悪魔の子
ハッピーエンドかバッドエンドなのか書いてて判断つきませんでした。
密やかに社交界で囁かれる噂がある。
ファナルーク公爵家末子のご令嬢、アリスティアは悪魔の子である、と。
アリスティアはコト、と小さな音を立ててスプーンを置いた。食事で濡れた口元を静かな衣擦れを伴いナプキンで拭う。
それらはわずかな音のはずなのに、絢爛で広い食堂にはやけに大きく響いた。
高位貴族のマナーに沿った美しい仕草は講師に絶賛されるレベルではあるけれど、それを見届ける者はここには誰も居ない。
そう、誰も。
父親も五つ上の兄もおらず、食事を順番に提供する給仕係のメイド達すら居なかった。
前菜からデザートまで一緒くたに置かれたテーブルは壮観と言えばそうではあるが、順繰りに食べていけばメインの肉は冷めていたしデザートのゼリーは生温くなっていた。それでも味を大きく損なわないのは料理長の技術の賜物か。
アリスティアは椅子を引いてくれるバトラーも居ない中、静かに立ち上がる。
重い食堂の扉を二度ほど叩けば、廊下で待機していたメイドが開けた。
「今日も美味しかったと料理長に伝えて」
アリスティアの言葉に無言で頷き、入れ替わりに片付けのためメイド達は中へ入る。
その様子を何の気もなしに眺めていたアリスティアはふと、閉まったマホガニーの扉に耳をそっとくっつけてみた。
カチャカチャと食器が鳴る音の中に、くぐもった会話が漏れ聞こえてくる。
雑談でしかないそれにアリスティアはほう、と安堵のため息をついた。あまりにも無言の所作に、今流行りの魔導具メイドだったのではと疑いをかけていたのだ。
クルリと踵を返し自分の部屋へと向かう。人っ子一人居ない廊下は長く、灯りが沢山あるはずなのにどこか薄暗かった。
アリスティアの孤独な人生は物心ついた時点ですでに始まっていた。
父には疎まれ、何故か兄には詰られる。
幼い頃は何も知らず大声に身をすくませ涙を浮かべるだけだったけど、成長し本を読み人の会話が理解できるようになれば状況は自ずと分かってくる。
アリスティアの亡き母は子爵家の令嬢でミリスティアという。
太陽に煌めくストロベリーブロンドは絹のようで、輝く瞳はペリドットの淡く美しい透明感を持つ。丸い頬を染めあげ貴族令嬢としては少々はしたなくも屈託なく笑うその愛らしさに、通っていた貴族学園の男達は皆夢中になったらしい。
当時の王太子すら彼女に興味を持ったようで、それに嫉妬した婚約者の侯爵令嬢に険を向けられたりもして中々な波乱に満ちた学園生活を送っていたとの事だ。
ライバル多数の中、ミリスティアを射止めたのは公爵家嫡男の父だった。
当然父にも婚約者はいたが円満に解消し、貴賎結婚と揶揄されても負けずに繰り広げた大恋愛は本や劇になったほどだ。貴族の間ではその物語はもはや嗜みと言われるくらい父と母の仲は有名になった。
だがそんな二人に悲劇が訪れる。
ミリスティアはアリスティアの出産による衰弱が酷く、帰らぬ人となってしまったのだ。
母を深く愛していた父は嘆き苦しみ、五歳の長男は母の温もりを求めて泣き叫んだ。そして本来どこにもぶつけようがないはずの憤りは、生まれた赤子に牙を向いた。
アリスティアは徹底的に父からも兄からも憎しみを向けられた。
当主がそうなれば使用人も倣って侮り、一時期は食事も貧相だったしアザも絶えなかったくらいで。乳母すら乳をあげるのを嫌がっていたと聞いて、よく生きながらえたものだとアリスティアは思う。
潮目が変わったのは、アリスティアが第二王子の婚約者に打診された七歳の頃だ。
曲がりなりにも公爵家のご令嬢だ。
高貴なる血筋を考えれば妥当だが、肉親からの悪感情を考えると不当であった。
だが貴族たるもの感情一つで王家の意向に逆らう事は出来ず、ひとまず顔合わせとなった。
