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ハーレムエンドでは終わらない  作者: 宛 幸
閑話のようなもの
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第7話 ただの昼休みでは終わらない

 とある日の昼休み。僕は一人机の上に弁当の広げおかずをつついていた。

「私も一緒いいかな?」

 声をかけて来たのはクラスメイトの綾未麻瑠(あやみまる)さん。いつものメンバーの一人で、気さくで話しやすい女の子だ。

「もちろんだよ」

 僕は歓迎をする。

 綾未さんは隣の机をくっ付け、僕の隣に座るようにした。

 普通は反対側ではないかと思うが、これが彼女クオリティなのだ。

「ふむふむ。美味しそうなシューマイですな」

「食べる?」

「む?いいの?」

「卵焼きと交換ね」

「ほぅ~。お主、無難な手を打つか。いたしかたない。そなたの願いを叶えてしんぜよう」

「ありがとう」

 そんなやり取りをしておかず交換をする。

 綾未さんはこんな風に明るい少女なので、僕としては、すごくありがたい存在になっている。

「ぱくっ。……むっ?これは……美味しゅうございまするぞ!」

 日本語がおかしい気もするが、気にしない。

「卵焼きもいい感じな甘さで僕好みだな」

 これは綾未と僕の味覚が似ているということなのかな?

「ほんと?よかった。自分好みに作ってるから、結構適当だったりするんだよね~」

「綾未さんの卵焼き、僕の口に合うよ?」

「そう言ってもらうと、作ったかいがあったよ♪」

 僕もシューマイを入れて来てよかったよ。それで食べられたのだから。

「おっ。俺も交ぜてもらおうかな」

 軽い口調で寄って来たのはクラスメイトの友人である、戸田克義(とだかつよし)君。

 髪を茶色に染めピアスとか装飾している『チャラい』男だ。

「うむ?どうぞなのだよ」

 綾未さんが席を作る。

「お、さんきゅ」

 そこに戸田君は座る。

「戸田君はパンなんだね」

「おうよ。俺ん家は大抵自分のことは自分でしろと言われてるからな。自炊できない俺はバイト代で悲しく購買パンよ」

 手には焼きそばパンやサンドウィッチなどの惣菜系のパンが握られている。

「戸田君は自炊しようとは思わないのん?」

 綾未さんが戸田君に訊く。

「俺に家事は似合わねえ。てことでしようとも思わん」

 そんなことを堂々という戸田君。

「僕が作って来ようか?」

「え、いいのかっ?」

「うん。そんなに手間かからないし」

一人分なら増やしても苦ではない。

「な、なら私も……っ」

 綾未さんが主張する。

「綾未は自分で作れんじゃん」

「……そ、そだけど」

「僕は別に構わないけど」

「ほ、本当…?」

「うん」

 生徒会の面々よりかは楽な方だ。

 それに、友達の分を作るのも楽しいものだ。

「ありがとう、時峰君」

 お礼言われる程でもないけれど、気持ちの問題だしね。

「どういたしまして」

 僕は綾未さんのお礼の言葉を素直に受け取っておく。

「私の分も作ってもらおうかな?少年」

 聞き慣れた……いや、今はとてもだが聞きたくなかった人の声が聞こえた。

「……いろいろと言いたいことありますけど……、なんであなたがここにいるんですか」

 僕の背後には生徒会会長の姿があった。

「うわっ。いつの間にいたんですか?朱月先輩」

「いらっしゃいだぜ。会長」

「少年のいる所私ありだよ、綾未女史。ふむ。邪魔するぞ、戸田氏」

 二人にに答え威風堂々と隣に腰を下ろす会長。

てかなんでそんな我が物顔してここにいるんだよ……。

「少年の唐揚げ貰うぞ」

 そう言って勝手に僕の箸をナチュラルに奪い、おかずに手を出す。

「うわ……僕のおかず」

「うむ。なかなかに美味しいぞ少年。嫁にほしいくらいだ」

 なる気ないしそれ以前に僕は男だ。

「今一度問うが、私の分の弁当を作って来てはくれまいか?少年」

「もちろん嫌ですが?」

 即答してやった。

「そう照れるな少年」

 どこをどう取ればそうなる。

「まぁ、無理にとは言うまい。気が向いたら作ってくれたまへ」

「気が向いたら、ですが……」

 ま、さらさら作る気ないのだが。

 作るとしても、会長が大人しくなってくれればこちらとしても考えようではないか。

 そこまで偉くなったつもりはないのだけど、会長となれば話は別だ。

「あ、そうだ。少年、放課後少し付き合ってはくれぬか?」

 それが本命だろ……いままでのくだりいらないじゃないか。

「ん?別にいいですけど……。なにかあるんですか?」

「うむ。では放課後に学園長室に来てくれ」

 そう言って立ち上がり、

「またな、諸君」

そう言い残し教室を出て行った。

「……あ、嵐のような人だったね」

「やっぱあの会長の傍若無人さは堪んないね」

 口々に述べる二人。

 本当に嵐のように去って行った場所を、僕は訝しげに見ていた。

 それから視点を戻すと、弁当箱の中身を見ると、最後の唐揚げもなくなっていた。

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