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季節の小説

神のバレンタイン

作者: 紙本臨夢

バレンタイン記念短編第二弾です。朝に投稿した死のバレンタインを読まなくても楽しめると思います。

 チョコに毒を盛られたということがあって、僕の人間としての一生は幕を閉じた。普通なら死んだら、天国か地獄か無へと行くはずだが、僕はそんなことにならなかった。


 神の気まぐれで僕は異世界に行くか神になるかの選択肢を提示された。僕は神になる方を選んだ。そこから数年経ったのが、この今だ。


 まぁ、神は寛大すぎて僕の好きで好きでたまらなかった女神ユノと合わせてもらえたということもあった。


 今は別々だが、ユノをユーピテルの代わりに妻に貰った。


 ちなみにユノやユーピテルはローマ神話だ。ギリシャ神話だとユノはヘラ。ユーピテルはゼウスだという説がある。


 つまり、ユノは最高位の女神ということになる。僕はそんなユノを妻に貰ってしまった。しかも、元人間の僕が。


 大層ゼウスは怒っただろうが、この僕がいる神話の世界にはゼウスという存在は抹消されていて、ユノが最高位ということになっている。つまり、どこの神話にも属さない神話ということだ。


 そのためユノは未だに処女だ。ユノのことが大好きだが、孕ませる覚悟は僕にはない。これは神になっても変わらない。それにユノは僕と交わらなくても神なので容易く妊娠して、出産できる。それにその子供達は神なので、これまた容易く成長できる。


 だから、僕がいなくても一人で産んだ息子に孕ませてもらえることができる。しかも、処女を

 捧げてだ。これも神の特権みたいなものだ。


 正直言うと僕がいなくてもこの神の世界は回る。僕がここに来る前はユノが一人で全てをしていたのだから。でも、どういうわけか未だにこの神の世界には僕を除くと女神しかいない。しかも、その女神が産む子供も今のところは女神しかいない。


 この神の世界はいくら人数かいても足りない。だって、様々な世界を神が管理しているのだから。それにどうやら最近は僕がいた世界でも、そのパラレルの世界でも若くしてなくなることが多い。その者を神にすることをできるが、大体のものは内心で異世界に行きたいと思ってしまっているため、この世界に留まらせておくことが難しい。


 ユノはその全世界を総括するので忙しい身だ。そのため僕との時間は限りなくゼロに近い。たまにすれ違うのみ。それでも神は夫婦として成り立つ。ちなみにそんな僕も一つの世界ではなく複数の世界を管理しているため中々に忙しい身だ。


 世界を管理する神の仕事は主に一つしかない。たまに二つになる程度だ。それは人口や自然、魔物のバランスの調節。主にこれくらいしかやることはない。


 たまに僕たち神が転生または転移させた人物が世界を救ったり、滅ぼしたりする。そのどちらかが完遂された場合はイレギュラーとして、その世界から弾く。つまり、殺すということだ。しかし、殺すことに対応してくる者がいるのでその場合はその者をまた別の世界へ飛ばす。


 神の仕事はこの程度だ。


「それにしても、殺風景なこの景色はどうにかならないかな?」


 辺りを見回してつぶやき、望んでいる景色を想像するとその景色に変わる。最初の頃は驚いたが、今となっては神だし当たり前としか思わない。


「アズミくん。調子はどう?」


 突然、背後から聞こえてきたので振り向くとそこにはアテナがいた。


「アズミくんは母さんの様子がおかしい理由を知っていますか?」


 また背後から聞こえてきたので振り向くとそこにはヘスティアがいた。


「もしかして、アズミくんが関連している可能性はないよね?」


 今度は上空から聞こえてきたので、見上げるとアルテミスが優雅に降りてきていた。


「わぁお。三大処女神が揃った。ホントこの世界の設定はどうなっているのだろう?」

「その三大処女神って何? すごい(けな)されている感じが否めないのだけど」

「いや、違うよ。むしろ、褒めているのだよ。純潔で信仰対象にお似合いだって意味で」

「そうなの? なんか照れるな」


 チョロい。チョロすぎるぞアテナよ。よくそれで処女を守れたな。まぁ、この世界はどの神話でもないし、別におかしくないか。もしかすると、この世界では処女を守れないかもしれないし。


