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第35話 突入強行

「うわ、確かにコレはボス部屋っぽい位置ね」


 地図をのぞき込んだアイナも言う。


「ローグライクダンジョンだから毎回地形は変わってるはずだが……」


「でも、一定のパターンはあるんじゃない? コレ、どう考えても罠っていうよりはショートカット通路よね」


「確かにソレっぽい気はするんだが、だとするとあの罠みたいな構造は何なんだ?」


 そう言った俺に、アイナは何かに気付いたような顔になって答える。


「そういえば、前にお祖母ちゃんが言ってように、このダンジョンって以前は単身(ソロ)挑戦が前提だったのよ。『単身挑むべし』って言い伝えがあったの。今は時代の流れでパーティー挑戦が認められるようになったけどね。で、あの罠ってソロ挑戦前提で考えると『パーティー分断』の罠じゃなくて単なる『一方通行(ワンウェイ)』なのよね」


「そういうことか! 後戻りできないかわりにボスへショートカットできるってことで、だから通路の奥の一見何も無さそうなところに隠してあったんだな」


 と言ったところで、あることに気付いてアイナを見ると、アイナの方も何かに気付いたような顔で俺を見ていた。二人で顔を見合わせながら口を開く。


「「つまり、みんなと合流できない」」


 片言隻句も違わずにハモってしまった。


 思わずプッと吹き出すと、アイナの方もツボに入ったらしく腹を抱えて笑い出す。俺も笑いを止められずに、腹の底から大笑いしてしまった。


 いや、シチュエーション的には非常にマズい状況なんだけど、この状況でハモったってところがね。


 ひとしきり笑ってから、少し落ち着いたところで改めて状況を確認する。


「このままだと、俺たち二人とスーラとルージュだけでボス戦ってことになるが、どう思う?」


「無謀よね」


「だな」


 俺たちのレベルも以前に比べれば上がってきている。既にレベル20は超えて再転職(ジョブチェンジ)も可能ではある。ただ、条件が厳しい上級職を狙っているので、俺もアイナも転職(ジョブチェンジ)はしておらず召喚士(サモナー)のままだ。転職(ジョブチェンジ)前ほどの戦闘力は無いが、転職(ジョブチェンジ)直後に比べたら能力値(ステータス)は遥かにマシになっている。


 それでも二人+二匹でボスに挑むのは無謀だろう。


「特にボスが光属性のゴーレムだったらマズいな」


「ええ。でも逆に炎属性だったら、ルージュには一切の攻撃は効かない」


「確かにな。こっちの攻撃で倒すこともできないが、ルージュを囮にすれば持久はできるか」


 そこで気付いたことがあったのでアイナに確認する。


「このダンジョンのボス部屋って、後戻り可能だよな?」


 ダンジョンのボス部屋の中には、入ると入口が封鎖されて撤退できないものがある。その一方で、扉を開けて逃げられる場合もある。撤退できないやつは機密保持のために訪れた者を絶対殺すという意図でそうなっているらしい。逆に、撤退可能なやつは最深部のモンスター生成所を守れるなら逃げ帰ってくれていいと割切ってるんだろう。このダンジョンは確か撤退可能だったはずだ。


「ええ、扉を封じているのが精霊だから、精霊使い(シャーマン)の『精霊交信』のスキルを持っていれば、頼んで開けてもらえるわよ」


「さっきの一方通行(ワンウェイ)みたいなことにならんか?」


「んー、ちょっと聞いてみる……うん、開けてくれるって。ほかの扉も同じだって言ってるわ」


 それを聞いて、俺は思わず叫んでいた。


()()()()!? つまり、別の出入口が有るんだな!!」


「あっ! そうよ、このボス部屋には、このショートカット通路以外の出入口もあるってことで、つまりそっちから出れば……」


「「みんなと合流できる!!」」


 またピッタリとハモったけど、今は笑ってる場合じゃない! 


