遺跡
ヨシアキは両膝ヨシアキは両膝を地につけ、頭を抱えていた。
刺す様な頭痛は一瞬だけの出来事だったが、
目まぐるしい情報がヨシアキの頭を駆け回っていた。
澄んだ感覚の中でヨシアキは、情報達を逃さまいと
今までに無いほど集中した。
すると情報は映像化され、段々とヨシアキの感性を奪い、
ヨシアキの理性のみ別の空間に連れていかれた。
「ここは・・・?」
大きな遺跡だった。
砂漠の中に佇むその遺跡で、父親とその子供であろう2人が手を繋いで立っていた。
「なぁヨシアキ大きいだろう。ここは土地を荒らしまわった人間達が、
神様を怒らせてしまってな、その怒りを鎮めるために作られた場所なんだ。」
2人の姿をよく見ると、幼少期のヨシアキが父親と二人で
遺跡にいる光景だった。
「やぁ、Mr.川崎。呼び出してすまなかったね、中に入ってくれ。」
そこにジャックが現れ、見たことのある顔よりも随分若かった。。
「やー、ジャック久しぶりだね。君が大切な話があるっていうもんだから、
居ても立っても居られなくてね、すっ飛んで来たよ。」
「良いものがあるから期待してくれ。さて、そちらの坊やは?」
「私の息子だよ。ヨシアキという。
静かな子でな、色々な世界を見せてやりたいと思って連れてきた。」
ジャックは子供のヨシアキに近付き、頭に手をやった。
「ゆっくり見ていってくれ。
ここには面白いものがたくさんあるよ。」
そう言い、ジャックは川崎親子を中へ迎え入れた。
埃っぽい遺跡の中は、蝋燭で明かりが灯されていたが、
少し薄暗い空間だった。
10分程迷路のような道を進み、
ひとつの部屋にたどりついた。
「これを見てくれ。」
ジャックが指さした方向には、
文字が刻まれた墓石のようなものがった。
そこには日本語でもなく、アルファベットでもない、
古代文字のようなものが書かれていた。
「Mr.川崎、解読を頼めないか。
もしかるすとヴァルハラと関係しているかもしれない。」
「うーん、これは僕にも読めないなぁ。
どうしてヴァルハラに関係していると
思ったんだい?」
「これをみてくれ」
墓石の横に柔らかい白い布で覆われたものがあった。
その布をジャックが優しく剥ぎ取ると、そこには小さな女の子がいた。
ヨシアキと年齢が同じくらいにみえた、恐らく5歳、6歳くらいだろう。
「この子は・・・死体にしては綺麗過ぎるが・・・
生きているのか?」
ヨシアキの父親が近づき、女の子に触れようとしたが、
触れることができなかった。
「不思議だろう。何か特殊な力で覆われているんだ。
私も何故か触れることができないんだ。死んでいるようにもない、
ただ全く動きを見せない。この部屋の何かを守っているようなんだ。」
「この墓石を守っているのかな?」
「わからない。ただその可能性は大きい。
この文字さえ、解読できればきっかけが掴めるかもしれない。」
「ふー、わかった。解読に挑戦してみよう。
ほかの部屋も見せてくれないか。」
ヨシアキの父親は、ため息をつきながらも、新たな発見に
興奮しているようだった。
3人は様々な部屋を見て回った。
どれぐらいの時間がたっただろうか。
ようやく最初の部屋に戻ってきた。
「あ、ヨシアキ。まだ父さん色々調べたいんだが、
まだ一緒に見て回るかい?」
ヨシアキは疲れたのか首を横に振り、この部屋にいる旨を伝えた。
「じゃー、これを渡しておくから、この部屋から移動したいときは
連絡してくれ。」
そういうと父親はトランシーバーをヨシアキに渡し、
ジャックと共に部屋を出て行った。
少年ヨシアキは窓辺のほうへ向かい、外を見た。
気が付けば、外は暗くなり、星空と綺麗な月が出ていた。
心地よい風に当たっていると、
月が部屋に美しい光を差してきた。
月光は今だ動かない少女に当たり、
少女の美しさがあらわになった。
少年ヨシアキは彼女のことが気になり始め、そっと話しかけた。
「ねぇ・・・君はずっとここに一人でいるの?」
話しかけるも、彼女は反応しなかった。
ヨシアキは少しホッとした様子で、
話を続けた。
「君は僕と同じだね。僕もずっと一人ぼっちだ。
父さんが、研究熱心過ぎて、周りから変人扱いされているんだ。
それで、僕はみんなから変人の息子って言われているんだ。」
先ほどまで静かだったことが嘘のように、
ヨシアキの話は止まらなかった・
「それで父さんの良い所を皆に話しても、皆はわかってくれないんだ。
正しいとしても、変わり者は理解してもらえないんだろうね。
僕はそこから話すことを止めたんだ。
わかる気のない人に話をしても無駄だからね。
ただ、思っていることを話せないのは辛いし、
段々と一人ぼっちになっていってさ・・・。」
少年ヨシアキは膝を抱え、寂しい表情をしていた。
「僕と君は同じなのかな・・・
何かを守るために、必死に戦ってさ。」
ヨシアキは動かない少女と自分の状況を
重ね合わせていた。
「そうだ。君なんて呼び方は失礼だね。
名前はなんて言うの?」
少女はずっと動かないままだった。
「じゃー、月が綺麗に君を照らしているから、
君の名は・・・ナツキでどうかな?」
「ねぇナツキちゃん。
僕たち友達になろうよ。」
そう言い、少年ヨシアキが少女の手を掴むと
少女は眩しい光を発した。
「うっ・・・」
周りがすべて真っ白になるほどの輝きだった。
「どうした、ヨシアキ!!!」
部屋に父親とジャックが急いで戻って来た。
「これは、一体・・・」
少女は徐々に光を弱め、
ゆっくりと目を開いた。
その大きな瞳はすべてを吸い込んでしまうかのような
神秘さを秘めていた。
「誰・・・私の扉を開こうとする人は・・・。」
少女は小さな声でそう言った。
するとヨシアキの父親は興奮気味に話しかけた。
「き、、、君の名前はなんて言うんだい??
君はどうしてここにいるんだい??」
「私は・・・・」
少し沈黙が続いた。
少女は考えているようだったが言葉が出てこなかった。
「彼女はナツキちゃんて言うんだ!」
名前のないことを察したのか、
咄嗟に少年ヨシアキは父親にそう言った。
「ナ、、、ツ、、、キ、、、」
少女は何度もその言葉を繰り返しながら、
墓石の方へと近付いていった。
「君は、この石に書いてある文字が読めるかい??」
そうジャックが問うと、少女はひとつの言葉を発した。
「ヴァルハラ・・・」
その言葉を聞いて、少年ヨシアキと
周りの大人たちは、ようやく長い道のりの一歩が
踏み出せたと実感した。