「それにしても三人揃ってどうしたの?」

「ヘスティアとアルテミスが言った通り、母さんの様子がおかしいの。この中で一番付き合いの長いあなたなら知ってるかなと思って」

「いやいや、僕以外にも付き合いが長い子いるはずだよ」

「それがいないのだよね」

「どういうこと?」

「連れてかれた」

「あぁあ、なるほどね。じゃあ次は僕の番かな?」

「それはないよ」

「その根拠は?」

「母さんがそんなことするはずない。母さんはあなたを特別扱いしているからね」

「あなたさえいなければ、わたしが母さんの一番になれるの」

「怖いこと言うなよアルテミス。それに僕は消えたくないよ」

「そりゃあそうだよね。一度愚かな人間に殺されたのだしね」

「そうそう。って、どうしてヘスティアお前が知ってる?」

「あたしだけじゃないよ。この世界の全員知ってると思うよ」

「なん……だと?」

「逆にバレてないと思ってたことに驚きだよ。明らかにおかしいからね。一人だけ男だし、母さんが敬語を使っているし」


 うっ。言われてみたらそうだよね。どうしてバレないと思ってたのだろうか自分でもわからなくなっちゃった。


「は、話を戻すけど様子がおかしいのは新しい子を産むのじゃない?」

『それないよ』

「……どうして三人揃って確信を持っているの?」

「母さんが『次の子供はアザミさんとの子供しかないね』と言ってたから」

「いや、無理だと思うよ。なんて言ったってあちらは最高神だしそんな時間ないと思うな」

「男女が交わって子供を作るのってどんな方法なの?」


 アテナが代表して言ったが、残りの二人も同意見なのかジッと見てくる。


「そ、それはまだみんなには早いよ」

『本当にそうでしょうか?』


 辺り一帯に凛とした声が聞こえたかと思うと、神々しい金色の艶やかな髪を長く伸ばしていて、瞳も髪と同じ神々しい金色の女性が降りてきた。その女性の服装は今はスゴく軽装だ。


 その姿を視界に捉えると僕以外の全員がその場に(ひざまず)いた。それに(こうべ)も垂れている。僕は相も変わらずにジッと彼女を見つめたままだ。


 彼女は僕が一番会いたかった妊娠などを司る女神ユノだ。


「ようやくお会いすることができましたね。愛しの人アザミさん」


 彼女のその言葉を聞くと自然と涙が流れてきた。


 数年前、僕は気がつくと全く知らない真っ白な場所にいた。もちろん、殺されたことは知っているので無に()したのかと思うが、それにしては純白だったので、その場で固まっていた。


 すると、天から神が舞い降りてきた。それがユノだと気づくのにはそうそう時間はかからなかった。なぜなら、彼女は僕が想像していた通りの外見だったからだ。


『あなたは短い人生を終えました。それはバットエンドだと言えるほど虚しい死でした。ですが、あなたには選択肢があります。このまま異世界に転移させられるか、生まれ変わって異世界に転生させられるか、無で次の新たな人生を待つかです』


 彼女は柔らかそうな桜色の唇で一言一言、僕の心に語りかけるかのように優しく言った。彼女に選択肢を提示されていたが、僕の願っていることはすでに決まっていた。


「無理を承知で言います。僕と契りを交わしてください」

『えっ?』


 さすがに予想できなかったのだろう、彼女が目を見開いて意外そうな顔をしていた。当たり前だけど僕にすれば初めてのプロポーズなので、かなりの覚悟が必要だった。だけど、そんな覚悟は彼女を前にすると一瞬にしてできた。


「やはりダメでしょうか?」


 まぁ、当たり前っちゃ当たり前だけど無理に決まっているよね。


「でしたら、僕を二度と復活できないように奥に封印していてください」

『い、いえ! 初めて、こんなことを言われたので意外でして、あの……その……私でよろしければ』

「……えっ? いいのですか?」

『はい』


 いや、待って待って。いきなりのプロポーズ成功? こんなのありかよ!?


 かなり戸惑っていると目の前にユノが降りてきた。そして、柔らかそうな桜色の唇を近づけてきて、僕の唇を塞いだ。


 彼女の唇は本当に柔らかかった。


 こんなことがあって今に至る。


「あ、あの……。アザミさん。恥ずかしさを我慢して言います。ハッピーバレンタイン」


 ユノは笑顔で微笑むと服がなくなった。その代わりに現れたのはチョコや生クリームなどでデコレーションされたユノの姿だ。


「そ、そそそその知識を誰から!?」

「ちょうど転生した方がやっているのを見たので」


 誰だよそいつ! ナイス! 一生感謝するよ! いや、もう死んでいるけど。


「それにあなたがいた世界では今日がバレンタインという日だったので、ちょうどいいかなと思いまして……。あの、その私を食べて」

「喜んでいただきます!」


 我慢などせずに僕は彼女に食らいついた。もちろん、(かせ)が外れた僕は性的にも彼女をいただきました。


 気がつくとこの世界の女神全員が僕たちのプレイを見ていた。

いかがでしたでしょうか? 楽しんで頂けたならば嬉しい限りです。

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