「よし、それなら入ろう。今までの経験上、属性ゴーレムの攻撃力は結構強いが、俺なら二~三撃は耐えられるし、回復魔法を併用すればもっと持久もできる。スーラとルージュは召喚解除して突入し、俺が耐えてる間にアイナが扉を探して開いてくれ」


「待って、炎属性の『フレイムゴーレム』だったらルージュを囮にする方がいいわよ。もう火属性攻撃も物理攻撃も効かないんだから。召喚解除はすぐにできるんだし、突入してから召喚解除してもよくない?」


「光属性の『ライトゴーレム』だった場合は一手遅れるぞ」


 アイナが召喚解除してから扉を探すことになるからな。


「逆に『フレイムゴーレム』だった場合は一手早くなるわ」


 確かにな。その場合はアイナがルージュを召喚解除する必要はない。逆に、召喚解除してたら召喚の手間が必要になる。


「賭けだな。だが大した賭けじゃない。ここは突入してから必要に応じて解除しよう」


 俺はスーラとルージュの召喚解除をしないで突入することを決断した。スーラは解除しておいても問題ないが、ここで一匹だけ仲間はずれにするのも可哀想だからな。


「オッケー。それじゃ開けるわよ」


 アイナが隠し扉があるらしい壁に手をついて目を閉じ、精霊と交信をする。すると壁の一部に亀裂が走り、開口部が現れる。


「よし、突入だ!」


 そう言うと、俺は先頭に立ってボス部屋に突入した。


 ボス部屋の中央に光が集まって、モンスターが姿を現す。その色は、真紅!


 灼熱の炎の塊が大きな人の姿を取っている。フレイムゴーレムだ!


「よし、フレイムゴーレムだった、ルージュを前に出してくれ。俺はアイナのフォローに回る。スーラは今回は戻って……」


 言いながら召喚を解除しようとしたとき、スーラが何かを訴えてきた。このスキルを使わせろって?


「えっ『合体』? だって、ここにはお前とルージュしか……スキルレベルが上がってる!?」


「ちょっ、リョウ!?」


 あ、ヤベ、驚いて口に出てた。が、今は逡巡(しゅんじゅん)してる場合じゃないな。


「スーラ、合体だ!」


 ふにょん! 俺の命令にスーラは喜ぶように大きくうごめくと、ルージュの方に向けてジャンプした。ルージュもスーラの方にふにょんと大きく飛び上がると、空中でスーラと接触する。そのまま、二匹がふにょ~んと融合して、ひとまわり大きな赤色のスライムに変化する。ビッグスライムほどデカくはないが、普通のスライムよりは大きい。さしずめ「フレアミドルスライム」ってところかな。色合いからしてルージュが主体になってるっぽいから仮にミドルルージュとでも呼んでおこうか。


「ええっ、二体合体!?」


 アイナが驚きの叫びを上げる。


「どうやら『合体』のスキルレベルが上がって可能になったらしい。これでフレイムゴーレムの相手はあいつに任せていいだろう。早く扉を開けてくれ」


「りょ、了解!」


 俺が手早く説明すると、アイナもうなずいて走り出す。俺たちが入ってきたのは、この正方形のボス部屋の東の壁に開いた隠し扉だ。たぶん、西と南にも隠し扉があるはずだし、おそらくは南の隠し扉がイリスたちがいる方につながっているはず。


 アイナも同じ推測をしていたのだろう、真っ直ぐに南の壁の中央に向かっている。と、そこでフレイムゴーレムが走るアイナに気付いて、顔をそちらに向けた。


 マズいっ! ミドルルージュは合体した直後の硬直時間で動けないみたいだ。普段のレインボゥへの合体より高いスキルレベルを要求されるからか、二体合体だと硬直時間が延びてるらしい。フレイムゴーレムの前に出て注意を引くことができないんだ。現状では動いているアイナの方が攻撃対象(ターゲット)として狙われる!!


 クソっ、判断をミスった! 合体させずにルージュだけ前に出せば良かったんだ。あるいは、合体したあいつが動けるようになってからアイナに扉を開けさせるか。初の二体合体なんだから、もっと慎重に指示を出すべきだった。


 どっちにしろ後悔しても遅い。今俺にできることは……これだ!


 俺はアイナを追って走り出す。命令しただけだから硬直時間とか無いからな。全力疾走して先行するアイナとの距離を測る。あと少し、あと少しだ……よし!


 俺が()()()()まで近づいた正にそのときにフレイムゴーレムの手から火炎弾が放たれる。それは(あやま)たずにアイナを狙って一直線に飛ぶ!


「キャアァっ!!」


 火炎弾の風切り音に気付いて振り向いたアイナが、自分に迫る火炎弾を見て、思わず足を止めて悲鳴を上げた。

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