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ハーレムエンドでは終わらない  作者: 宛 幸
閑話のようなもの
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第9話 案内では終わらない

 学園長であるのえるさんに頼まれ、ユリアちゃんを学内を案内する。

「どこか見てみたい所とかある」

「あ、いえ。特には……ないです」

 僕の質問に遠慮気味に答えるユリアちゃん。

 こっちに来たばかりで緊張してるのかな?

「大丈夫?どこかで休む?」

「……え。あ、いえ、大丈夫です。心配ありがとうございます」

 またも丁寧な口調。だけどどこか寂しそうなイントネーションを受ける。

「何かあったら言ってね」

「……あ。はい」

 どうも緊張とか不安そうだから、少しでも安心させてあげたい。

 まぁ、僕にできることなんてたかが知れてるけどさ。

「じゃあ、とりあえず教室まで案内しようかな」

「はい」

 今いるのが三階で、一年の教室は二階。のえるさんがいる学園長室は三階の渡り廊下を渡った特別校舎にある。何故かは知らない。

 とりあえず普通校舎に渡り、階段を目指す。

「……あの、悠人先輩」

「ん?何かな?」

「訊いたりしないんですか?」

「え?何をかな」

「……その、私の…こと」

 顔を伏せながら訊く。

「あぁ。本人が言いたくないなら訊かないし、それに、変に訊いて、もし関係が崩れたら……なんかいやだから」

「……」

ユリアちゃんは僕を見る。

「ほら、なんと言っても、ユリアちゃんいい子だと思うしね。あと転校生ってとこも親近感湧くよね。僕は編入だったけど。だから仲良くしたいと思うし……迷惑だった、かな?」

 気持ちは大体そんなものなんだけど……やっぱ僕じゃ力になれないかな……はぁ。

「ありがとうございます。すごく……嬉しいです」

 だがそれは杞憂だったみたいだ。

「みぃ、悠人先輩の為にも早くここの生活に慣れたいと思います」

 そんな風に言われたら、こそばゆくなる。

「それはちょっとばかし変な感じ…かな?でもそうだね。早く慣れるのはわるくないと思う。うけど、自分のペースでいいんだからね」

「あ、はい」

 できれば僕の為ではなく、自分の為がいいのだけど……それを言うのは野暮というものだろう。

 というか、せっかくその気になっているのだ。水を指すのは気が引ける。

 ともあれ、気が付けば目的地である一年の教室に着いた。

「……あれ。そういえば何組だ?訊いておけばよかった」

「一組です。えと……こちらですね」

 そう言って一年一組の前にユリアちゃんは立つ。

「入ってみる?」

「え、でも……」

「大丈夫。きっと誰もいないだろうしね」

「いいのでしょうか…」

 やっぱり遠慮がちなユリアちゃん。

「いいよ。何かあれば僕が責任取るから」

 僕はそう言って中に入る。

「――あ」

 そのあとにユリアちゃんも戸惑った末に入って来る。

「みぃの席、どこになるのでしょうか…」

 そういえば、ユリアちゃんが言う“みぃ”って、一人称なのか。

「たぶん、一番後ろの窓側じゃないかな?転校生の定番というか、大抵はそこになると思うんだ。人数の関係とかでさ」

 僕は思ったことを言ってみる。

 まぁ、大抵は真ん中とか廊下側だったりするけどね。

「……そうですね。それ、いいかもです」

「え?」

 思わず返してしまった。

「あ、いえ。窓側の一番後ろの席って、なんかロマンチックだな……て思いまして」

「ロマンチック?」

「あ、はい。外をいつでも好きな時に見れるのは……なんかロマンチックだと思いまして。……えと、変…でしょうか?」

「ん、いや。変じゃないよ」

 むしろそういう考えができるのは、少し羨ましいと思う。

「私、好きなんです。景色が。いつも……独りですから」

 ユリアちゃんは笑っているが、目が淋しそうに見えた。

「友達は?ずっと一人ってことはないでしょ?」

「いません。……私は一人で十分です」

 悲しそうだった。

 だから僕は言う。

「だったら僕が友達になるよ」

 いないなら作ればいい。一人は寂しいから。

「……そ、そんな」

「僕が友達じゃ、不満かな?」

「そんなこと……ない、ですけど」

「だったら僕とユリアちゃんは友達だよ。この学園での、最初の友達」

 一人でいて、謙虚な子には、押しが必要だ。

 僕はそれを知っている。

「ね?」

 僕は手を差し伸べる。

「……」

 ユリアちゃんは困るように、戸惑うように、恐る恐る僕の手を……握る。

「改めて、友達としてよろしくね。ユリアちゃん」

「……あ、はい」

 こうして僕とユリアちゃんの友情は形成されたのだ。

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