はじめましてのこんにちは
誰にだって1度は思ったことはあるのではないか。自分には価値などないのだと。
誰からも見放され、もはや存在してること自体が罪なのだと思いこみ、現実から逃げ出したいと思ったこと。
中学の頃から人付き合いは苦手、というより他人が嫌いだった。結局は自分の事しか考えずに都合のいい時だけ自分を棚に上げ、面倒事は誰かに押し付ける。
…壊れてしまえばいいのに。こんな世界ならもういっそ逃げ出して…………なんて、いつも思っていた。
六月の雨の日。降り続く雨は静かに地面を叩きつける。
雨のせいで部屋の中は湿気が多かった。これだけ部屋の中が蒸し暑いのなら外はもっとすごいのだろう。まぁ、高校に入学してからほぼ毎日部屋にこもってばかりで、今更外に出ようだなんて思わないだろうから関係ないが。
俺はと言えば相変わらずゲーム三昧だった。やっているものと言えば、最近名が有名になってきたゾンビゲームの旧作で、ストーリーもしっかりしている上にホラー要素もあってなかなかのお気に入りだった。ぶっちゃけ新作よりもこっちのほうがいい。
これは前にも何度かクリアしたことはあったがやはり飽きない面白さがあり久々にやりたくなったわけで、また一からやっている。
───しかし、夢中になりすぎたせいで昨日から一睡もしておらず、気がつけば睡魔が襲ってきていた。それは今までに1度もない程で、大きな波にのみこまれるように深く、深すぎる眠りについていた───。
冷たく乾いた風に吹かれ、目が覚める。そして即座に青く広がる空がみえる。先程の天気とは真逆で、いつの間に雨は止んでいたみたいだ。
……しかし、疑問に思うことがいくつかある。雨が止んだのはいいが地面が濡れていない。普通なら雨上がりは水溜りやら色々できて……
それと何故外にいる。寝ぼけて外に出たのか?可能性はあるかも知れないがありえないだろう。
それにここはどこだ。自分の住んでいる街とはまったく違った情景で見慣れない建物がたくさんある。初めて見る……否、初めてではない。現実世界ではない場所でなら見たことがある───
現実世界ではない場所で────
…眠る前、自分のやっていたあのゲーム。まさか、そんなことがありえるとしたら……
「おいおい…洒落になんねぇよ……」
あのゲーム……ゾンビゲーム。今自分がいるこの世界はそう、あの画面の中でみた「それ」なのだ。動く死体がいて、それに刃向かう生きた人。1度は絶望に陥り、それでも尚、生きることに希望をもつ者達。だとしたら…だとしたら……
「ぅ゛ぁあ゛あ………ぅう゛……」
───嫌な予感ってやつはよく的中する。建物の一角から少し見えたその姿はたぶんまだ子供。
だがその服や腕には自分のものなのか、それとも他人のものなのかはわからない血がついていた。おそらくあれが俗に言う
「いきなりゾンビ野郎の登場ってか…どうすんだよ…なんも装備ねぇぞ……」
こういうのは普通、かっこよく言えば「異世界転生」とかそういうものになるのだろうが俺、最初にして最後の別世界。最悪っす。
「でもあいつが本当にゾンビなら音にしか反応しないはずだよな…?視力はないよな…?とりあえず何もせずに待機してみるか」
そして予想通り、奴はこっちに気付きはしなかった。そういう知識は前世界にて学習済み。割と助かった。
だがこのままどっか行ってくれればいいと思ったのもつかの間。
そのゾンビを目の前にぽつりと立つ銀髪の美少女。こういうのは異世界っぽくてちょっと嬉しいとか思ったりする。
だがあのままでは彼女が危ない気もするのだが、銀髪美少女は怯える姿もなくただ奴を見ていた。怖くないのか?
──しかし俺も男。怯えていようといなかろうと助けるしかないだろぉぉおッッ
「んぬぉぉぉおおおおおッッッッ!!」
真っ先に彼女に向かって突き進む。いくら子供のゾンビ相手でも俺に勝ち目があるなんて思っていない。だがせめて時間を稼ぐぐらいはできるはずだ。
しかし彼女は俺の姿を少し見て、迷惑そうな顔をする。言葉にしなくてもわかるほどにその顔は馬鹿をみる顔だ。だがかわ(ry
だがそんな俺を置いといて彼女は何やら棒を取り出す。いや、あれは棒じゃなくて槍なのか?
そして取り出したかと思えば1歩下がり絵になるほど綺麗な姿勢をとりつつ、一瞬で奴の頭をかち割る。正直、本当に一瞬すぎて何がなんだかわからなかった。
奴はその場に倒れ、動く事はなかった───
「…で、君。名前は?」
鳥肌がたつほど綺麗な声だった。
「あ、えーと…れ、蓮。蓮です。」
「れん…あなたこんなところで何をしているの?ただの逃げ遅れかしら?それともその他?」
「その他って例えばなんだ?」
つい気になって聞いてしまった。初対面で馴れ馴れしかったかもしれないと後悔をする。
「私と同じ、とか。私の生まれ故郷はこんなおかしな世界じゃなかったさ。こんなに狂っていなかった。」
彼女は過去を見つめるかのように遠いところを見ていた。
「それって……」
蓮はまさかと思っていたが違ったみたいだ。自分と一緒なのではないか。もしかしたらこの子もゾンビなんかいない、あの世界で生きていたのか。
まぁ、そんな人が自分以外にいるはずなんかなくて、
「ただの現実逃避ってやつだよ。辛い現実から逃れたいときはいつも、死体なんかいないあのときのことをよく思い出すんだ。」
「それは…現実から逃れたいって気持ちはよくわかるさ。俺も同じだ。まぁ、なんというか…さっきの選択肢で言えば、その他に入るのかもな。」
しかしそれも事実だ。他人が嫌で、いつもいつと俺は逃げてばかりで…
できることならそんな自分とはおさらばしたいものだ。
「…そうなんだ。すまない。ただの馬鹿かと思ったが失礼。私の名は鈴桜だ。よろしくな。」
「鈴桜さんすごく素直…嫌いじゃないけど…」
「昔からの教えでね。嘘はつくなってよく言われたさ。」
嘘はついてほしくないが言わなくていいことまで言わないでほしかったが、やっぱり可愛いから許す。
「しかし蓮…君はどうしてこんなところにいるんだ。」
「あ、い、いや…なんでだっけなぁ…あはは…」
まさか別の世界から来たなんて言えない。言ったところで信じてくれはしないだろう。
「そうか…なぁ、もしもだが。もし奴らと立ち向かう気が少しでもあるのなら私についてきてくれないか。」
それは突然だった。正直、行く宛もないし、それに初めての出会いってだいたいこの先色んなストーリーが待ってるやつだろうし悪くない。
だが彼女は奴らと立ち向かうがあるのなら、と言った。それはつまりさっきみたいに奴らと戦うのだろう。
最もゲームっぽくて悪い気はしないが、今度はゲームとはわけが違う。本当の命をかけているのだからそう簡単には…。
しかしこれも何かの縁。俺は彼女について行くことにした。
「…あぁ、こんな腰抜けでよければ。」
「ははっ 腰抜けでは困るなぁ」
鈴桜は軽く笑ってみせる。笑った顔は天使並だ。
「まぁ、せいぜいよろしく頼むよ。」
「無理はしない程度に頑張らせてもらうぜ」
そして俺はこれから何が起こるか予測もできないこの世界で、彼女と共に行くことを決心した。
初めて書いたものです。なかなか変な表現があったり、誤字があったらすいません。
わずかであろう読者様、どうぞよろしくお願いします。