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舞う黒蝶は『謎』喰らうⅠ  作者: 夜暮橘花
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~動き出す運命~

第六話


アゲハが言って、俺は静かに聞くことにした


「まあ、話すのは主に私たちの仕事についてだ。」

「まず、この世界には数年前から、人に寄生する『謎』が現れ始めている」

「『謎』?」

「そうだ。『謎』に寄生された人間は『宿主』と呼ばれ、『謎』によって精神が蝕まれていく」

「精神が蝕まれて・・・?」

「お前の見たあの男がその状態だ」

「あの放心状態の男が?」

「ああ。『謎』はその人間の精神を餌とする」

「その、『謎』ってのはどう寄生するんだ?」

「簡単に言うとだ・・・『謎』は精神的に弱っている人間に寄生する。弱った人間を見つけて、その弱さにつけ込む。これが寄生するまでの流れだ」

「なるほど、それで・・・さっきアゲハが言ってた、治すっていうのは・・・?」

「『謎』を解くことだ」

「『謎』を解く・・・?」

「正確に言えば、『謎』に寄生された『宿主』が起こした犯罪を解決するんだ。事件を解けば、『謎』は消滅する」

「・・・まてよ」

「どうした?」

「仮にそれで『謎』とやらが消滅しても、『謎』に喰われた精神は戻らないんじゃないのか?」

「戻るんだよ、それが。正直、原理は分からないが、『謎』が消滅するときは、喰らった『宿主』の精神をその人間に戻してから消えるんだ。すぐに元通りとはいかないが、徐々に戻っていく」

「なるほど・・・あと、『謎』を解く前に『宿主』の精神が喰われ尽すってことはないのか?」

「それは・・・ある」

「事件が起きてから、『宿主』の精神が完全に喰われきるまで・・・平均して二週間あるかどうかだ」

「二週間で事件を解くって・・・そんなこと・・・」

「無理だ。・・・・普通ならな。しかし、そのための三島だ」


そう言われて俺は少し考えて・・・すぐにわかった


「なるほど、警察って立場を使って情報を得るってことか・・・って、良いのかそれ?」

「一般には非公開だけど、上からの許可はもらってる。俺以外にもあと二・三人はいるよ」

「そうなのか・・・いやでも、情報にも限度があるだろ?」

「そこで私の出番なんだよ」

「どうゆう・・・?」

「自分で言うのもなんだが・・・そこらの刑事共よりも、私の方が何十倍も推理力に長けていてな・・・少ない情報からでも、結論は導き出せる。それなりに時間がかかるがな」

「マジか・・・」

「だから、さっき答えたように『謎』を解けずに、宿主となった人を助けることが出来なかったこともある・・・」

「そもそも、『宿主』が犯罪を犯してしまう前に助けることはできないn・・・」

「無理だ」


まだ言い切ってないのに即答しやがった・・・


「なんでだ?」

「さっきも言った通り、『謎』によって起こされた犯罪を解くことで『宿主』を開放できる」

「そうだったな」

「つまり、犯罪という原因なくしては、『謎』を解くことはできない」

「なるほど・・・」


(それはどうにも・・・やるせない気持ちになる・・・)


「それで、なんで俺にそんな話を?」


俺がずっと思っていた疑問を口に出すと・・・


「今後君には・・・康弘には私たちを手伝ってもらう」


アゲハが即答した。


「もちろん、康弘君の時間をすべて奪うわけじゃないよ。時間がそれほどとれるわけでもないけどね・・・」


アゲハには呼び捨てに、三島には君付けにして呼ばれたがそんなのを気にしている場合じゃない


(それと・・・)


「ちょっと待てよ」

「どうした?」

「俺が手伝う理由はなんだ」

「それは」

「なんだよ・・・」

「康弘、お前には特別な力があるからだよ」

「は?えっと・・・はぁ!?」


特別な力?・・・アゲハの言ってる意味がわからん・・・


「ま、混乱するのは無理もないよね。普通」


と、三島が呟くが、


「か、仮に!特別な力があるとして・・・そりゃ、どんな力だよ・・・」


(動揺してつい話を進める流れにしてしまった・・・)


「『謎』を視る力だ」

「説明を頼むわ」

「つまり、『謎』に寄生されている人間が分かるんだよ」

「へ、へぇ~・・・」

「心当たりはないか?」

「なんの?」

「見覚えがないのに、意識のはっきりした夢とか・・・現実ではありえないようなものを現実に見たりとか」


アゲハにそういわれて考えてみると


(やっべぇ、思いっきり心当たりがある・・・)


そんな俺の考えを見透かしたのか、アゲハが


「何かあるようだな」


(なんでわかったんだよ・・・)


「人間の喜び以外の心情の変化はよく顔の左側に出る。よく見ていればわかるさ」


そんなことを言われて、俺は諦めた。


「・・・ある。俺がぶっ倒れる前に・・・あの男の体に黒いモヤみたいなのと、女性と少女の血だまりを笑いながら見下ろすあの男の姿の夢をみた・・・ついでに言えば、すっげぇ頭が痛かった」


俺は、ありのままを教えた


「そこまで視えるのか・・・」


驚いたように三島がつぶやく


「康弘の代償は頭痛か・・・」


(ん・・・?)


「代償・・・?」


俺が疑問をつぶやくと、三島が


「普通は持ち合わせるはずのない特別な力を、何の代償もなしに使えるわけがないんだよ。君の場合は『謎』を見ると激しい頭痛に見舞われるようだね」

「俺の場合は、ってことは・・・アゲハや三島はどうなんだ?」


と聞いてみると、


「俺はそもそも力をもってない。ただ情報を提供するだけだからね」

「私のは・・・見せる時が来たら見せる。言葉では説明しにくい」

「そうか・・・でもアゲハは何かしらの力があるってことか」

「そうゆうことだ。・・・話を戻すぞ」

「あ、あぁ・・・」

「君のその力があれば、『謎』を解くのが楽になる。『謎』被害を少なくできるんだ・・・」


頼む・・・と、アゲハも三島も深く、頭を下げてきた。

ここまで真面目に頼んできている奴を断れるような人間じゃないし、何より事がことだ。


「分かった。とりあえずやってみるわ」

「本当にか?」

「何を驚いてんだ?そっちが頼んできたんだろ?」

「そうなんだが・・・」

「本当、助かるよ。よろしく」

「ああ。・・・ところで、あの男はどうなったんだ?」

「それはこれからだ。君の力が見たかったからな。君も一緒に解いてもらう」

「分かった」


話がまとまったところで、アゲハの家を出て、三島の車で警察へ向かうことになった。

あの男の『謎』を暴くために。


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