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1-13 気持ちよく感謝されなさいよ!

 一瞬の浮遊感のあと、僕とパトリシアは「地下城」入口を囲む防壁の中にいた。

 周りには迷宮に出入りする多くの冒険者たちがいたけど、いきなり出現した僕たちにもそれほど驚くこともなく、一瞥を投げかけるだけでそのまま歩き去っていく。

 その際にちっリア充が、とか、もげろ、とか吐き捨てるように呟いていく人がちらほらいる。まぁしょうがないよね。美少女に抱きつかれてる格好だからね。


 パトリシアもそれに気付いたようで、突然がばっと体を離した。

 見る見る顔が赤くなっていって、もうすぐ頭から湯気でも出そうな感じだ。


「あっ、あの、えっと、ありがとう、助けてくれて。……シモンのおかげで生きて帰ってこられたわ」


「その前に、パトリシアがいなければ、僕はヘルハウンドに食べられて死んでたよ。こっちこそありがとう」


「シモンが先に、あたしをヘルハウンドから助けてくれたのよ」


「でもそれまでは、パトリシアたちが僕を守ってくれてただろ?」


「もう、いちいちうるさいわね。気持ちよく感謝されなさいよ!」


 よしよし、調子が戻ってきたな。やっぱりこっちの方がパトリシアらしい。

 照れている様子もそれはそれで可愛かったけど。



「……パティっ!?」


 まるで悲鳴のようなその呼び声に驚いて振り向くと、すごい勢いでこちらに駆け寄ってくるアンナの姿があった。

 ウォーレンとダンカンも一緒にいて、さらにその後ろには10人ほどの大荷物を担いだ冒険者たちの姿もある。

 それに気付いたパトリシアもアンナの名を呼びながら走り出し、二人はしばらく感極まったように抱き締め合っていた。

 そのあと僕たち5人は「地下城」近くの宿に部屋を借りて、これまでの経緯を話し合った。


 ウォーレンたちは、僕とパトリシアが罠にかかってからすぐに付近を捜索したけど手掛かりひとつ見付けられず、帰還の護符を使って一旦ダンジョンから脱出した。最低限の荷物以外は全部僕が持っていたから、これは当然の判断だろう。

 そしてここで僕とパトリシアの戻りを待っていたけど、一晩経っても帰って来ないので急遽捜索隊を編成し、まさに今「地下城」に入ろうとしていたところだった。


 一方で僕とパトリシアについては、


「魔法の効かない魔獣がいっぱい出てきて、それをシモンがあっという間に全部倒しちゃったのよ。それはもう、すごかったんだから! そのあともね……」


 僕はほとんど喋る機会を与えられなかった。

 彼女がどこまで話すつもりかとハラハラしながら聞いてたんだけど、僕のステータスに「勇者」の文字があったことは黙っていてくれた。

 あとでこっそりお礼を言っておこう。





「へぇーっ、シモン君は造魔士だったのか。……だけどこれは、ゴーレムには見えないね」


「金属の礫を飛ばして攻撃するってんなら、スリングみたいなもんか?」


「ゴーレムは人の姿を模していなければならない、って、前に手引書で読みましたよぉ?」


 ウォーレンとダンカン、アンナにコルトM1911もどきを実際に手に取って見てもらった。

 3人とも使い方がわからないようで、あちこち弄ったり振り回したりしている。これが実銃なら慌てて取り上げるところだ。


 でも、ゴーレムが人の姿でなければならないってのは初耳だな。もしかして、それを破ると何かの禁忌に触れるってことだろうか?

 ちょっと不安になったので聞いてみると、人の似姿以外のゴーレムを作ってはいけないのではなく、作っても動かないはずなのだと言われた。


 そうは言っても実際動いてるし、何か例外があるんだろう。





 次は、最後の小部屋で見つけた財宝についてだ。


 それについては僕とパトリシアが見つけて手に入れたものなんだから、どうするかは二人で相談して決めればいい、と言うことになった。


「あたしはほとんど何もしてないもの。ちょっとでいいわよ」


 それを言うなら僕の方こそ、探索最終日まではほとんど何もしてなかったんだけど。何せ、ただの荷物持ちだったからね。

 とは言っても、お互いに譲り合っていては前に進まない。


「それじゃあ、嵩張る家具やアダマンタイトゴーレムの残骸は僕が貰って、金貨や宝石はあとの4人で山分け、ってことでどうかな?」


「え? うーんと、そうね……」


「シモン君も入れて5人で山分けならどうだい、パトリシア」


「それならいいわ!」


 それだと僕の取り分が極端に多くなっちゃうんだけど。

 でもまあいいか。せっかく話がまとまりかけてるんだし。


 皆の気が変わらないうちにと、〈ストレージ〉から金貨と宝石、装飾品なんかを出して一気にテーブルの上へ積み上げる。

 その量の多さはウォーレンたち3人の想定をはるかに超えていたようで、最初のうちこそ歓声をあげていたものの、途中からは無言で呆然と財宝の山を見つめるだけだった。

 全部出し終わると今度は、預かっていた荷物の中に頑丈そうな革袋が幾つかあったので、それを人数分出して大まかに財宝を5等分する。


「好きなのを選んでください。僕は最後に残った袋を貰います」


「いや……でも、本当にいいのかい? まさかこれほどの量だとは思わなかったよ」


「それ、大金貨だけでも100枚以上入ってるだろ。いったい幾らくらいになるんだか……」


「一袋だけでも、十分に一生食べていけますねぇ」


「やっぱり多過ぎるわよ。もっとシモンの取り分を増やしてもいいんじゃない?」


「一人一袋、もう変更はなし! さあ、遠慮なく受け取って!」


 誰も手を出そうとしないので、結局僕が強引に手渡すことになった。

 意外にみんな欲がないな。僕も他人のことは言えないけど。





 不本意ながら参加したこのダンジョンアタックのおかげで、十分なお金と強力な武器、そして貴重な素材が手に入った。誘ってくれたウォーレンに感謝しなきゃな。

 それと、僕に戦う気を起こさせてくれたパトリシアにもだ。


 だけど防御力が相変わらず紙だよなぁ。

 これを何とかしないと、寿命までこの世界で平和に過ごせないぞ。

これにて第一章が終了です。明日から第二章に入り、主人公(のゴーレム装備)がガンガン強化されていく予定です。


もしこの作品を面白いとお思いになられましたら、ブックマークやポイント評価、ご感想など頂けますととても励みになりますので、どうぞ宜しくお願いします。

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