「ふぅん…君があのミリスティア様の子か。…痩せっぽちだし所作が酷い。君、やる気あるの?」
アリスティアの貴族教育はとうに始まっていたが、忌み子に講師がまともに相手をする訳もなく。服で見えない二の腕や太腿を中心に体罰を与えられ虐待されていたアリスティアは日頃から酷く消耗していた。
「申し訳…ありません…」
食べ物も満足に取れないアリスティアは体力が無く、礼儀の基本であるカーテシーはふらついている。第二王子はそんなアリスティアが気に入らなかった。
あの有名な麗しのミリスティアの子であるアリスティアは、確かに色味は似ていれど頬は薄く腕は棒のようで、表情はほとんど無く目の色は暗く沈み込み不気味にすら思える。
その上、誰からも愛された彼の人と異なり公爵と嫡男からは憎まれている。第二王子の後ろ盾として役に立つのか疑問がよぎる。
緊張からか白い顔をした主人を気遣う様子が欠片もない付き添いの侍女の態度からも家での内情が伺えた。
公爵夫妻の恋愛物語は第二王子も読んでいて、実は少し憧れていた面もあったせいで落胆が大きい。
こんなのが婚約者とはもはや罰だと不満はつのる。
「どうでもいいが私に迷惑をかけないでくれよ。王子妃となる者が挨拶すら出来ないとか話にならない」
言い捨てて、顔合わせのはずのお茶会を早々に辞した第二王子に何も言えず、座る事すら許されなかったアリスティアはお茶の一滴も飲めず帰宅した。
付き添っていた侍女は当然、王子に言われ、アリスティアが何をしたのかを当主へ仔細に報告した。のちに講師が変えられ食事も改善される事となる。
流石に王家に嫁ぐ者としてまずいと判断されたらしい。
アリスティアがどんなに優秀な成績を残してもミリスティアの容貌を受け継ぎ美しく育っても、誰からも愛されなかった。
学園に通ってからも友人は出来ず、それどころかミリスティアを死なせた原因として“悪魔の子”と囁かれる始末だった。
「父が種を巻き母が望んだ結果でしかないのに。生まれただけの私に何の罪があるのかしら」
アリスティアがぽつりと呟くも訴える先は見つからず。好奇と嫌悪、侮蔑の視線に黙って唇を噛み締めるしかなかった。
高位貴族の身分ゆえにあからさまな危害は加えられていないが、クラスメイトとの交流すら皆無。
婚約者なはずの第二王子は、二つ上の年代なせいで互いの授業時間が合わないなどとのたまい交流を疎かにし、昼食を共にする事もしない。
最近では才女と言われる伯爵家のご令嬢と二人で歩いているのをよく見かけるようになり、アリスティアが関係を問うても同じサロンのメンバーだとしか言われない。アリスティアは王子妃教育が忙しいはずだと決めつけ授業が終わり次第に王宮へ向かわせ、サロンに入れさせないくせに。
伯爵令嬢から優越感を滲ませる微笑みを向けられながら、アリスティアは足早に去る二人をじっと見つめる事しか出来なかった。
第二王子の学年の卒業パーティは例年通り冬季に学園の講堂で行われた。
高い天井と壁は土魔法による色とりどりの花で飾られ、火と風の魔法で空調は快適な温度に整えられた。楽団は厳かでゆったりしたテンポの音楽を奏で、華やかに着飾った今日の主役達はひらひらと舞い踊る。
卒業生の父母達は端に寄り、ワインを傾けながら愛しい我が子を微笑ましく見守っていた。
アリスティアは第二王子の婚約者として参加していたが、エスコートも無く、壁の花となり王子が伯爵令嬢と踊るのをぼんやりと見ていた。
参加は決まっていたのに当然のようにドレスは贈られてはこず、今着ている服は第二王子の色味を加えた既製品だ。
伯爵令嬢のブローチが第二王子の瞳の青色で、第二王子のカフスが伯爵令嬢の髪の赤色なのは見て取れたが、たまたまだと主張されれば批難できないだろうとアリスティアは思う。
