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この世界では、20歳になったとき、将来の夢をそのまま叶えてもらえる。
剣士。
公務員。
魔法使い。
宇宙飛行士。
バーサーカー。
どんな夢でも、就職先さえあれば叶えてもらえる。それまでどんな運動音痴でも、うつつものでも、一流のスポーツ選手にも学者にもなれる。
人々に必要なものは、『努力』ではなく『覚悟』なのだ。
その夢の成就には、莫大な資金がいる。
それを、俺たちは夢を決めた瞬間から背負う。
2億円を30年ローンで契約する公務員。
4億円を40年ローンで契約する剣士。
魔法の使用のたびに100万のローンを組む魔法使い。
契約方法は様々だが、それぞれ力と役割に合った『先払いの契約』を結ばれる。
人間は職のために生き、職のために働く。
報酬が先で、労働が後になる世界。
大いなる力には大いなる責任と借金がのしかかるが、そのぶん人に讃えられるロイヤリティを持ち、大きな報酬を得る機会も多くなる。
こんな世界で、俺は━━いや、俺たちは。
バカな生活を送る羽目になっていた。
クリン。
返済期間35年。非戦闘職のくせに総額8億円ローン。
ムサシ。
ジョブを選ばなかったフリーター。またの名をニート。
そして俺、有須田二郎。
返済期間75年。総額32億8980万円ローン。
最初は普通の剣士だったのが、バカなことをして借金返済できなくなり、別の会社から借りた金で返済を遅らせたりリボ払いしていくうちに雪だるま式に借金が増えていき、気づいたらこのお値段。
今はS級の邪竜剣士(笑)。
デジモンでいうスカもん、たまごっちでいうところのおやじっち、それがこの世界の邪竜剣士。
失敗した人生はもう立て直すことができず、ありえん負債はもう返済不可能と割り切って、社会的に最低限度以下の生活を強いられている。
政府に申請していない不法バブル、違法的なアルコール製造スキル、ここで1日の終わりにチビチビとやれているだけ奇跡なのだ。
シャカシャカシャカシャカ…トン。
「ジャパニーズコレスッキーノです」
「なっ…」
「それ、カクテルじゃないか!?」
「…ふっ、当たり、だな」
……ごくり。
「…お茶じゃねーか!」
借金と将来への漠然とした不満という見えない重力に縛られた俺も、ここにいるときだけは無重力を感じられるのだ。
だから、周りからどんなクズ扱いされようと、俺はこの場所を守るためなら、たとえ魔王が攻めてこようが戦い抜く気持ちだ。




