六想 遊戯者
マリアの部屋に入った私は驚いた。
広い・・・というのは勿論のことミニバーから大型本棚までそろっていた。
「亜衣ーなんか飲むー?」
と言ってもアルコールっぽい瓶しか見当たらないのですが・・・
「え、えーと。何があるんでございますか・・・?」
「何でもあるわよぉ。
ロマネコンティ(貯蔵庫から失敬)にドンペリ(パーティーから失敬)に・・・あっ、シャトー・マルゴーの方が飲みやすいかしら」
おいおい、この姉さん私がアルコール摂取できる年齢だと思ってらっしゃるんじゃあ・・・
「なにぃなにぃ〜?ノリ悪いわね!今日は悠、追い出したからゆっくりしゃべれるわよぉ〜」
なんて言ってらしたから、てっきり夜通ししゃべるのかなぁ〜と思っていたら
・・・爆睡
「もしも〜し?マ〜リ〜ア?」
駄目だ・・・完全に眠ってらっしゃる
仕方がないので私も眠ろうとする
が・・・いろんなことがありすぎて簡単には眠れるものではない・・・・
何の気なしに扉を開けて外に出てみる。
心地よい風にひかれ部屋の外に出てみる
廊下を歩いて行くとそこには・・・奏樺がいた。
「あれ?どうされたんですか?こんな時間に・・・」
「それはこっちのセリフ!寝てないの?」
私がそう言うと
「寝ましたよ。亜衣こそ寝ないんですか?」
「私は・・・その・・・なんて言うか・・」
う〜ん、なんて言ったらいいんだろ?
「お腹すいたんですか?」
「違う!!!」
いきなり何てこと言うの!?この人
「私はぁ・・・その・・寝付けないって言うか・・・」
「そうですか。なら、僕と遊びません?子供達も寝てますし」
遊び?
なんと唐突な・・・
「最近、対戦相手がいなくて困ってたんですよ♪」
「は、はぁ・・・」
は、話についていけない
「何ができます?麻雀?トランプ?ビリヤード?チェス?」
「い、一応全部できるけど・・・」
「素晴らしい!じゃあ、ちょっとついてきてください」
そういう奏樺はどこか楽しげだった。
「好きなの?ゲーム」
「大好きです。コンピューターゲームはあまりしませけど・・・あっ、ここです」
目の前のドアには
『遊戯室』
と書かれていた。
ドアを開くと、本格的なテーブルがズラリ
ビリヤード台からダーツまで
一見するとプールバーかと思ってしまう。
「何にします?お好きなもので構いませんよ」
むむっ、これは・・・チャンス?
ここまで完璧な人を唯一打ち負かすことができるのでは・・・と淡い期待を抱きつつ自信のあるゲームを脳内検索する。
『オセロ』だ
「じゃあオセロで」
「ほぅ、自身がおありのご様子ですね」
妖しく奏樺の目が光る。だが、私もゲームにかけては、羽崎家最強を自負する。
「では、こちらにお座りください」
本格的なテーブルの前に座る
「それでは、スタートです」
パチン、パチンと3手ほど打ったところで私は名案を思い付く
「ねぇ、奏樺。これ、負けた人が勝った人の言うこと何でも3つきくって言うのはどう?」
「僕は、構いませんよ」
「絶対だからね。約束破らないでよ?」
「僕は執事ですよ?ジャック=スペンサーの名に誓って破りません♪」
ふふっ、終わった時が楽しみね・・・
いささか、私を甘く見たのが運の尽きよっ!私の実力、思い知らせてやるわ!
15分後、奏樺の声が私の耳に届く
「僕の勝ちのようですね?」
目の前の盤面には、私の白が黒に埋め尽くされかけていた・・・
「そ、そんなぁ〜」
「確か・・・『これ、負けた人が勝った人の言うこと何でも3つきくって言うのはどう?』でしたっけ?」
「そっ、そぉよ」
ううっ、まさか私が負けるなんて・・・
何?ここまで差があるの?
何から何まで完ぺきな上にその笑顔がムカつくわね。
「では、お願いの内容はまた今度。今日は、もうお休みください。
そう言って、私を部屋まで送ってくれた・・・
マリアの寝顔を見ながら不思議と心地の良い眠りに私はついた。