婚約者以外と真っ先に踊っているにも関わらず、誰からも、アリスティアの関係者として呼ばれている公爵からも批難は無いのだ。
アリスティアは何のためにここに居るのかも分からず、せめて早く出ていけるように出入り口付近で待機していると、ふと音楽が途切れた事に気付いた。
いつの間にか俯いていた顔を上げれば、中央で踊っていた第二王子と伯爵令嬢の周りがぽっかりドーナツ状に空いており、二人はアリスティアを一心に見つめていた。
ドクンと一際大きく胸が脈打つ。
「公爵令嬢アリスティア・ファナルーク。私との婚約の破棄を言い渡す」
うっすらと予感はあった。
けれどこんな場所で、しかも解消ではなく破棄なのは何故か。陳腐な娯楽小説のようなワンシーンに疑問はつきないがアリスティアは一番気にかかった問いを口にした。
「…破棄の理由をお伺いさせていただけますでしょうか」
アリスティアは学園の成績も王子妃教育も優秀だった。身なりとて出会った頃とは違い、王家に嫁ぐ為に整えられている。
「分からないのか?君が誰にも愛されていないからだよ」
「……!」
「肉親からの愛情はもとより、友人すら居ない。気にかける大人なども居ない。そして何より、私が君を愛していない」
そんな人望無き者が王家の一員として上に立つなど誰が認めるものか、と吐き捨てられアリスティアはぐらりと目の前が遠くなるのを感じた。は、は、と短く呼気を吐くも不穏な動悸は収まらない。
これは王家も公爵家も容認した事なのかとゆっくり父を見やれば、父はいつものように憎々しげな顔でアリスティアを見ていた。
ぐるりと首を回し、王の代替として招待されていた第一王子に顔を向ければ、気まずげに眉をしかめつつ目を逸らされる。
決定事項なのだ。婚約破棄は。
聴衆のさざ波のようなざわめきがだんだんと大きくなっていく。音がわんわんと耳の奥に響いて足が震えた。
それでも高位貴族としての教育はアリスティアの唇を開かせる。
「婚約破棄、承りましてございます」
お手本のようなカーテシー。
指の先まで美しい様は讃えられる事もなく、アリスティアの存在すら第二王子が発表した伯爵令嬢との新たな婚約への拍手の中に埋もれていった。
「支度金はくれてやろう。どこへなりと行くがいい」
屋敷の公務室へ戻った公爵はアリスティアにそう言うと、金貨が詰まった袋を机に放り部屋を出ていった。
その様子に、もしや破棄はアリスティアに決定的な瑕疵をつける為に父が提案したのでは、と思い当たる。
王家から見せしめのように衆人環視の中で言い渡された婚約破棄だ。次にアリスティアを娶ろうという者など禄に居るはずもない。利用価値の無い駒となった娘を放逐する理由にはうってつけだ。
そもそも父は初めから婚約する事自体を渋っていた。
そこまで私が憎いのかと悲嘆にくれる暇もなく、自室に戻れば専属侍女により手早くドレスを脱がされ顔を拭われる。
代わりに用意されていた服は庶民が着るような簡素なワンピースとコートで、大きめな旅行鞄も持たされた。
中身を見れば着てる物と同じような質の着替え一式、最低限の医療品が入っている。
用意はすっかり整えられて、後はアリスティアが屋敷を出るだけ。
夕刻に始まった卒業パーティを途中で抜けてきたけれど、すでに日は落ち外は夜闇に包まれている。老齢な専属侍女は無言で扉を開いて待っていて、アリスティアの覚悟など待ってはいない。
父にも兄にも別れを告げられず、侍女の圧に負けたアリスティアは屋敷を後にした。
たった一度振り返ってみれば、玄関先に居たのは先ほどの侍女一人。それは別れを惜しんでいるのではなく、戻ってくるのを阻止せんとする門番のようだった。
石畳が敷き詰められた道にコツコツと踵が音を響かせる。暗い夜の気配の中には遠くでは犬の遠吠えが、先が見通せない闇色の路地からはカサカサと鼠が走る音がする。冷えた冬の空気の中、風が無いのだけは幸運だろうか。
