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僕らの平和に忍び寄る影  作者: 逢沢 雪菜
起章 予兆
1/9

☆ 一話

 馬鹿と煙は高いところが好きとか、馬鹿と鋏は使いようとか言うけれど、それに加えて馬鹿は叫ぶのが好きなのだろうか。


千那(ちな)ー!!」


 叫んだのは僕の幼稚園時代からの友人。ざっと十年の付き合いだ。

 名前は友人Aとか友達1とかで済ませたいが、それで済まないから世界は戯言。コイツの名は暮乃(くれない)樹里(いつき)。学年上がって最初の授業などで教師によく「じゅり」と読まれるがあくまで「いつき」である。


 そして、その樹里が盛大に叫んでくれた「千那」というのは、僕改め中数賀(なかすが)千那(ちな)の事である。女っぽい名前で正直うんざりしてる。


「………………」

「いつもの睨み返し? ホント千那って面白いよね」


 そう言ってけらけらと笑う。


 僕の何が面白いのか全くもって不明だが、とりあえずコイツは馬鹿だ。

 人格的にだけでなく、もちろん頭脳的にも。外見も茶髪で(地毛だが)いかにも軽そうだ。


 まぁそれは置いておこう。


「んで、何用だ?」

「え? 何かの専用物? 何が?」

「違う。僕に何の用だ」

「あ、そっちぃ」


 ぽんっ、と手を打って納得した顔。いちいち動作を付けないと喋れない奴なのかといつも疑問に思う。


「今日家遊び来ない?」

「樹里、学年と時期を弁えようか。今月は師走だ。来月に迎える人生の一大岐路の重大さを理解した上でそれを言ってるのか?」

「うん。だから勉強教えて☆」

「………………」


 そんな魂胆だろうとは思ってたが、まさか予想通りとは。


「妹ちゃんも呼んでよ。綺来(きらら)が会いたがってたよー?」

「分かった、分かったから。時間と場所を考えろ。お前のクラスは隣だろう」


 ちなみに時間は帰りの会の寸前。ほとんどコイツが出てくのを待ってるようなもんだ。正直視線が痛い。


 そして、綺来というのは樹里の妹で、僕のあの偏屈な妹と同い年の子である。

 彼女は普段から大人しい子で、樹里はとてもその兄とは思えない行動をする。ホントに同じ親なのかと怪しく思う事もしばしばだ。


「んじゃ約束したかんね! 帰ったらメールくれよ!」


 そう笑顔で叫びながら、樹里はやっと僕のクラスの教室を後にした。



 追い払う為とはいえ、約束してしまったものは仕方ない。

 僕は帰りの会の間、妹の誘い方を考える事にした。

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