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01 出逢い。




ハローハローハロー!

高校の時に書いたマンガを小説化してみました!


吸血鬼ラブー!






「“この世の異物だろうが、神に逆らい人間と共に生きよう! 我らは神の反逆者! 家賊だ!!” そう拙者がみなに伝えて、我らは家賊になったんだ」


 そう語るのは、まだ若々しい青年だった。

 その青年を見上げるのは、幼い少女。目を輝かせていた。

 幼い少女の隣にいた同じくらいの少年は違う。浮かない顔をしていた。


「これが成り立ちだ」


 そこで大きな少年が口を開く。

 

「13日の金曜日に呼び出して、何度も話さなくてもいいでしょう……一代目!!」

「拙者の跡を継ぐ者に聞いてほしいのだ」


 青年はブーと口を尖らせた。


「継ぐ者って……二代目候補者。これしか来てないじゃないですか」


 和室には幼い少女と瓜二つの少年と、浮かない顔の少年と、そして大きな少年。青年と合わせて、五人しかいない。

 大きな少年の名前は、レッラス。双子の名前は暁斗あきと小夜こよる。浮かない顔の少年の名前は人志ひとし


「第四回目なのにね。一代目悲しい」

「……」


 泣き真似をする一代目に、どんな反応をすればいいかわからないレッラスだった。


「人志くん。会うの初めてだね」


 小夜は人志に声をかける。

 人志がビクッと震え上がり、怯えた反応を示す。


「……?」

「すまねいね、コーちゃん。拙者の息子は吸血鬼嫌いなんだ」

「!」


 一代目の言葉に、小夜が目を丸くする。


「は? 吸血鬼の子どもなのに?」


 レッラスは呆れて、じとっと目を向けた。

 ビクッと人志はまた震え上がる。


「自分も吸血鬼なのに?」


 アホかコイツ。レッラスはそう思った。


「トラウマになったみたいでね。拙者の事も怖がって【鬼化】も出来ないんだ。母親が」

「……?」


 一代目が言いかけたその時、ピリリリリと携帯電話の着信音が響く。

 レッラスのものだ。「失礼します」と言って、立ち上がって背を向けたレッラスは、電話に出る。


「なんだ? 何!? 場所は?」


 その間、小夜は大きな琥珀の瞳でじっと人志を見た。

 人志はただ青ざめる。


「一代目。潜伏先がわかりました。特殊部隊、出動します」


 ピッと電話を切ったレッラスが報告した。


「例の【キメラ】か……少々危険だが、コーちゃんも行くのだろう?」

「はい。あたしは【鬼化】もできるから、しっかりレッラスお兄ちゃんのお手伝いをします」


 コーちゃんこと小夜はにこやかに答えた。


「えらいね。気を付けるんだよ? それと君の弟はここで預かろう」

「はい。終わったら迎えに来ます」


 双子の弟の暁斗は、小夜の肩に凭れてずっと眠っている。

 一代目は、その暁斗を優しく抱えてやった。


「あ。一代目」

「ん? なんだい? コーちゃん」

「人志くんも連れて行きます」


 小夜は人志の手を掴んだ。


「いいよ」


 一代目がさらりと許可した。


「ちょっ! いいんですか!? 危険な任務に連れてっても!」

「コーちゃんも行くじゃん」

「小夜は【鬼化】できても、そいつはできないでしょう!?」

「大丈夫。責任持って、レッラスお兄ちゃんが守ってくれます」

「結局オレに責任を丸投げするのかよ!!」


 ぐいっと小夜は人志の手を引いて、部屋をあとにする。


[それは4月13日の金曜日のこと。その日ぼくは、彼女にーー…]


 夜桜が舞う中、歩いて行く。

 小夜は無邪気に笑って「いってきます」と言った。


[全てを与えられた]


