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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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3-3 いやべつに要らないし!!

 いきなり何言ってんだあの人?

 ……っていうか僕、歓迎されてない感じだよね? 帰ろうかな?


「お、親父、違うんだ。この人たちは……」


「言うなプリムラ! 掟に従い、里の勇士との一騎打ちで決着をつける! 良いな異郷の者よ!」


「いや、僕は別に戦いに来たわけじゃ……」


「もはや御託は要らん! 行け、勇士バオバブよ!」


 何だか事情がよく分からないうちに、変な方向へ話が進んでいく。

 プリムラもおろおろしているところを見ると、べつに罠にかけられたってわけでもないようだ。

 振り向いてパトリシアとアナベルに視線を向けると、彼女たちも困惑顔で首を横に振った。わけがわかんない、と。


 ともあれ、人垣の後ろからのっそりと現れたのは、身長2メートル以上ありそうな大男だった。

 だけどエルフなのでやっぱり細身で美男子。あまり強そうには見えない。


 勇士バオバブと呼ばれたその長身エルフが広場の真ん中へ出てくると、突然けたたましい太鼓の演奏が始まる。腿の間に挟んで叩く、アフリカっぽい音色の太鼓だ。

 えー。エルフつったら、竪琴と横笛じゃないの? なんで太鼓? しかも、槍を持ったエルフたちがその演奏に合わせて踊ってたりするし。


 見た目は細身で美男美女揃いのエルフたち、だけどやってることはアフリカの部族っぽい儀式。そりゃもう、違和感が半端じゃない。

 もしかして、こっちのエルフってのはこうなのか? そう思ってもう一度パトリシアとアナベルを見るが、彼女たちも困惑顔で以下略。



「闘え!!」


 族長っぽいエルフのその言葉に、100人近いエルフたちがうおおおおっ、と雄叫びをあげた。太鼓が一際大きくかき鳴らされ、楽器を持っていない者は自分の腿や腕を叩いて音を出す。

 ああ、僕の中のエルフのイメージが崩れていく……

 よーし分かった、話は通じそうにないしもう面倒くさい。戦えばいいんだな、戦えば!


 僕が意を決して広場の中央へ歩き出すと、エルフたちから挑発の声が飛んでくる。

 勇士バオバブは手に持ったモーニングスターをぶんぶん振り回しながら、ゆっくりと距離を詰めてきた。


「フレックスアーマー」


 一瞬で黒鉄色の全身鎧を纏った僕に、驚きのどよめきが沸き起こった。


 このままレミントンM870の連射で瞬殺するのは簡単だけど、なんとなく飛び道具は卑怯だとかなんとか後でクレームがつきそうな気がしてならない。

 そこで銃を構えるのはやめにして、両腕に20ミリ弾丸ゴーレムの発射装置を3つずつ内蔵させておいた。

 そして左腕に大盾を生成して、準備完了だ。


「ぬおおおおおあああああああぁっ!!」


 バオバブが一気に突っ込んできた。

 太い鎖の先で急速回転している棘付きの鉄球が、唸りを上げて僕の脳天に振り下ろされる。僕は大盾を掲げてこれを受け止めた。


 ガキィィィィン!!


 鋭い金属音が響き、鉄球が砕け散る。

 もちろん、僕の力ではこんな重い鉄球を受け止められるはずがない。鉄球が盾に触れた瞬間、フレックスアーマーの全ての関節をロックして耐えただけだ。

 その代わり、衝撃で足が地面に10センチほども沈みこんでいる。怖ぇ……


 即座にロックを解除し、大盾を回収してバオバブの懐に踏み込んだ。

 彼は驚愕の表情を浮かべながらも、膝蹴りで僕の動きを止めようとする。

 その膝に左手を当てて、スタンモードで左腕に仕込んだ20ミリ弾丸ゴーレムを斉射。骨の碎ける音とバオバブの短い呻きが聞こえて、彼はバランスを崩した。


 それでもなお、僕の頭にモーニングスターの柄を叩きつけてこようとするバオバブに一歩近付き、鳩尾の辺りに右ストレート。そして同時に20ミリ3発を斉射。

 超至近距離からの着弾の衝撃で彼は勢いよく仰け反り、バク宙失敗のような格好で後頭部と肩から地面に着地して、そのまま動かなくなった。



 うおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!


