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一想   聖夜

今日は12月24日つまり、世間でいうところのクリスマス・イブだ。


そんなおめでたい日、私は暗澹あんたんたる気持ちで夜道を歩いた。

3人家族の我が家は両親が半年前に海外に長期出張中だ。

おまけに友人2人とするはずだったクリスマス・パーティーをドタキャンされてしまった。


「はぁ〜寒いっ!」

半ばやけくそで声を出し寒さを吹き飛ばそうとする・・・がそんなもので吹き飛ぶほど世界はやさしく作られちゃいないことを改めて認識する。

「なんなのよっ!もうっ!」

イルミネーションの明かりに照らされながら、私は自分の不幸を呪う。同時にドタキャンかました友人の不幸も祈ってみる。

「大体イブだからって彼氏といるってのが間違ってるのよねっ!馬鹿馬鹿しいっ・・・」

彼女の悲しき魂の叫びが響き渡る。



このまま誰もいない家に帰ってクリスマス特番でも悲しく見るか?盛大にファミレスで食べるか?で激しく葛藤した結果正月に備えるため前者を選択した。

(はぁ〜、お腹すいたぁ〜)


公園への道を通り近道をしようとする。

数分後・・・・この選択が過ちだったと彼女は思い知らされることとなった。



「・・・・・・・しまった」

公園が、数人のはしゃいでいらっしゃる方たちの夜のおたわむれの場所だとは知らずに踏み込んでしまった。


公園といえどもいささか小さい場所

そんな場所に人が入ればすぐにわかってしまうのは当然のことである。


「うわぁ、全員こちらに注目していらっしゃる・・・」

ちょっと、危ない感じの少年たちがじりじりと近寄ってくる。

(なんでだろ?今日、厄日かな?)


「おい?どうする?結構可愛い顔してるぜ?」

「ああ。久しぶりに朝までトベそうだな」

「それ、サイっコー」


あと3mというところまで少年たちは迫ってきていた。

とりあえず、策はないでもなかった。こう見えてもそれなりに体育の成績は良い

つまり、こんな時にとる手段は・・・


「逃げるが勝ちっ!」

というセリフと同時に走り出した。


だが、いくら運動神経が良くても男性の体力にはかなわなかった。

いや、正確に言うと服をつかまれそのまま地面に倒されてしまった。


「いったぁ・・・・」

「逃げなきゃ優しくしてヤレたんだけどよぉてめーが逃げっからよぉ」

と明らかに貞操の危機に直面していた。


「いや・・・ちょっ…待ってよ・・こんなのって・・・」

動こうに手足がつかまれぴくりとも動けそうにない。

少年たちは既に順番まで決め始めている。

下品な笑い声しか聞こえてこな・・・・かったのだが・・


「それくらいにしておいていただけません?」

よく澄んだ声が聞こえた。


「全く、かわいい嬢ちゃん一人に何やってんだか」

今度は、バスのゾクゾクッとくるような声が聞こえた。


暗闇から二人組の男が出てきた。

細身の人と体ががっちりした男の二人組だった



「数人がかりで女性を取り押さえるとは・・・」

突然出てきた男二人組に少年たちが反応する。


「お前らにゃ関係ねーだろっ!失せろ!」

「いいやぁ〜?失せるのはお前らだ」

だんだん、男たちの距離が縮まっていく


「ジャック、こいつらどうする?」

「そうですね。なるべくなら僕も手荒なまねはしたくなのですが、彼らが女性を解放しないというのであれば体に教え込ませるしかないですね」

「だな」


少年たちは、二人の会話にしびれを切らしたように

「ごちゃごちゃうるせぇぞっ!」

一人が、男たちに向って突っ込んでいく

細身の男の方が倒しやすいと思ったのかジャックと呼ばれた男に向かっていく


向かっていった・・・と思ったのだが、いつの間にか横のほうに倒れている。

「なっ・・・」と男たちにも動揺が広がったようだ。


「もう一度申し上げます。ここから立ち去っていただけませんか?せっかくのクリスマスですし」

「バッカヤロウッ!そんな、情けねぇマネできっかよ!」

少年たちが一斉に二人の男に向かっていった。と、同時に私の手足が自由になる。


まさに一瞬

わずかな時間の間だけで二人の男に向かっていった少年たちがすべて地面に伏していた。


「口ほどにもないやつらだったな」

「ですね。っと」


二人の男が私の方に近寄ってくる。

「もう大丈夫ですよ。立てますか?」

暗くてよくわからなかったケドよく見れば細身の男はとてもきれいな顔をしていた。いや、きれいという言葉だけでは足りないくらいだ。

両手の人差し指には銀の指輪を

両手の中指には金の指輪がとても印象的だった。

一番印象的だったのは、眼だ。

右目は普通の日本人と同じ黒い目なのだが、左目は紅の瞳だった。


体ががっちりした男の人はそれだけで強そうという印象を受ける。

二人とも黒いスーツとコートに身を包んでいた。


「あの、大丈夫ですか?・・・へっ?あれっ?羽崎さん?」

「えっ?なんで私の名前を?」

「おっ、なんでぇジャック。知り合いかよ?」


おかしい。

こんな美形なら忘れるはずがないんだけど

それに、この言葉づかい。

絶対忘れるはずがない。


「失礼ですが、御名前は?」

「羽崎ですけど・・・羽崎はねざき亜衣あい

「ああ、やっぱり」


よくわからないといった様子でもう一人の男が話に入ってきた

「おいおいジャック。ちゃんと説明しろよ」

「えーと、同じ学校の旧友・・・クラスメートです」


(うそっ、私のクラスにこんな人いないよっ)

いくら記憶をたどってみてもクラスどころか学校でもこんな人を見かけたことない。

いたら噂になっているはずだ。

そんな私の疑問に答えるように


「僕、学校では変わりますから」

(何?『変わる』って?どういうこと?」

「っと、長居は無用です。早いところここから出ましょう」

「そうだな、誰かに見られても面倒だしな」


ふと、彼が私の格好に気づいたようで

「その服、泥だらけじゃないですか?」

といって、自分のコートをかけてくれた。


(や、や、優しいぃぃぃぃ!)

「や、でも、汚れちゃいますし。結構ですぅ」

「何言ってるんです。風邪ひいちゃいますよ」

有無を言わさない口調だったので私は黙って従うことにした。


公園を出ようとすると彼が倒れている少年たちに目を止めた。

「悠、携帯貸してください」


悠と呼ばれた男は、ほいよと携帯を渡した。

「どうすんでぇ?ジャック」

「決まってます♪」


ゴホンゴホンと咳払いして3ケタの数字を押していった。

「あっ、もしもし。今、高羅木公園で青年たちがけんかしてるんです。すっ、すぐに来てくださいっ!」

ピッ・・・


「とんでもねぇやつだな。声まで変えやがって」

「彼らがここで凍死したら目覚めが悪いですからね」

「さっ、お巡りさんが来ないうちに出ましょう」


こうして私たちは公園を出ました。

これが、私と彼との出会いでした。





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