oneWolf
彼はいつも通りマンションの一室で朝飯を作っていた。時計の短針はピッタリ10を指している。夜更かしし過ぎて脳内は痛みというジンジンした音が鳴り響いている。焼けたパンを皿に乗せて流れるような動作でテレビをつける。テレビは昨日と同じ場所でまた漁船が消えたというニュース番組だった。つまらないので録画したアニメをつける。突然天井に黒い穴が空き人型の何かが落ちてテーブルが壊れる。少し驚き体をビクッと震わせる。
「┗┏┥§¶£♧┰┯┥┨┗┻┫┣┳┗┻」
喋っている事が全くわからない。見た目はエルフのような尖った耳、自然に付いたような桃色の長髪。それ以外は人間とは変わらない普通の十六〜十八歳の娘だ。
「┷┤┼┤┰あー├┰┸┝き」
はぁと彼女は溜め息をついた。そして右ポケットから茶色いチョコレートボールの様な物を取り出した。俺の右手に渡された。彼女は口をに指をさしている。恐らく飲めというジェスチャーなのだろう。宇宙人から渡された物をホイホイ飲む事などしたくないが、この状況で飲まなければ話は進まない上にコンタクトも取れないだろう。勇気を出して飲むと頭がキーンと鳴り、床に手をつく。
「ごめんなさいね…私の翻訳機壊れてて、それ頭痛くなるでしょ?大丈夫」
「ああ…大丈夫だ。これは翻訳してくれる食べ物なのか?」
「少し違う。簡単に言うと一瞬で私達の言語を覚えさせたって感じよ」
こんな夢のようなアイテムが本当にあるとは。これがあれば日本語も英語も学習しなくていいのに。
「で。なんでここに?」
「ワープが失敗した。本来はもっと高い所から落ちると予定していた。私の目的は教えられ…エエエエエエ!?」
彼女は話してる途中、俺の部屋に飾ってある瓶を手に取った。瓶の中にはキラキラ白く光る何かの欠片が入っている。一つ一つ形が違い、今にも消えてしまいそうに存在が薄い。
「それがどうした?」
「あんたこれ見えるの!?集めたの!?」
「見えるし集めた。これなんだ?60%ぐらいは理解してるとは思う」
だから反応してここにワープされたのね…と小さな声で呟いた。
「あんたこれどこまで知ってるの?」
「生物に溶け込む。生物に溶け込むとその生物に若干力を与える。多ければ多い程効果が発揮され巨大になったり力が大幅に強化される」
「それ80%よ…ってか私達の知ってる全て。20%はまだ謎。それの名前は星の欠片と呼ばれてるわ。星の放つエネルギーと同じエネルギーを持っているからそう言われてるわ」
星の欠片という物を俺が集めていたのは、山奥で沢山の星の欠片の降る光景を見て、それが今まで見た光景の中でも1番綺麗だったからだ。出来れば渡したくない。
「それは取らないわ。そんなに威嚇しないで。まぁあ、あんたがその力で暴れるっていうなら私は全力で殺しにかかるわ」
腕に巻かれたリングが赤く点滅し始めた
「地球日本言遊で言えば、噂をすれば何とやらね。じゃあまた何処かで会いましょう。その時名前を教えるわ」
彼女はそう言い残すと今までそこにいなかったかの様に突然姿を消した。
彼女がいた痕跡はある。
「あーあ…テーブル壊れてるよ」