決心が出来たー判断
何をするのか、俺にも薄々分かってきたが、果たして上手くいくのだろうか。
【うふふっ、たまには違う場所でするのも、新鮮で良いでしょう?】
「それはそうなんだけど」
【ブツブツ言ってないで、早く私をベッドまで運んでよ】
ひもパンだけの〈まうよ〉をお姫様抱っこに抱えて、俺はふと考える。
ひもパンは新たな感動パンツではあるが、お姫様がひもパンだけの姿じゃおかしいのではないかと。
おっぱいがブルルンと、なっちゃいけないじゃないかな。
せめて、ネグリジェくらいは着ておくべきだろう。
しかし、〈まうよ〉が俺の首に手を回し唇へキスをしてきたから、着地点が無い意味の無い考えは直ぐに霧散する。
着地点のベッドに〈まうよ〉をポンと降ろして、俺はまた思考の沼にはまった。
ひもパンってものは、そのままを脱がすものなのか、それともひもを解くものだろうか。
とても深い。
そして、かなり難解でもある。
ひもパンはそのひもと同じく長い歴史があるため、古代よりの不滅の課題じゃなかろうか。
【バカじゃないの】
〈まうよ〉は自分でひもパンをスルッと脱ぎ、俺の腰にムッチリと柔らかな両足を絡めてきた。
なるほどな。
自分ではひもは解かないんだ。
また結ぶのを省きたいんだな。
勉強になるよ。
【もぉ、いい加減にしなさい。 早く結ばれたい、と私はウズウズしているのよ】
その後、俺と〈まうよ〉は固く結ばれたと思う。
〈まうよ〉は柔らかくなり俺は硬くなって、凹凸がピッタリと合わさったんだ。
行き場を失った空気がリズミカルな音を奏でるほどに、二人の興奮はより高まっていく。
俺は腰で一定のリズムを刻み、〈まうよ〉はゴスペルのように情感豊かな声をあげている。
俺は〈まうよ〉を満足させているはずだ。 信じた者は救われるんだ。
根拠が主観のみの自信でもあるだけましだろう。
【かっくん、起きて】
スウスウと眠っていた俺は〈まうよ〉に叩き起こされた。
深夜2時にもう少しでなる時間だ。
丑三つ時と、古来より続く最適な時間でもある。
〈まうよ〉は紅色の作務衣に着替えて、俺は真っ黒のジャージへ着替えた。
ジャージには何の意味もない。動きやすくて黒ければなんでも良いんだ。
俺は実家の側にある電柱に身を隠している。万一人が通った時の用心だ。
〈まうよ〉は都合の良い女だから、カギを開けることなく内部への侵入を果して、また硝子細工の工作機械を動かし始めた。
「きゃー、なんで出るのよ」
「奈々子、もう許してくれよ」
「うわぁ、また幽霊が出た。 ママどうにかしてよ」
次の日は一番近いラブホテルに泊まった。
ベッドがグルグルと無限に回転するわ、天井にドデカイ鏡がバーンと張り付けられているわ、ショッキングピンクに統一された、とても豪華ですごく落ち着かない部屋である。
〈まうよ〉がはいているパンツも落ち着けないパンツだ。
スケスケで丸見えだから感動パンツには違いないのだけど、色が黄色の蛍光色なので目がチカチカするんだ。
カラフルなのも良いが、何事にも限度が存在することを改めて学習させてもらったと思う。
「ありがとうございます」
俺はスケスケ蛍光パンツにお礼を述べながら、パンツを脱がさせていただいた。
【ちょっと〈かっくん〉、いつまで見ているつもりなの。 早くお風呂に入りなさい】
〈まうよ〉だけをスケスケで透明の浴室に入らせて、しばらく裸を鑑賞させていただいていたのだが、それほど普段と変わらない。
〈まうよ〉の全裸は至近距離で何度も見たことがあるからだ。
期待が大きかっただけに、なんだ、ってなる。
自分の家をもし建てることがあっても、スケスケなお風呂を作るのは止めよう。
今決心が出来た。
「はい。 今行きます」
今日も深夜になったから実家に行くのだが、二日連続は眠くてしょうがない。
「うわぁ、今日も出た。 ママ、僕は嫌なんだ」
「私を怨むのは止めてよ。 こんな男と結婚した自分が悪いんだからね」
「僕は悪くない。 全部この女が決めたことなんだ」
「はぁ、私のせいにするなんて最低だわ。 あんたも賛成してたじゃない」
【許すまじ。 これでも喰らえ】
〈まうよ〉はニヤリと笑い三人の方へユラユラと近づいていくが、三人は〈まうよ〉だと分からないようだ。
小さな灯りでは顔の違いが分からないのか。恐怖で正常な判断も出来ないのだろう。
「うわぁ、こっちへ来るなよ」
「きゃー、近づかないでよ」
「ひぃ、殺さないでくれよ」
〈まうよ〉は作業場に放置されている、ガラスの削りカスを居間や寝室に撒き散らし始めた。
「ぎゃー、痛い。 ママ助けてよ。 足にガラスの破片が刺さったんだ」
「痛っい。 ガラスだらけにしないでよ」
「ひぃ、足が血まみれだ」
今日はハイエンドホテルに宿泊をした。
値段は驚きすぎて泡を吹きそうなほど、お高い。
奮発したルームサービスのシャンパンの泡の一つ一つが何千円にもなると思う。
少し零してしまったから、俺は泣きそうなってしまった。
〈まうよ〉はシルクで出来た薄い紅赤のイブニングドレスを着ている。
ハイエンドホテルに合わせたドレスコードにしたんだろう。
ドレスの裾は床に届きそうに長く、素足は一切見せていない。
首周りの肌の露出も少ないが、その分ピッチリと〈まうよ〉の豊満なボディを余すことなく強調しているぞ。
番の俺でも目を奪われるほどの、セクシークイーンの降臨だ。
こんなメスと二人切りでいる状況じゃ、抱きしめる以外の選択はあり得ない。