第14話 駄弁るだけでは終わらない
「それで、どんな感じかな。首尾は上々かな?」
生徒会会長専用の座席に堂々と座り、イヤらしい顔を浮かべ朱月冴夏は問う。
「まぁ、それなりって感じですかね。というか……」
「なにかな?少年」
僕は目の前の作業に没頭しながら訊く。
「なんで水着姿でいるんですか」
しかも学校指定ではなくビキニとか。
目のやり場に困る。
「今水着コンテストで色々と動いてもらってるからな。だからだよ」
それ理由になってない。
「私自身がなにもやってない、なんて虚偽のレッテルを貼られるわけにもいくまい。それで私自身が水着を着ることによりちゃんと仕事をしているとアピールをしているわけだよ」
室内で水着姿を見ても、ただ泳ぎたくて浮き足立ってる人だよ。
「別に誰も疑ってないと思いますけど?」
むしろその格好でいる方が不信だし不審だ。
「そうとも限らないだろう。例えばあの風紀取締委員とこの長とかな」
あー……うん、確かに。そういうところ、あるかも知れない。
西田さん、会長に対しては妙に堅いからな。僕にはなんか逆に妙にしおらしいというか、いや、他の人にもなんだろうけど。
「でも、西田さんはちゃんと話せばわかってくれます。会長が変にちゃちゃ入れるから変に話が拗れるんですよ」
「別に私は正直にしてるつもりなんだけどな……ふうむ」
その正直の使いどころが間違っているんだ。桃色な思想や欲を出すから相手が刺激されて話が安定しないんだ。
というか、それをわかっていてやっているんだから……この人は。
所謂計算の内ってやつだ。好む人にはとことんちゃちゃ入れるんだ、この人という人は。
「……あれ、会長と悠人だけ?」
生徒会室にお客――ではなく、我が生徒会の会計である依代依だ。
辺りを見回して確認すると、自分の座席へ座る。
「そうだよ」
「……そう」
僕が答えると、一言返事した後、こう言った。
「……ということで、悠人……キス、しよ?」
「だが断る!」
なにかと思えば、突然なにを言うか。
ということで、って、なにがということででキスになるんだ。むしろ頭の中どういう構造しているんだ。
「残念ながら、少年とのファーストキスは私が予約しているんだよ」
「いやいやいや、してませんから。というか、予約制でもなんでもないです」
「……なら問題ない」
「あるわ!。普通にあるわっ。むしろ重要な事だからねっ!」
二人してことあるごとに攻撃してくるんだ。僕は防ぐので手一杯だよ。
……誰か、代われるなら代わってくれ。
「最近は仕事で弄れる機会が減ったからな。こういう時にどんどん突撃しないともったい気がしてな。はは。お茶目というやつだ。気にするな、少年」
いや、気にするから。
「一日一回は会長にセクハラされてる気がするんですが」
「そうだったか?」
「そうですよ。生徒会の仕事ない時とか会えない日とか、教室に来るとか電話してくるとかファックスでよこすとかで」
「私は案外寂しがりなんだよ。気にするな」
会長が寂しがり?それはない。
いつだって会長は自分を主張してるんだ。口で言わなくても雰囲気とかで。
「……悠人…私ともいちゃいちゃしよ?」
「いや、僕はいちゃいちゃしてる気ないから」
この時の僕が会長に対して、言い返せなかったことの意味を知る。
会長が寂しがりと言った時の目は、本当に寂しそうで、今にも消えてしまいそうだったの意味を知ったのは、もっとあとになってからだった。