第6話 妹が来ただけでは終わらない
なんだか最近は下着が散乱していたり振り回されたり無駄に精神的な体力使う会議(?)をしたりしたけど……。
「やっぱ自分の部屋が落ち着く…」
溜め息一つ吐く。
休みの日は二度寝に限る。
というわけで……。
「もう一度寝よう」
僕は目蓋を閉じる。
……さぁ、夢の世界へ誘ってもらうか、眠気よ。
……、
…………、
………………。
――ピンポーン
…………悪いけど居留守を使わせてもらおう。僕は二度寝と言う重要任務があるんだ。
――ピンポーン
……僕は眠いのだ。あの桃色生徒会に付き合うとロクなことないし、すごく疲れるのだ。
………………
行ったかな。
……――ピンポピンポピンピンピンピンピピピピピピピピピピピピピ――
「――あぁっ、うるさいっ」
居留守を使ってるのがわからないのか。いや、わかってるから鳴らすのか。
……てか、出るまでずっと鳴ってるのかな…。
「かったるいな」
僕は身体を起こし、たるい感覚の中玄関へと向かう。
「はい、誰でしょうか…」
僕は扉を開け相手を見る。
「――すいません、人違いです」
僕はすぐに扉を閉めた。
うん。あれはただの人違いだ。もしくは宗教団体とかのお誘いだろう。
――ピンポーンピンポーンピンポーン
「……はい」
僕は頭が痛くなりながらもその玄関の扉を開ける。
「ひさしぶり、おにぃちゃん」
そこには僕のことを兄と呼ぶ営業スマイル顔したアイドルがいた。
「……僕にはあなたみたいなアイドルだと思われし妹はいません。きっと帰る家を間違えたのでしょう。ではさよなら」
僕は言葉を並べ扉を閉め――ガシッと完全には閉められることはなかった。
「おにぃちゃん……妹を他人のように扱うなんて、酷いよ」
「アイドルになると言って出て行った切り音信不通で所在確認がテレビの中だけが頼りなどこぞの誰かさんよりは……マシだと思うけど」
「そ、それは……ごめんなさい。で、でも、本当にアイドルになったよっ?いっぱいいっぱいの人に、認められるくらいのアイドルになったんだよっ?……ほめて……くれないの?」
「……はぁ」扉のノブから手を離す「とりあえず上がればいいよ」
「うんっ。ただいまっ。おにぃちゃん」
妹は楽しそうな笑顔を浮かべる。
「おかえり。沙奈」
「でも実際は妹ではなく、従妹、なんだけどね」
一応訂正はしておく。
「でもでも、本当の兄妹のように育って来たよねっ?」
そのまま立ち上がりそうな勢いで主張する沙奈。
まぁ、実質、幼少の頃から一緒に育って来たのはそれだけど、それは長期休暇に限った話だし、それに、沙奈の実家は市外でありここではない。
ここは僕の家代わりのアパートなのだから。
「そうだが……それでも、まぁ、僕にとっては、“妹分”という感じかな。かわいくはあるけれど」
それに、僕には本当の実の妹がいる。
……まぁ、それはまた別の話ということだけど。
「うー……でもいいもん。おにぃちゃんのお嫁さんになるのはこの私だから」
「いやいや。まだそんなこと言ってるのか。いい加減諦めなよ。僕にはそんなつもり一切ないのだから」
いとこ同士の結婚はたぶん、大丈夫なのだろうけれど、赤子の授かりとか、世間の目とかを考えれば、それはとても難しい話だ。
ま、沙奈は妹分であるからして、そんな気になるつもりはまったくないのだけどね。
「あ、諦めないよっ。おにぃちゃんと結婚するのが私の一番の夢なんだからねっ!?」
「そんな自信満々に夢語られても……てか、アイドルはどうしたよ」
「アイドルなんかよりおにぃちゃんだもんっ」
おいおい……そんなんでいいのか?現役アイドルさんよ。
「お父さんもお母さんも言ってたもん。はるとくんなら、沙奈を預けても大丈夫だって。むしろ大歓迎だってっ」
何言ってるんだよ僕の親族さん達……はあ。
「それでも、だよ。というか、ちゃんとアイドルという目先の仕事があるのだから、きちんとこなしなさい。どうこう言うのはそのあとだよ。わかった?」
「……はぁい」
渋々という感じで返事する沙奈。
素直で真っ直ぐでいい子ではあるけれど、まだまだ放って置けないよね。いとことして兄貴分として。
「じゃあ、仕事をたくさんこなしたら、結婚してくれる?」
「考えておくよ」
僕は約束できない約束するのだった。