 場所は変わって黒いバンの中。


「牙隊は知ってる?」


 小夜は花びらを髪につけたまま、ブラウスを脱ぎ捨てる。下には、タンクトップを着ていた。


「“空”の家賊を守る牙。特殊部隊コマンド、通称牙隊」

「牙隊って呼んでるのはお前だけだ」


 レッラスがツッコミを入れる。

 だが、小夜は気にしない。


「そのガクガク震えてる黒ウサギ。誰?」

「……」


 ギロリと睨むのは、小夜の右側にいる少年。

 じっと見るのは、左側にいる無表情の大きな少年。


「人志くん。んー……ひとくんでい?」


 腕を伸ばす小夜に少年は、黒いコートを着させた。

 上げた足に大きな少年は、ロングブーツを履かせる。


「一代目の息子だよ」


 そう紹介した途端、小夜に抱き付きながらまた睨み付けた。


「あ? じゃあコーの敵じゃん」


 ビクッと人志は震える。


「吸血鬼……!!」


 少年の牙を見て怯えていた。

 そんな口を閉じさせる小夜。


「こっちはルイ、成り立ての吸血鬼。こっちは人間のスマイル」


 そう紹介した。


「大丈夫。噛み付かないよ。ヒトくん、君が吸血鬼を嫌うワケを教えて」


 ストッと小夜は人志から十分に距離を取り床に座る。


「はぁ? 何ソレ、バカ?」


 ルイは思ったことを言う。


「お母さんがどうかしたの?」


 小夜だけは優しく問うた。


「!」


 ルイもスマイルも、ただならぬ理由があるのかと勘付く。


「…………ぼくみたんだ」


 人志は、恐る恐ると口を開いた。


「…………お母さんと……」

「……何を?」


 小夜が促す。


「吸血鬼は人間を襲うモンスターでしょ!?」


 ガタガタッと肩を震わせる人志。

 モンスターと聞いて小夜達の頭に浮かぶのは、映画で観たようなドラキュラ伯爵の高笑いだった。

 トラウマ=映画のようだ。


「映画の話だよソレ」


 深読みしすぎた小夜は、拍子抜けして空笑いする。


「なぁ……なんでコイツ、連れてきた?」


 ルイはもう一度小夜に問う。


「何を企んでたか知らねーが、そいつは車に置いておくぞ」


 小夜が答える前に、レッラスが言った。


「いや連れてく」


 小夜はきっぱりと言い放つ。


「は!? なんでだ!?」

「一代目の息子だ」


 驚くレッラスに、小夜は振り返らずにそう答えた。


「一代目は生き抜くために人間との共存を実現し、家賊を作り上げた。吸血鬼の存在を口外せず、認めてくる人間は今、五百人もっと増える。これがどれだけすごいことかわかっていない。吸血鬼を救い、世界を変えた! その一代目の息子が家賊を嫌いなままに出来ない」


 ずいっと顔を近付けて、人志に言い退ける。


「絶対、惚れさせてやる」


 その琥珀の瞳に強い意志が宿っていた。


「……お前歳いくつだ」


 レッラスはスマイルと呆れながらも、問う。

 ルイは一人、驚愕して「なんで!? なんで!?」と慌てふためいた。


「ピチピチの6さい!」


 キャハッと茶目っ気たっぷりの笑顔で振り返る小夜。

 中身はきっと違う、とレッラスとスマイルは思った。


「あたしが現実の吸血鬼を教えてあげる」


 ルイが腰にしがみ付き牽制する目を向けるが、小夜は人志に手を差し出した。スマイルは、そのルイを引き剥がそうとする。


「この任務。逆効果じゃないか?」


 レッラスは口を挟む。


「吸血鬼の血を直接注入して変異させた生物はまさにそいつが怖がっているモンスターだろ。人間を襲う」


「トラウマになっちまえー」とルイ。

「離れろ」と襟を掴み引っ張るスマイル。


「それを見せてあたし達と違うってわからせるの。手っ取り早いわ」

「鬼か」

「吸血鬼だもん」


 小夜は弾む声を、レッラスに向けた。


「ヒトくん、わかる? おきて。親が人間と吸血鬼の子どもであるあたし、レッラスとヒトくんはハーフと呼ばれて吸血鬼の力を引き継いでいる生まれ持っての吸血鬼」


 小夜とレッラスと人志は、吸血鬼のハーフ。


「ルイは違う。人間から吸血鬼になったこん吸血鬼」


 ルイはギロォオオと人志を睨み続ける。ちなみに未だ小夜から離れない。


「他の生き物に吸血鬼の血を注入するのは危険で、半分は拒絶して死に至る。もう半分は吸血鬼になるけれど、ルイのように自我を保ってるのは稀で、ほとんどが映画のようなこわぁいモンスターに変わっちゃう」


 小夜は自分のブーツを整えた。十字架についた蝙蝠の片翼の飾りを外す。


「ルイは死から救うために混吸血鬼にしてもらえた例外だけど、他の生き物に吸血鬼の血を与えるのは、タブー!! 上層部の吸血鬼とハーフであるあたし達以外吸血鬼の存在は口外しないのがルール。自我をなくして、人を襲うだけのモンスターが暴れると、世界中に吸血鬼の存在がバレて危険になっちゃう」


 吸血鬼ハンターとか出ちゃうかも、と冗談を加えた。

 車は目的地について、ぞろぞろと特殊部隊が並ぶ。


「この下にそのモンスターを作り出しているバカ者を退治するのが、牙隊のお仕事」


 ドン、と底が見えない巨大な穴。下水道に繋がるものだ。

 それを目の前にして人志は、小夜の手にしがみついていた。

 そんな人志の肩にさっき外した十字架をつけてやる。


「空のシンボル。大丈夫、あたしから離れないで」


 小夜は優しく笑いかけた。それが気に入らないルイは、人志を威嚇する。


「オレのセリフだ。いいか? この任務の隊長はこのオレだ。まだ勝手な行動はするな」


 腕を組んで見下ろすレッラスが釘をさす。


「はい、隊長」


 キラキラと眩しいほどの笑顔で頷いた小夜は、人志の手を掴んだまま大きな穴にばっと飛び込んだ。


「ザコはやっておくから、主犯はよろしく、レッラス隊長!」


 語尾にハートマークをつけて、小夜は落ちる。

「キャアァアァア」と女の子のような悲鳴を上げる人志。


「小夜ーッ!! あっ、てめぇらっ!」


 叫ぶレッラスの横で、あとからルイとスマイルも飛び降りた。


「絶対小夜に怪我させんなよ!! 怪我したら切腹しろよ!! 目離すなよ!!」


 大声を上げて、レッラスは下に伝える。

 その過保護さに隊員達は驚いていた。


「じゃあ事実なのか」

「ああ、二代目ボスの最有力候補者のレッラス隊長は、小夜様を支持している……」


 二人の隊員が囁く。


「私語はやめろ」


 レッラスは一蹴する。


「……行くぞ!」


 牙隊は、出動した。




20180112

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