 大歓声が広場に轟く。太鼓が滅茶苦茶に打ち鳴らされ、ドンドンと地面を踏む振動が伝わってくる。

 てっきりブーイング、悪くすれば100対1の第2ラウンド開始かと身構えていた僕は拍子抜けだ。

 倒れたバオバブには、一人のエルフが走り寄ってきて治癒魔法を施している。どうやら深刻な状態ではなさそうだ。


「見事な闘いであった、異郷の者よ! やむを得ん。掟に従い、我が娘プリムラをそなたに預けよう。どこへなりと連れてゆくがいい!」


「いやべつに要らないし!!」


 僕のその絶叫で、広場はしんと静まり返った。





「とんだ早とちりで、恥ずかしいところをお見せした」


 異様なテンションが収まり、冷静さを取り戻した族長兼プリムラの父、ウィロウさんが僕たちに頭を下げる。

 今いるのは彼の家で、ウィロウさんの横にはプリムラ、勇士バオバブと何人かのエルフが並び、僕の両隣にはパトリシアとアナベルが座っている。

 ちなみに期待していたようなツリーハウスではなく、竪穴住居だ。しかも部屋には椅子もテーブルもなく、床に敷いた敷物の上に直座り。……えーと、エルフ?



 そしてウィロウさんの語ったおおまかな経緯は、こうだ。


 以前から人間の世界に興味津々で、おまけに冒険者や英雄譚に憧れていたプリムラが、今朝早くに誰にも行き先を告げず里を出た。

 当人の思惑としてはちょっとした腕試しと小さな冒険をしたかっただけで、昼までには里に戻るつもりだったのだが、意外な強敵丸呑みカエル(グロスイートフロッグ)に追われ、森から出てしまう。

 一方、里では突然姿を消したプリムラに、とうとう出奔したかと大騒ぎになった。ところが夕刻前になって、そのプリムラが3人の人間を伴って郷へ戻ってきたので、事態はまた一変。


「てっきりシモン殿が、プリムラを賭けた闘いをするために里を訪れたものと思ったのだ」


 ……何でそうなるのかがよく分からないんだけど、まあ、とにかくそういう事だったらしい。

 でもこれで誤解は解けたことだし、一件落着ってことでいいかな。そう言って席を立とうとすると、ウィロウさんに引き止められた。


「もうすぐ日が暮れる。迷惑をかけたお詫びもあるし、今日はこの里で休んで行かれよ。大したもてなしはできないが、食べるものと寝る場所くらいはある」


「それはありがとうございます。では遠慮なく」


 パトリシアとアナベルにも異存はなさそうなので、厚意を受けることにする。

 その夜はちょっとした宴会になって、これでもかってくらい肉料理が運ばれてきた。またひとつエルフのイメージが崩れていく……





「ねぇプリムラ。なんでここのエルフの人たちは、木の上に住んでないの?」


「私もそれは気になっていました。その他にもいろいろと、私たちの思っているエルフのイメージとは違う部分が多いんですが」


「えっ。そ、それは……」


 ちょっと打ち解けてきた頃合で、パトリシアとアナベルがいい質問を投げかけてくれた。それは僕もぜひ聞きたいところだ。

 答えが気になってそっちを見ると、なぜかプリムラと目が合って、彼女は慌てたようにそっぽを向いてしまう。そんな彼女の代わりに質問に答えてくれたのは、僕の向かいに座っているウィロウさんだった。


「お嬢さん方。それはな、我々が呪われたエルフだからなのだ」


「呪い……ですか?」


「そうだ。我々は、母なる大樹(マザーツリー)に住むことのできない呪いを受けてしまったのだよ」


 ウィロウさん曰く、本当の(・・・)エルフの里はここの他にあり、その地のエルフはやはり樹上に家を建てて住んでいる、穏やかな種族らしい。

 彼ら自身も、50年ほど前まではそうだった。しかし彼らは母なる大樹(マザーツリー)と呼ばれる巨木の上には住めず、それを苦にして仲間たちから離れ、ここにこうして新たな里を築いたんだそうだ。


 肉食だったり好戦的だったりする点は、呪われたエルフとはこうあるべきだ、という意味不明なポリシーから来ているらしい。

 ……ちょっとその辺はどういう事なんだかよく分からないけど。


母なる大樹(マザーツリー)の上にいると、不安でどうしようもなくなるのだ。長くいると足が震えて身動きすらできなくなる」


「俺は目の前の景色が歪んで、吐き気を催すようになった」


母なる大樹(マザーツリー)は俺に、ここから飛び降りなさいと囁いてくるんだよ」


 ウィロウさんが呪いについて語ると、周りのエルフたちも次々と自身の経験を口にし始めた。

 ふぅん、そうか。なるほどな……



 ……それって要するに、高所恐怖症なんじゃないの?

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