旅路の始まり
一話に変更を加えました。話の筋としては変わっていないので読んでいなくてもこの先の展開に問題はありません。ですのでご心配なく。
ゴルドさんがうちに来た翌日。
昨日、ゴルドさんは家の外にテントを張ってそこに泊まったようだ。
「よう、アメリアの嬢ちゃん。準備はできたのかい?」
「アメリアじゃないよ、ゴルドさん。はじめまして」
「なんだ、アヤメの嬢ちゃんかい?おまえさん達体交換できるのか。体も声も変わらないからわかりにくいな。まあちょっと雰囲気は変わるが」
「まあね、アメリア、今はぐっすり寝てるよ。当分起きないと思う」
昨日お茶会のため王都に行くことになってからずっとアメリアは旅の荷物の準備をしていた。
服を持っていくのはもちろんなんだけれど、何故か食料を魔術の袋に入り切らないほど持っていこうとするので何故か聞いてみたところ。
「だ、だって食べ物がなくなるとアヤメが怒るじゃないですか。もうあんなのはゴメンです!」と言ってきた。
アメリアの中で私ってそんなに腹ペコキャラなのかな
たしかにステーキ食べられたときは怒ったけれど、あれはやっと食べれると思っていたときに横取りされたからであって普段から私あんなじゃないんだけれど。
荷物が詰め終わってベッドに入ってもアメリアは寝言で「ごめんなさい、ごめんなさい。もうご飯ないんです。許してください!アヤメ」なんて泣きながら謝っていた。
そこまでトラウマになっていたとは、今度ちゃんと謝っておこう。
「アヤメの嬢ちゃんどうした?なんかすごく申し訳無さそうな顔をしてるが」
「な、なんでもないよ。じゃあ行こうか。荷物は全部持ったし」
「そうだなアメリアの嬢ちゃんはしばらく寝かしといてやろう。よし、じゃあ出発だ」
こうして私たちは王都へと向けて家を出発した。
森の中を二人で歩きながら進んでいく
「最初にちょっと村に寄っていくからな。俺の馬車を預けてある」
「馬車があるの?確かに長い距離をずっと歩くと疲れちゃうしね」
「ああそうだな。それに俺の馬車なら歩きなんかとは比べ物にならんほど早いぞ、森の中は流石に入れないから村においてきたが。村から森の入り口までもかなり遠いんだな4、5時間かかったぞ」
「そんなに!」
森の面積でさえかなり大きいのに森を出てからもそんなに歩かなきゃいけないのか。
はあ、憂鬱だ。
「まあ、今日中には着くわけだし困難でへこたれていたらやっていけんぞ」
「そうだね。頑張るよ。そうだ、ゴルドさんいい機会だから聞いておきたいことがあるんだけれど」
「ん?なんだ旅路は長いからな、なんでも質問してみろ」
「アメリアってやっぱりすごい魔術師なの?」
私の質問を聞いてゴルドさんは昔を懐かしんでいるかのように目を細め上を見上げた。
「嬢ちゃんの話か、あの子はすごいぞー、天才だ。まず親がすごいからな、血筋ってのもあるんだろ」
「アメリアの親ってすごいの?」
「ああ、あの子の父親はな国家魔道学会会長、つまりこの国専属の魔道士その頂点にいる人だ。そして母親もこの国で五本の指に入るほどの魔道士だ」
アメリアってそんなすごい人の子供なのか。
すごい父親と母親つまりは魔術士家系のサラブレッドってわけだ
ていうかさすが魔導国家名乗るだけはあるね、国家魔導学会なんていうのがあるなんて。
「そんな両親を持つからか、小さい頃からすごくてな俺は六歳であの子に初めてあったんだがその頃にはもう簡単な魔術なら難なくこなせるくらいの子だった。いやまったくびっくりしたねー」
六歳、そんな小さい頃からもう魔術
が使えたんだ。やっぱりゴルドさんも言ってたけれど血筋とか遺伝子だったり教育の仕方もいいのかな。
アメリア、いつも敬語口調だし。
