表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/55

第53話 覚醒、美少女戦士!

 イリスがその言葉を放つと同時に、掲げた妖刀ムラサマから光がほとばしる。その光がなぜかリボンのような形になってイリスの体にまとわりつくと、それまでイリスが着ていた胸当てや革の服が消え失せる。もっとも、大事なところは光に覆われていて見えないが。


 そして、胴体、腕から手の先、足首から足の先、頭頂部を覆っていた光のリボンがティアラや衣服に変化する。


 これは……帝国海軍の水兵(セーラー)の服装? ……にしては少し変だな。あれは体の線が出ないダブダブの服なのだが、これは胸元とか腹部はぴっちりと体にまとわりついていて、イリスのスレンダーで均整のとれたプロポーションがよく分かるようになっている。それに、腰から下はズボンではなくスカート状だ。


 また、水兵(セーラー)服だと襟にはスカーフが巻かれるのだが、その代わりに胸の中央に蝶結びにされたリボンが飾られていて、その中央には大きな美しい宝石をはめ込んだブローチが光っている。


 あと、水兵(セーラー)服の襟は青や紺色が多いのだが、これは緑色だ。イリスの髪や瞳の色と同じだな。スカートや靴も同色になっている。


 篭手が消えた腕には、肘まで覆う白い長手袋が着けられており、肘のあたりに緑色のアクセントが入っている。脛当ては消えたが、靴は色こそ茶色から緑に変わったものの普通の編み上げの靴のまま……いや、ヒールが少し高くなっているな。


 首には緑色のチョーカーが巻かれ、額には金色(こんじき)のティアラが装着されている。ティアラの中央にも緑色のエメラルドとおぼしき宝石が輝いている。


「な、何だ!?」


 驚愕するメイガス。俺たちも驚きで声が出ない。


「何で木星!? いや、確かにイリスのイメージカラーは緑であるが、普通はイリスのキャラと髪型なら天王星であろうが……」


 いや、例によってクミコだけは意味不明のツッコミを入れているんだが、モク星とかテンノウ星って何だ? 星の名前っぽく聞こえるが、そんな星聞いたこと無いぞ。


 そんな俺たちをよそに、すっかり服装が変わったイリスは、少し自分の姿を見直していたものの、すぐに妖刀ムラサマを右手で逆手に構えて軽く腰を沈めてクリスタルリビングアーマーを睨みつける。


「何かは分からぬが、『コンプリートビーム』で撃て!」


 メイガスの命令を受けたクリスタルリビングアーマーの頭部の目に当たる部分から七色の光線が発射される。


「カバー……駄目!」


 カチュアの声が一瞬遅れたのは、常に冷静なカチュアでさえも驚いて呆然としていたからだろう。発射と同時ではカバーが間に合わない!


「ハッ!」


 だが、気合一閃! イリスは発射とほぼ同時に着弾した光線をムラサマでなぎ払った!!


「馬鹿な、お前たちのスライムと同じ七属性の光線なのだぞ!?」


「今のボクに飛び道具は効かないよ。この状態だと、あらゆる射撃攻撃を自動迎撃する常時発動(パッシブ)スキル『ゴエモンイアイ』が発動しているからね」


 驚愕するメイガスに対して淡々と答えるイリス。外見が変わるだけでなくて、スキルなどもパワーアップしているみたいだな!


「おお!」


「凄い!」


「強いですぅ!」


「隙がござらん」


「羨望」


「ヲーッホッホッホッホ! さすがはイリスですわね」


「そのスキル名だとコンニャクは切れなそうな……」


 例によって意味不明のツッコミをしているクミコ以外は素直に感嘆する俺たち。


「なるほど、確かにパワーアップはしたようだ。だが、守るだけではクリスタルリビングアーマーには勝てんぞ!」


 強がるメイガスに、しかしイリスはクールに言い放つ。


「守りしかできないって誰が言ったのかな?」


 そして、逆手に持ったままのムラサマを目の前に水平に掲げると、左手を刀身の上面に添えて口を開く。


「『プラズマ・ブレード』」


 そのスキル宣言と同時に、左手を刀身の上面に沿って撫でるように動かすと、その手の動きに合わせて刀身が光り出す。


「火属性と光属性と金属性を兼ね備えた追加効果か? だがクリスタルリビングアーマーには全属性攻撃が無効だ!」


 少し気圧されながらも、冷静にスキルを分析し、己の有利を確信するメイガス。だが、そんなメイガスに対してイリスはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、クリスタルリビングアーマーに正対し、右手一本で逆手に持ったムラサマを体の後ろに引いて、中腰に構えて言った。


「なら、このムラサマとボクの力を試してみるかい? 必殺『オーディン・ストラッシュ』!!」


 次の瞬間、イリスの姿が消えた。


「何ッ!?」


 驚愕するメイガス。俺たちは声も出ない。


 一瞬のうちにクリスタルリビングアーマーの背後に移動し、ムラサマを下から切り上げた体勢で残心の構えを取っているイリス。どうやって動いたのか、俺の目にはまったく見えなかった。


 次の瞬間、クリスタルリビングアーマーの左の肩口から右の腰にかけて真っ直ぐに線が現れると、そこから上の部分が現れた斜線に沿ってずり落ちていく。


 それと同時に密偵の片眼鏡(スカウトモノクル)の表示でも、クリスタルリビングアーマーのHPバーが急激に減りだして、一気にゼロになる。


「ば、馬鹿な……」


 絶句するメイガス。それに向き直りながら淡々と口を開くイリス。


「追加属性の効果が無くても、このムラサマがプラズマ・ブレード状態になったら『戦神オーディン』の加護によってダイヤモンドだって切れるのさ」


 そして、再びオーディン・ストラッシュの構えに入ると、メイガスに問いかける。


「さあ、どうする? そのご自慢の鎧はボクのムラサマには耐えられないよ」


「うぬ……」


 渋面になるメイガス。


「よし、メイガス、そのまま動くな! イリス、こいつが少しでも動いたりテレポートの魔法を使いそうな様子があったら、遠慮無く切っていいぞ」


 そうメイガスとイリスに言いながら、俺はメイガスを捕縛すべく慎重に近づいていく。イリスのオーディン・ストラッシュなら何かしようとした瞬間に発動すれば逃げる前に倒せるはずだ。


 そう思っていたのだが……


 ドガァァァン!!


「何だっ!?」

「キャアッ!」

「クッ!?」

「ふぇっ!?」

「何事!?」

「!?」

「ヒイィッ!」

「爆発!?」


 突然の爆発と振動に、俺たちが一瞬注意を逸らされた瞬間だった。


「テレポート」


「っく! 待てっ!!」


 俺が叫んだときには、既に瞬間移動の魔法を発動したメイガスは俺たちの前から消えていた。


「やられたな……」


「恐らく、事前に爆発物をしかけていたのであろうな……」


 つぶやいた俺に答えるようにクミコも自分の推測をつぶやく。


「どこに?」


 アイナが尋ねたのに対して、クミコは城壁の角に立っている物見塔を指さす。その窓から黒煙が立ち上っていた。


 それを見たマイケルが顔面蒼白になって叫んだ。


「あ、あそこは対モンスター結界を発生させる魔法陣がある部屋だ! あれが破壊されたら、この街を守る対モンスター結界の八分の一が崩れて、モンスターが侵入してくるぞ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