アリスティアのような貴族のご令嬢が夜道を一人歩くのは、貴族街が魔法灯にて照らされているとはいえ危険な行為だ。
普通の令嬢ならば不安から泣き出すのであろう。
だが踵の音の中に、次第に抑えきれなかった笑い声が含まれる。
「ふ、…うふふっ。あはは。キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」
気が狂ったかのようにアリスティアが高らかに笑う。何故なら嬉しいからだ。とてもとても嬉しいからだ。
アリスティアは賭けに勝った。
「ああ愛しのミリスティア!ありがとう!悪魔の私に肉の器をくれた母よ!」
そう、アリスティアは正しく悪魔だったのだ。それもミリスティアと契約した悪魔だった。
ミリスティアを知る者は誰もが言う。
優しく麗しのご令嬢。皆に愛を振りまき愛されていた人物だと。
それは真実の全てではない。
ミリスティアの正体は転生者だ。
ここが前世でプレイした乙女ゲーム『星辰の予言と魔法学園の恋人』と酷似した世界で、自分がヒロインだと気付いたミリスティアは当然とばかりに攻略を開始した。略称『ほしこい』はスタンダードな会話中心の乙女ゲームで一部キャラを除けば特別に難しい要素は無く、ミリスティアの前世の記憶はゲームのほぼ全ての会話内容を驚異的に覚えていたからだ。
攻略があまりにも簡単に進むので逆ハーレムを一時考えた事もあるが、前世で悪役令嬢の逆転物語も読んでいたミリスティアは現実的ではないと判断し最終的に公爵令息を落とした。
地位の高さに目が眩み王太子も狙ってはいたのだが、このキャラはゲーム内でもかなりの高ステータスにしなければ攻略できない難物で、さらに現実では王室法典で低位貴族との婚約は認められないと知り諦める他はなく、友人として好感度を留めるに終わらせたのだ。
ゲームの記憶は彼女を助け、公爵令息の婚約者との和解までこぎつけられ、誰からも祝福された結婚をしたミリスティアは幸せの絶頂にあった。
その幸せの陰りは第一子を出産したあたりからになる。
出産による負担は想像より重く、衰えた身体はミリスティアの美貌に濃く影を落とした。夫の愛は変わらなかったけれどミリスティア自身が我慢できなかった。前世では地味な顔と貧相な身体だったのが、今ではこんなにヒロインとして美しく可愛らしい。
この美を手放すなど考えられなかった。
表面上は取り繕っていたが裏では美容法を収集し、しまいには治癒魔法を皮膚の再生に使えないかと一部の神官を公爵家の権力を使い独占などもして足掻いていた。
そして第二子の妊娠が発覚した直後、禁断の魔法に辿り着く。
公爵家図書室奥に秘されていた禁書に書かれていたのは悪魔召喚術だった。
藁にもすがる想いで召喚した悪魔と、ミリスティアは契約を願う。
「私を次に生まれる我が子の中に転生させてちょうだい!」
ミリスティアが求めたのは一挙両得とも言える方法。
お腹の子は魔法鑑定により女児だと分かっている。公爵家の娘。若さと美貌と身分の高さを持ち、生まれた時から最高の教育を受けられる。諦めた王族との婚姻も容易となるだろう。
ミリスティアは一度起きた幸運を今度は作為で起こそうと考えたのだ。
だが悪魔は契約に条件をつけた。
ミリスティアを転生させるのは出来るが、味を占めて将来また同じ事を願う可能性が高かったからだ。そんなことを繰り返せば肝心の悪魔への報酬の魂がいつまでも支払われない恐れがある。
それに悪魔は魂以外に欲しい物があった。
「賭けをしよう。その子の身体に私が入り、16歳まで誰にも愛されなければ私の物とする。誰か一人にでも愛されたらお前に明け渡そう」
ミリスティアは勝算があると考えた。
