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僕のゴーレム作成能力の自由度が高すぎて、不可能はない気がしてきました。  作者: 九鹿蓮司
第三章

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3-2 走れない場所なんてない!

「私の祈りに応えよ、この者をあるべき元の姿に。ヒーリング」


 悪態をつきながら倒れたエルフの少女は、アナベルの上級治癒魔法でどうにか助けられた。

 実はアナベルは水魔法と光魔法、治癒魔法の使い手だ。攻撃魔法は苦手らしいけど、彼女の治癒魔法は時間さえかければ失った体の一部を再生させることもできるらしい。

 これはパトリシアにとっては苦手分野のようで、彼女はアナベルに活躍の場を取られてちょっといじけていた。





「ねぇシモン。エルフの里って、見てみたいと思わない?」


「木の上に家があるんですよね。私も行ってみたいです、シモンさま」


「そうだな。この子を送りがてら行ってみようか」


 で、治癒したはいいものの、まさかそのまま放置していくわけにもいかないのでどうしようかと思案していたところ、パトリシアの提案でエルフの里まで送り届ける事になった。

 とは言え、まずはエルフ少女の意識が戻らないことには始まらない。とりあえず小型RV……ええいもう面倒くさい、ジムニーの後部座席に押し込み、様子を見る。

 アナベルが半眼ジト目で不満を表明してきていたけど、小柄な女の子二人なら狭い後部座席でも何とか乗れるだろう。


 そうしていくらも待たないうちに、エルフ少女がううん、と小さく呻いて目を開いた。


「……うぅ。……な、何だここは? あーっ! お前、さっきは余計なことしやがって、どう言うつもりだよ!」


 僕を指さしてエルフ少女が叫ぶ。


「さて。ついさっきまでは助けるつもりでしたけど、気が変わりそうです。どうしましょう?」


「なんだと? おれがいつ助けろなんて言ったよ!」


「あんた顔は綺麗なのに、なんでそんなに口が悪いのよ」


 エルフ少女が目覚めて、車内が一気に賑やかになる。

 魔獣を倒したことも怪我の治療をしたことも全部ひっくるめて、余計なことを、という論調だ。アナベルが冷静に窘めるのにも耳を傾ける様子はない。

 ま、感謝して欲しくてしたことでもないから、僕は別にいいんだけどね。


 あと、パトリシアの言葉には思わずニヤついてしまった。

 そう言えば僕も最初はパトリシアのこと、そんな風に思ってたんだよなぁ。


「そりゃあ勝手なことをして悪かった。ところで目が覚めたのなら送っていくよ。これから森に入るから、道を教えてくれないかな?」


「はぁ? お前なに言ってんだ、馬車で森になんか入れるはず…… って、馬がいねぇじゃんか。どうなってんだこの馬車は?」


「揺れると思うから、しっかり掴まってて」


 不思議そうにキョロキョロし始めたエルフの少女に一声かけると、僕はトランスファーレバーを操作して駆動方式を「2H」から「4L」に切り替える。実際にタイヤを駆動させるかどうかはハブ部分のゴーレムが判断することなので、レバー操作はもちろん気分だけのものだ。

 そして大きくハンドルを切りながらアクセルを開け、街道を外れてジムニーを藪に突っ込ませた。

 アダマンタイト製ミニゴーレムの集合体である4つのタイヤが変形してスパイクを生み出し、ガリガリと地面を掻きむしりながら藪に分け入って強引に前進していく。


「うわわわっ。だ、大丈夫なの、シモン?」


「シモンさま、さすがに道以外の場所を走るのは……」


「ジムニーに走れない場所なんてない!」


 近所の兄ちゃんの受け売りだけど。


 でも実際、このRVゴーレムの走破性は反則レベルだ。まず、タイヤは路面に応じて自由に変形する。場合によっては木の根を掴み、突き出した岩に爪を突き立てて車体を保持してくれるので、スリップや滑落の心配はない。

 さらに緩衝装置も当然ゴーレムなので、必要とあればアクティブサスペンションになる。このゴーレムたちが車体を常に水平近くに保ってくれているので横転の危険は少ないし、何かに乗り上げてスタックすることもない。

 そして何より、アダマンタイト製ボディの堅牢性の高さだ。何にぶつかろうが底を打とうが、故障するどころか傷すら入ることもない。



「ななななな、なんだ、何だよこれ、どうなってんだ!?」


「「きゃああーっ!」」


 助手席のシートに後ろからしがみついてちょっと涙目のエルフ少女に、ガタンゴトンと車体が大きく揺れる度に楽しそうに悲鳴をあげるパトリシアとアナベル。

 これはもう、絶叫マシンのノリだな。





 文字通り道なき道を突き進んだRVゴーレムと僕たちは、少し開けた場所で小休止をとる。

 道案内を期待していたエルフ少女が途中からずっと放心状態なので、ただ闇雲に森の奥へとほぼ一直線に走ってきただけだ。マーカーは残してあるから帰り道だけは分かるけど、このままじゃ目的のエルフの里へは辿り着けそうにない。


「はい、パトリシア、アナベル」


「ありがとう」

「いただきます」


 僕は〈ストレージ〉から温かいお茶を出し、カップに注いで手渡していった。

 そう言えば、まだこのエルフ少女の名前を聞いてなかったな。


「お茶をどうぞ。ところで僕はシモン。君は?」


「……プリムラ。 ……いい匂い。ありがとう」


 そのエルフ少女の今までとは全然違う女の子っぽい口調に、思わず全員の視線が集中する。

 エルフ少女、プリムラはそこではっと我に返った。


「なっ、何見てんだよ。見せもんじゃねぇよ!」


「ふぅん、プリムラって言うんだ。あたしパトリシア」


「可愛いらしい名前ですね。アナベルです」


「かかか可愛いとか言うんじゃねぇ! ぶっ飛ばすぞ!?」


 真っ赤になって喚くプリムラを、パトリシアとアナベルがニマニマしながら見つめていた。

 これはからかい甲斐があるぞ、って顔だ。あーあ。





 そのあと、パトリシアとアナベルの「可愛いね」攻撃に晒され、ちょっと大人しくなったプリムラが、素直に里への道案内をしてくれた。

 もうすぐそこ、というあたりで僕たちはRVゴーレムを降り、そこからは徒歩でエルフの里に向かう。驚かせるのも悪いからね。


「着いたぞ。そこがそうだ」


「そこがそうだ、ったって、何もないんだけど」


 プリムラが示したそこには、高さ2メートルほどの小高い崖が続いているだけで、その上にも向こう側にも、集落のようなものはありそうにない。

 もちろんツリーハウスのようなものも見当たらないし、くり抜いて中で暮らせるような太さの大樹もない。


「いいから、おれの後に付いてきな」


 そう言うとプリムラは迷いのない歩調で崖に向かって歩き始め、壁のように立ちはだかる岩肌にぶつかる、と思った瞬間、すうっとその中に吸い込まれるように姿を消した。

 なるほど、結界とか認識操作とか、そういった類の魔法なのか。


 僕たちはプリムラに続き、少しおっかなびっくりという感じで岩肌の幻影を通り抜けた。

 その向こう側で見たものは…… 広場に100人ほど、ずらりと並んだ美男美女の列だった。みんな銀髪に紫の瞳だ。もちろんプリムラ同様、耳も長い。


 その列の中央にいる美男子が、僕をビシッと指さして叫ぶ。


「良い覚悟だ、異郷の者よ! 己の欲するものは正々堂々、闘って勝ち取るがいい!」



 ……はい?

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