~視えたもの~
「うぅ・・・」
小さなうめき声と共に俺は目を覚ました。
さっき起こったことは覚えてる。
黒井アゲハという女と三島剛毅という男に会ったこと。
そして、あの放心状態だった男と目が合った途端、何かのイメージが見えて、俺の意識が途切れた事。
何もかもが理解できない・・・
にしても、背中が固い、床か?
見覚えのない天井。何処か、別荘のような・・・
流石に身体を起こして辺りを見渡すとそこには
(血の海・・・!?)
視界に入ってきたのは、まさしく『血の海』。その一言に尽きる。
さっき見たイメージはこれか・・・本当に血だまりそのものかよ・・・
そしてその中心には、女性――身長は160ちょっとで大体四十代後半だろうか――と、少女――この女性の娘だろうか、八歳ほどに見える――が、血まみれで横たわっていた。
その前には、さっきの男が立っている。
男は笑いながら・・・
「清子、唯・・・ごめんな、ごめんなぁ・・・父さん、どうしようもなかったんだ・・・フフッ・・・ハハハハ・・・!」
(何なんだこいつ・・・狂ってる・・・)
いや、そんなこと考えている場合じゃない。
この女性と少女を殺したのは、おそらくこの男だ・・・こんな場面を見て見てしまったのを男に気づかれてしまえば・・・すぐさま俺を殺そうとするはずだ。
幸い、男はこっちに気づいていないようだ。
俺はドアへ走り、開けようとした・・・しかし、開かない。窓もだ・・・。
待てよ?あの男は二人の警官に捕えられた筈だ。こんなことあり得ない。
少し、落ち着いた。
すると男は俺の方を向き、俺は男の笑っている顔を正面から見ることになった・・・。
男は俺の方に歩いてきて、手を伸ばした。
しかしその手は俺の体をすり抜け、後ろにあったドアノブに手をかけた。
そのまま男は放心状態で部屋を出て行った。
ゾッとした・・・俺に気づいていたわけじゃないのに。
いや、そんなことより、男の腕が俺の体をすり抜けていた。
ああ、どんな状況か理解できた。なるほど、夢だ。
そう思った瞬間、再び俺の視界は黒く染まり・・・意識が・・・・・・途切れた。