何故なら自分はとても夫に愛され子供にも愛されている。
出産の際に己は死んで子の中で魂を馴染ませなければならないらしいのだが、夫が忘れ形見の娘を愛さないとは思えなかった。
長男も優しい子だ。良き兄として妹を愛し母の不在の寂しさを埋めるだろう。
そしてヒロインのミリスティアと攻略対象の夫の子供だ。きっと美貌は受け継がれるはず。美しい公爵令嬢は誰からも愛を謳われ請われる存在となるだろう。
そこまで考え、ミリスティアは気づく。
「16までは貴方が身体を動かすのよね。とんでもない奇行をする狂人とか、殺人者とか…愛を得られるはずもない人間に仕立て上げる気は無いでしょうね?」
「はは、悪魔のプライドにかけてそんなつまらない事はしないと誓うよ。来たる日まで品行方正な普通の公爵家の娘として振る舞うさ。信じるかは任せるけどね」
「…そう、ならいいわ。契約成立よ」
結果、悪魔は賭けに勝った。
ミリスティアに誓ったとおりアリスティアは公爵令嬢としておかしくないよう生きてきた。
だが皆にあそこまで嫌われたのは、悪魔が中に居たせいだ。
悪魔とはこの世界の創世神によって造られた人類の敵なのだ。甘美な誘惑と稀なる恐怖を与え、人の衰退や悪感情を促す存在。天使とは真反対の方向で人類の進化を補助する役割を持つ。
たとえアリスティアが真っ当にしていたとして、この世界の人間なら魂の根幹が悪魔を拒絶すると知っていた。だからほんの少し中の悪魔の存在感を強くすれば良い。それだけ。
真に勝算があったのは悪魔の方だ。
転生者の魂ゆえに悪魔の存在に違和感を感じられないミリスティアは負けるしかなかったのだ。
「さぁて、どこに行こうかしら。どこで人を陥れ国を傾けようか」
悪魔の目的、それは転生者の真似事だった。
我らが創世神はたまに異世界から魂を呼び、乙女ゲームやら乙女小説やらの物語に似た国におろし混乱を招き寄せていた。それが神の気まぐれなのか、それとも運命なのかは知らないし興味はない。
悪魔にとって不愉快なのは、創造神自ら生み出した自分達が居るのに何故異世界の者どもに騒動を任せるのかという一点だった。
呼び寄せる者が学者や職人ならば人類の発展のためだと考えられるが、今のところ考えの足りない幼子の魂ばかりではないか!
自分ならば!もっと上手くやれるのに!
そう憤ってみたものの、悪魔の役割は人類に呼ばれなければ果たせない。そういう風に造られたからだ。
自由に動ける身体が必要だった。
そこに降って湧いたのがミリスティアだ。
欲に塗れた異世界人は悪魔の脅威も知らず無謀な賭けで悪魔に人間の身体をもたらしてくれた。
くるくると悪魔はステップを踏み華麗にしなやかに踊りながら往来を突き進む。
先ほどまであった複数の隠れた他者の気配は完全に息を潜めアリスティアのゆく道を阻む事もなく。
ストロベリーブロンドの髪は柔らかな月の光に煌めき残滓を残しながら波打ち、見開いた大きな瞳はエメラルドの眩さで爛々と輝く。白くて丸い頬は薔薇色に染まり、白い呼気を吐き出す唇は紅も無いのに赤く艷やかで、きゅうっと半円を描き上に吊り上がっている。
喉が爛れる恐れはあるが、今は讃美歌でも歌いたい気分だ。
「器に押し込められているせいか、能力は魅了、洗脳、幻惑…生気と魔力を吸い取って不老と不死を維持するくらいしか無いわね。でもこの顔とこの身体の私なら、きっと沢山の大勢の人類を狂わせる事が出来るわ!楽しみね!」
かくして、美しい厄災は世に放たれた。
アリスティアはまだ16にはなっていません。でもあと数日で誕生日という段階で婚約破棄され追い出されたので勝ち確!と大喜びしている悪魔くんちゃんです。可愛いですね。
AI補助は乙女ゲームのタイトルが何にも思いつかなくて候補を出してもらいました。