「じゃあもしかしてアメリアが両親にあまり会いたがらないのは小さい頃に魔術の勉強をさせられすぎたからなのかな?」
「いや、あの子のあれはそういうのじゃないと思うぞ魔術の勉強だって自分から率先してやっていたしな。まあ、なんていえばいいのかなあれは。王都について自分の目で見るといいさ」
結局ゴルドさんも説明してくれない。何なんだろうアメリアが家族を避ける理由、気になる。
アメリア自身もお茶を濁して話してくれなかったし。早く王都に行って真相を確かめないと。
そこからは二人で時々他愛もない話をしながら村に向けて歩き続けた。
途中、村まで後一時間ぐらいのところで昼食にすることにして食事の準備をしているとアメリアが起きた。
「ふぁ~、おはようございます」
「あ、アメリアおはよう」
「アメリアの嬢ちゃん起きたのかい?おはよう」
私がアメリアに挨拶したのを聞いてゴルドさんも挨拶をしてきた。
「すみませんアヤメ。歩かせてしまって」
「気にしないでアメリア、アメリアは昨日旅の準備をしてくれたわけだし。私もゴルドさんと話せて楽しかったし」
「いやーしかし変な感じがするな」
私達が話していると、ゴルドさんが不思議そうな顔でそう言ってきた。
「二人で話していてもアメリアの嬢ちゃんの声しか聞こえないからはたから見るとすごい変わった子に見えるな」
やっぱり他の人から見たら変わった子に見えるんだろうな。
ずっと宙に向かって話しかけてるように見てるわけでしょ、私でもそんな子見たら近づくのやめておこうと思うだろうな。
「それは私も思った。人がいるところではあんまり話さないほうがいいね」
「たしかにそうですね、そこら辺は僕も自重しておきます」
「ほら、昼ごはんできたぞ嬢ちゃん」
ゴルドさんが串に刺さったお肉とボウルによそられたスープを差し出してくれた
「ブラックボアの肉だ。うまいぞこれ」
「ブラックボア!本当ですか、やった」
ゴルドさんの話を聞いた途端アメリアのテンションが跳ね上がった。
「そんなに美味しいの。名前はホワイトボアに似てるのに?」
「ホワイトボアもうまいがブラックの方が味に深みがあってな。人によっては味がしつこいから苦手だと言うやつもいるが俺は好きだぞ」
「僕も好きです!僕の住んでる森にはいなかったけれど昔食べたことがあります。あの独特の味がたまらなく美味しいんです」
アメリアがここまで言うなんて、よほど美味しいんだろう。
「アヤメ、僕味わからないから体返してもらっていいですか?」
ああそうか、アメリア体動かせないと味とかわからないんだった・・・
その時、私に悪魔がささやきかけた。
「いただきます。ゴルドさん」
「おう、召し上がれ」
「あれ?アヤメ?ねえ、体戻してくれませんか。聞こえてますよね」
うわっ、なにこれ。しつこいとか独特って聞いてたからラム肉みたいなのを想像してたけれど私の食べたことのあるどの肉に味とも違う不思議な味。
「アヤメなんでこんなことするんです。前にホワイトボアの肉食べちゃったからですか!やめてくだい謝りますから、あやまりますから~」
段々とアメリアが涙声になってくる。
「ゴルドさんやめさせてください!ああ!もう一切れしかないじゃないですか!」
もぐもぐよっぽどもぐお肉が食べられなもぐいのが悲しいんだろうもぐな、いやしかしこの肉うま。
「アヤメ。あ、ああ〜ひどい悪魔の所業ですこれは、こんなこと許されるはずがないです」
「は~美味しかった。ごちそうさまでしたゴルドさん」
ガクッ
あ、アメリアが落ちた。仕返しにしてもちょっとやりすぎたかな。
「よしじゃあ、村まであとちょっとだ頑張れ」
「はい、よろしくねゴルドさん」
そこから村までの約一時間、アメリアが起きることはなかった。




