第17話 集まっただけでは終わらない
「これ以上フラグ立てたらハーレムですよ?先輩」
空は青く澄み、雲は緩やかで、天気は良好。 もうすぐ夏なので頷ける空模様。
そして今日もお天道様の下で生徒会活動――のはずだったのに、今日はまた珍しく、二人切りである。
後輩で書記担当の華妃野諳だ。
他のメンバーはあとから来るらしいから一時の間だけど。
「いや、僕に言われてもさ」
そして静かだった空間に開口一番にそんなことを言って来た華妃野さんに苦笑する。
「先輩だから言ってるんですよ。これ以上ヒロイン増やしてどうするんですか。新キャラの出し過ぎはギャルゲーだと展開が進みにくいですよ?」
今日はいつもより口調に熱を帯びている華妃野さん。
なにが彼女にそうさせるのか。
「あと、フラグ乱立は危険です。自爆しやすいです」
「いや、よくわらないけどさ。現実とギャルゲーを一緒にされてもさ……。というか、僕はそんな気さらさらないし。元より僕は主人公よりサブかモブ辺りがお似合いだと思うんだよ。性格的に」
「……先輩視点で語ってるくせに」
「え?」
なにか言われた気がしたが、声が小さくよく聞こえなかった。
「いえ、ただ先輩は主人公に向いてると思います」
「そんなことないよ。僕は主人公にアドバイスする友人辺りが関の山さ」
「その友人がいろいろな女の子と話したり遊んだりしますか?というか、先輩にアドバイスは無理です。特に恋愛面に関しては」
なんか失礼だな。
確かに僕は鈍いかも知れないけど、そこまでじゃないと思う。
それに、話したりはするけど、それは仕事上必然だったり友人関係だったりだし、遊んだりは……するけど、それもいろんな人との関係性を深めた為だったりで、他意はない。
……ない、はず。
「先輩はフラグをなんだと思ってるんですか」
え、旗だろ?
「どうせただの旗だと思ってるんですよ」
なぜそこだけ鋭い。
「いいですか。私は別に先輩にモテるなとはいいません。モテるのはあたりまえで、それは誇らしいんですから」
いや、別に僕はモテているつもりなんてこれっぽっちもないんだけど。
「僕はそんなつもりなんて、ないんだよ?それに、みんないい子だし、むしろ僕の方が釣り合いが取れないくらいもったいない子が多いし」
「そりゃ確かに先輩がモテない方がこちらとしては助かるのですが……モテるのも私が嫉妬してしまいますし……でもっ、私は先輩が幸せになってほしいんです!」
なんか勢いよく最後に誤魔化した気がするぞ。
いや嬉しいけどさ。そんな言い方されたら嬉しくないわけないじゃないか。
「まぁ、華妃野さんの言い分はわかったさ。でも、僕は事実モテてないだろ?」
「……もういいです。なんか先輩が鈍過ぎて疲れました」
はぁ。と溜め息を吐いて両手で頬杖を突いた。
「というかですね、なんで私にまでさん付けで名字なんですか。私後輩なんですよ?今までずっと疑問だったんです」
そういえばそうだけど。
僕は基本、家族以外は馴れ馴れしく呼ばないことにしてるからな。
その癖が反映してるんだろう。
「気にしなくていいよ。これは癖だから」
「納得いきません」
案の定、納得いかないらしい。
不満なのか、頬をむくれさせた。
「そう言われてもな…」
「それに、私は先輩といちゃいちゃしたいです!いちゃいちゃパラダイスですっ」
なんかいきなりわけのわからないこと言い出したぞ。
「僕は特にそうは思ってないけど」
「先輩は草食過ぎますよっ」
「いや、これくらい普通だと思うけど」
「普通はかわいい女の子に言い寄られて反応しない男なんていませんよっ」
「そんなことないと思うけど。僕がその例だよ。というか、自分でかわいい言うなよ。実質かわいいけどさ」
いつも桃色な発言で忘れそうになるけど、黙っていれば普通にかわいいのだ。この後輩は。
「……あ」
唖然とする華妃野さんに僕は首を傾げる。
「せ、先輩が私のことかわいいって……」
「?急にどうしたの?」
「やっぱり先輩天然ですねっ!でも嬉しいっ!あぁ……っ。私、超・絶・エクスタシー……っ!!」
なんか華妃野さんが身体をくねくねさせて悶え始めた。
な、なになに……僕なんか変なこと言ったかな…。
というか、華妃野さんって……こんなキャラだったっけ。
「先輩!」
「あ、はいっ」
急に呼ぶので少し声を上擦ってしまった。
なにを大きな声で呼ぶことがある。
「もっとほめてくださいっ。かわいいと言ってください!」
「……いや、僕としてはそうみだりにほめたりしたくないんだけど」
華妃野さんが調子に乗って変なことを言い出すから。
「……はぁ。先輩冷たいです。でもそこがいいっ!」
席を立って拳を握り目をキラキラさせる。
なにがそこまでさせるのか、僕にわかりかねる。
「帰ったぞ」
「ただいまです」
「悠人……おかえりのキス」
どうやら全員帰って来て集合したようだ。いや、そもそもまだ集まってすらいなかったのだけど。
一人だけ意味不明な要求をしてるが、スルーしておこう。
「おかえりなさい。……というか、いらっしゃいかな。なんとなく」
「お、もてなしてくれるのか。それはありがたいな。ではさっそく」
会長が僕のあごを軽く掴み、持ち上げ、自分の口許に……て、
「なにしてんじゃこら」
僕はその手を払い、突っ込む。
この人は隙あらば桃色思想に基づき勝手な解釈であらぬ誤解を受けるようなことをするんだから。
「ふむ。今のは惜しかったな。だが次はもう一押しだな」
「もうもうもうっ。悠人さんは私の初夜を予約してる大切な人だって何度言ったらわかるんですかっ!」
いやしてないし。というか勝手な妄想で現実に齟齬という名の捏造を加えないでいただきたい。副会長さんよ。
「なら私は少年にすべてを捧げよう。……ふむ。いや、すべてをかっさらおう!」
「なに堂々と宣言してるんですかっ。却下ですよ当然っ!」
「……悠人は私のあ・い・じ・ん」
「誤解を受けるような発言を横槍で入れるな!てか本命いるのかよっ?」
「本命はいつだって悠人一筋」
あぁそうかい。僕はげんなりする。
これこそいつもの生徒会。……であってはほしくないんだけどね、本来は。
みんな僕をいじる時に限って生き生きとするからな……疲れる。
それぞれ定位置の席へと着く。
「今日は夏休み明けに行われる『体育祭』について話し合おうと思う。意見ある奴及び脱ぎたい奴は手を挙げるな」
全員手を思いっ切り上に突き上げる。
「なんだ。残念だな」
残念そうに見えない会長だが、僕にはわかる。
楽しそうな顔をしてるのが。
そういえばもうすぐ夏休みか……そして体育祭。
気が付けばもう数ヵ月。ここまで来るのは早かったな。
そんなことを染々と会長の説明を聞きながら思う僕だった。




