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二想   黒織 奏樺

 公園を出たあと2人との会話が楽しくて仕方がなかった。

「本当に知りません?僕のこと」

「す、すみません。分からないです・・・」

 本当に覚えがないのだ。

 

「いえ、それだけ完璧だったってことですよ。ねぇ、悠」

「ああ、ジャックの変装は俺だって見破るのが難しいからな。嬢ちゃんがわかんねぇのも無理ねぇよ」

「黒織です。黒織くろおり奏樺そうか

「は?・・・」

 

 クロオリ・・・クロオリ・・・黒織っ!!

 

「もしかして、髪が長くて黒ぶち眼鏡の地味な黒織!?」

「地味かどうかは分かりませんが確かに黒ぶちの眼鏡をかけてますね」

 

 そういえば、同じクラスなのに影が薄いっていうか存在感がないというか

 一度も声を聞いたことがない。

 入学してもうすぐ8ヵ月が経とうというのに必要最低限の会話しか、しないし・・・

 とても目の前の人と同一人物だとは思えない。

 それに年中冬服

 真夏の日でさえ上着を脱がない。

 

「ジャック、俺のことも紹介してくれよ」

「そうですね。羽崎さん。こちら、僕の同僚の麻島ましまゆうです」

「はっ、初めましてっ。先ほどは危ないところを助けていただきありがとうございましたっ」

「なぁに、女助けんのは男の役目だかんな」

 

 黒織君といい麻島さんといい、この人たちいい人じゃない!

 それにしても、黒織君がホントは、こんなきれいな人だったなんて・・・なんか得したかも・・・

 同時にたくさんの疑問が出てくる。

 

「何で学校じゃあんな格好してるの?そんなきれいな顔隠すのもったいないよ」

「プッ、ガハハ。嬢ちゃん。こいつに惚れたかい?やめといた方がいいぜぇ」

「悠!失礼ですよ。えっとですね。僕も面倒なのですけど、どうしてもって言われてるんですよ。それに眼も目立ちますし」

 確かにそうだ。

 彼の赤い眼はとても目立つ

 

「その赤い眼ってカラコンじゃないの?本物?」

「普段学校でしているのがカラーコンタクトですね。虹彩異色症自体珍しい症例なのですが、その中でも赤眼は天文学的数値で希少だそうですよ」

「そうなん・・・ハッ、ハッ、ヘックチュンッ!」

 さ、寒い。

 そういえば、服も湿ってるような。風邪ひいたかな?

 

「大丈夫ですか?困りましたね」

「ジャック。嬢ちゃん一回家に連れてきた方がいいんじゃねぇか?」

「そうですね。羽崎さん。ちょっと、家に寄っていただけません?」

 

い、家?

どんなとこだろ?ちょっと気になるかも・・・

 

「じ、じゃあ・・・、よろしくお願いします」

「では、失礼」

 

そういって、彼は私の体を持ち上げた。

(ヘッ?どういうこと?ってこれお姫様だっこってやつじゃ・・・きゃー、は、恥ずかしい)

 でも、彼から出てきた言葉の意味が分からなかった。

 

「悠、屋根・ ・借りましょうか」

「そうだな、その方が早いか」

 

屋根?

屋根って家の?借りるってどういうこと?

 

「羽崎さん、目を瞑っていた方がいいですよ」

この瞬間、宙に浮いた気がした。

私が、眼を瞑る前に見たのは塀に乗っていた悠さんだった。

 

「飛ばすぞ!ジャック」

「人に迷惑がかからない程度に」

 

まさに、屋根から屋根に飛び渡っていた。

宙に浮いたかと思うとまた屋根が・・・そんな感じだった。

言いようのない浮遊感が体中にまとわりつくような心地よい感覚だった。

 

 

そんなに時間はかからなかったと思う。

せいぜい5分くらいだったと、少なくとも私はそう感じた・・・のだが

目の前にある建物は見たことのないくらい大きな家・・・いや、屋敷と言った方が正確に伝わるだろう。

まるで、漫画や絵本の一ページ。映画のワンシーンから出てきた、と言っても納得できる。

そんな建物だった。

 

  

「ここが僕らの本拠地です」

そう言う黒織君の顔は、どこか誇らしげだった。

私を抱えたまま彼はドアを開けた。

瞬間


「お帰りっーーー!ジャック・悠ッ!お疲れーーってあれ?」

メイド服を着た女の人や黒織君と同じ黒いスーツを着た男の人が近づいてくる

(み、みんなきれいな人たちだっ。うわぁ、す、すごい)


茶色い髪の毛のきれいな女の人が近づいてきて

「ちょっとちょっと、ジャックその子、どなた?どこから・・・キャー!!!」

いきなり女の人が悲鳴を上げた。


「ジャック!悠!これはどういうこと?」

すごく怖い顔で私の服を指さす。

それは、泥だらけの私の服だった。


「いや、それは・・その・・・ねぇ悠」

「お、おうよ。これにはだな。深い事情が」

しどろもどろになってる二人に追い打ちをかけるように


「言い訳無用!!!こんなかわいい子相手に一級執事二人が・・・何したのッ!?」


イッキュウ・・・シツジ?

分からない単語が混じってたけど、とりあえず二人が怒られてるってことはわかった。


「ご、誤解ですよっ、この方はですね。え〜っと」

「ホラ見なさい!!理由言えないんでしょ!!この子に何したの!!」

「ち、ちょっと待てよ。マリア。この子はだな、俺たちが偶然通りかかって助けたんだって・・・そうだよな?ジャック」

「え、ええ!もちろんです。執事たるわれわれが・・・」


なんだろ?すごく可笑しい

あっという間に私を助けてくれた二人が一人の女の人に言いくるめられてるなんて


「プッ・・・・アハハッ、ハハハハッ」

みんなが私の方を見た。

でも、すごく可笑しくって


「ハーッ・・・ハーッ・・・えっと、二人は、私を助けてくれ・・たんです・・ケド?」

息も絶え絶えなるほど面白かった。


「そうだったの?ならいいわっ」

「だから僕たちそう言ってたんですけど・・・ねぇ?」

「ああ、我ながら情けねぇよ」


ここでようやく黒織君が私を降してくれた。

「そういうわけですからマリア。この方をお風呂に入れてください。あと着替えも」

「んもう、ジャックったら。最初からそう言ってくれればよかったのに」


すごい変わり身の早さだ。

さっきとは全然違う。


「パパッー」

かわいい声と共に小さな女の子が走ってくる。

黒織君は、その子を抱えた。


「ただいまです。椿つばき


パパ?パパってアレ?

父親ってこと?えっ?

子持ち?

高校生はパパですか?ってやつ?


「ちょっ、黒ッ」

織君っ、と言おうとしたがその前に


「ハイっ、じゃあ、おねいさんと一緒にお風呂入りましょ」

と先ほどの女の人に私は引きずられていった。


ああ〜聞きたいのにぃ〜


「ジャック、私たちがあがるころに始めましょ。パーティー」

「ええ、この日のために腕によりをかけた・・・」


最後の方はわからなかった。

メイドさ〜ん、ちょっと〜待って〜




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