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ハーレムエンドでは終わらない  作者: 宛 幸
閑話のようなもの
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第10話 注意だけでは終わらない

 鼠色な雲が青空を覆い、今にも雨が降りそうな中、僕達学生徒は机に向かってカリカリと黒板に書かれてゆく文字をノートに書き写していた。

 寝ている者を例外として、ただ一人だけは。

「……であるからして。――式垂(しきたり)さん、聞いてますか?授業中に音楽なんか聴いてるんじゃありませんよ」

 先生の言う通り、頭にデカデカとしたヘッドフォンをした薄く青みがかった髪をした少女、式垂(しきたり)さんは、ポップキャンディの棒の部分を口からはみ出させてどこ見ているのか、半目で黒板の方を向いていた。

「……聞いてますよ。聞こえてますよ。そんな声出さないでくださいよ。頭が痛くなりますよ」

 そんな反抗的な返事をする式垂さん。

「――なっ。そんな口答えするのであれば、たった今黒板に書いた問題を解いてください。そうすれば許してあげます」

 先生は先生で甘いよ。

 そんな先生の挑発に乗り、式垂さんは席を立ち、ダルそうに黒板まで歩き、答えを書いた。

「これでいいですか?」

「……………………はい。ちゃんと聞いているみたいで、安心しました」

 反抗的な口調な式垂さんだが、答えは正しかったらしく、先生はシュンと顔が暗くなる。

 先生は天然なのか、授業さえ成立していればいいみたいだ。ヘッドフォンを取ると言う選択肢が元からないようだ。

 肝心の式垂さんは、席へ戻り、ダルそうな様子で着席した。

 僕はそんな風景を傍観者の如く鑑賞していた。



 昼休み。

 僕は式垂さんの席を見たが、すでに彼女の姿はなかった。

 きっと音楽室に行ったのだろう。……個室の。

僕は溜め息を吐いて鞄から弁当を出す。

「私もご一緒しても?」

 声は綾未さんだった。

「いいよ」

 僕はもちろん了承する。

「なら俺もだな」

 それに便乗してくるのは戸田君。

「そういえばさ、式垂の奴さ、なんか素っ気ねぇっつうか、よくわからんよな。気付いたらいなくなってるし」

「あー……ちょっと不思議な子だよね」

 やっぱりあまりいい印象ないみたいだな……式垂さん。

「はは…。まぁ、式垂さんには式垂さんなりの考えがあるから、あまり気にしなくていいと思うよ」

 僕は割と事実を案として告げる。

「そうだな。陰口みたいなことみっともないしな。それよりメシ食おうぜ」

「う、うん。そうだね。食べよう食べようっ」

 僕の意見に便乗してくれる綾未さんと戸田君。

 やっぱ持つものは友達だよね。

 僕と綾未さんはお弁当、戸田君は購買パンという安定した昼食だ。

「今日もうまそうだな。二人の弁当」

「ありがとう」

「でしょ~♪」

 僕は軽く返事を、綾未さんは自慢気に胸を張る。

 その様子がかわいく思えて笑えてしまった。

「え、なんで笑うかな~っ」

「そんなん綾未の胸が貧相だからだろ」

「ちょ、時峰君はそんなこと思わないよっ……ね?」

 あれ、なんで最後の方自信なさげに訊くのですか。

「いや、違うからね。戸田君もいい加減なこと言わないでね」

「ははっ。でも綾未の胸が小さいのは本当のことだろ?」

「……うぅっ。戸田君はえっちぃよっ」

 顔を赤くして反論を試みる綾未さん。

「……ふっ。男がエッチで何がわるいっ!!」

 戸田君は堂々と宣言していた。

「……ふぇえ…戸田君が変態さんだよ」

 僕は副菜を食す。

 うん。この(きす)の甘辛あげ、なかなかいけるな。挑戦してみた甲斐があった。

「男が変態でわるいかっ」

 もうそれは逆ギレに近いよ、戸田君。

「時峰君、助けてよ~…」

 涙目になりながら助けを求める綾未さん。

 僕は口に含んだ物を飲み込み、発言をする。

「大丈夫だよ。僕は綾未さんくらいが好みだから」

「……――ふぇっ!?」

 一巡して気付いたらしい。反射的に胸元を隠す。

 まぁ、本音というのもあるけれど、からかって綾未さんの反応を楽しむのも一興だな。

「なんだ、俺は巨乳派だぞっ。綾未くらいの胸も好きだがなっ」

「うわぁあんっ。時峰君と戸田君がいじめるよ~っ」

 こうして綾未さんいじりの昼休みを僕は楽しんだ。

 そして僕が貧乳派だと噂が広まったのは言うまでもない。

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