第15話 電話するだけでは終わらない
僕はいつの日か、クラスメイトの女子である、彩調葉子さんと埋め合わせをすると言う約束をしたのを思い出した今日この頃。
会長立案の水着コンテストというイベントの準備で忘れていたわけだけど、彩調さんも覚えているかはわからない。
ということで、今日はちょうど休みでするこもなく暇なので迷惑だとは思ったけれど、埋め合わせすると言った手前、なにもしないのもあれだと思うわけで……意を決して電話することにした。
TELLLLLLL……
『はい、彩調です。歳は16の超絶美少女です。今の気分はテンションがちょい高めです。おk?』
コールが三回程鳴った頃だろうか、彩月さんは言った通り、少しテンションが高めだった。
「お、おーけー…」
『あれ、テンション低いね。今日はどうしたのん?』
あなたのテンションに着いて行けないだけです。
「いや、まぁ……はは。えとね、ほら、少し前の放課後にさ、彩調さんに誘われたんだけど……僕、断ったでしょ?生徒会の仕事があるって言って」
『ああ、私がラブホに誘った時ね』
「そうそう。その時僕恥ずかしくてね、どう断ろうかと――て、違うよっ!ラブホなんて単語は一言も出てなかったよっ」
『にはは。出た出た。時峰くんのノリ突っ込み。いやぁ、楽しいねぇ♪』
「……そりゃなによりで」
本当にテンション高いな…。
「それでさ、その時埋め合わせするって言ったじゃん?」
『うん、そうだったかな。お前の体で勘弁してやるよ……だっけ?』
「なんで僕そんな悪どいのさっ」
『いや、言ったのあたし』
「まさかのっ?!」
『にはは。時峰くん、テンションが上がって来ましたね』
「……お陰様でね。ちょっとボケが際どいけど」
にはは。彩調さんは笑う。
いつもこうだ。彩調さんは持ち前のテンションの高さで相手を楽しませ元気にさせる。僕は彩調さんのそういうところが好きだ。
それと同時にちょっとばかし苦手でもある。彩調さんのボケのほとんどは下が入るからだ。
「えっとね…」
『うん』
「それで、今日なら暇だし時間が空いてるからさ、どこか行かないかなって思って」
『うわ、突然だね』
「うん。まぁね。あー、ダメならいいよ?ただの思い付きだし」
『うーん……んじゃ、こうしよう。午前からはいきなりだから、午後の1時半に駅前に集合。おk?』
午前はやっぱり暇だけど、彩調さんの都合を考えると、それがいいか。
というか、僕が意見出せる義理でもないけど。
「うん。いいよ。でもどうせなら僕が迎えに行くけど」
『あ、それはダメだよー』
僕の意見は却下される。
『デートのだいご味は待ち合わせなんだから。迎えもいいけど、それはマナー違反ですよ』
「そういうものかな?」
てかデートって。
『そういうものです』
ま、いっか。彩調さんがそうしたいと言っているんだから。相手の意見を尊重しよう。
『じゃあ切るね』
「あ、うん。ありがとう」
『どいたま。でもむしろこっちがお礼言いたいけどね』
「え、どうして?」
『それは乙女の秘密なのだよ。時峰くん』
じゃあねー。そう言って彩調さんは切る。
「……ふぅ」
僕は溜め息を吐きベットへダイブする。
……なんかあれだ。
「……落ち着かない」
明日遠足で眠れない子供のような気持ち。
僕はそのまま夢の中へ――とは行かず、勝手に入って来た妹の沙奈ののしかかりにより、僕は背中にダメージを負った。