行き来している様子はまさに絶景だ。


 僕たちは……というより入浴客は全員、タオル地の貫頭衣のような湯着を着ている。そしてここは混浴だ。

 なぜだろう。水着に比べれば圧倒的に露出は少ないはずなのに、湯着姿のパトリシアを見るのが照れくさい。彼女の方でもそれは同じようで、ちょっと頬を紅くして視線を泳がせている。


 お湯に入ると思ったより深く、温度はぬるめだった。そうでなきゃ、真ん中の方でのぼせたりしたら大変だもんな。



「はあぁー。気持ちいいわね、シモン」


「うん、これは来てみてよかったなぁ」


 お湯に肩まで浸かって上機嫌のパトリシアが、つつつと寄ってきた。

 特徴的な鮮やかな赤い髪は上の方で纏められていて、いつもは隠れているうなじが露になっている。すごく新鮮だ。めっちゃいい。


「……は、恥ずかしいからあんまり見ないでよ」


「あ、ごめん」


 ちょっとガン見しちゃった。そりゃあバレるよな。

 慌ててパトリシアのうなじから目を逸らす。


「そこで私のうなじが見放題っ! さあシモンさま、どうぞ!」


 これも綺麗な青い髪をアップにしたアナベルが、後頭部から僕ににじり寄ってくる。なんでだろう、まったく色気を感じないのは。

 すると、えい、とパトリシアがその膝裏を蹴り、アナベルは水柱を立てて水中に没していった。


「きゃあっ!?」


 と、そこで悲鳴をあげたのはパトリシアの方だ。

 どうしたのかと慌てて振り向くと、彼女は僕に背中を向けていて、お湯を透かしてその白い背中が…… あれ、背中が見える?


「ちょっとアナベル! 何するのよっ!?」


「事故ですよ、事故ー」


「もうっ! ……ごめん、シモン。ちょっとだけあっち向いててくれる?」


「……あ。う、うん」


 あー。なんかもう、のぼせそう……

 なんとなく手で鼻を押さえつつ反対側を向くと、そこには見事なフォームのクロールで黙々と泳ぐプリムラの姿があった。


 プリムラ。お前の湯着もズレてるぞ。

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