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体中をチューチューしようー乳房

 三人とも本当に幽霊が出たと思っているな。

 ある意味本当の怪奇現象だから、そう思っても無理はない。

 幽霊ではなく妖魔が起こしたものだけど、人に区別がつくはずがない。


 目の前で瞬時に現れてまた消えるんだ。

現れた女は映像じゃ出せない人間の質感もあるから、現実に起こったとしか感じとれないだろう。


 「私のせいにしないでよ。 あんたがもう直ぐ死ぬっていったのを忘れたの」


 【私の子供まで、ひどい目にあわせたわね】


 「ひぃー、この女の指示だったんだ。 邪魔だって言うんだ」


 「はぁー、それはあんたの方でしょう。 私は反対したはずよ」


 「幽霊さん許してよ。 僕はママに言われたからしょうがなかったんだ」


 〈まうよ〉は(とど)めのつもりなのか、三人の直ぐ横に突然出現するや、それぞれの横面(よこずら)を思い切りひっぱたいた。

 パーン、パーン、パーンと三連発の小気味いい音が鳴り響く。


 母さんが〈まうよ〉を笑って見てた気がする。代わりにやってくれた、と嬉しかったのだろう。

 嫁と(しゅうとめ)が分かりあえて、本当に良かったと俺は強く思う。


 「〈まうよ〉、三人のスキルを一応みせてくれないか」


 「〈切子細工〈中〉〉、〈尻軽〈上〉〉、〈ホスト気質〈下〉〉だよ」


 思ったとおり、いらないスキルばかりか。

 父親の〈切子細工〈中〉〉は素人に毛が生えた程度の腕だな。

 早熟だったのを褒められて、勘違いのあげく天狗になったクズだ。


 三人は尻もちをついてアワアワと意味不明の声を出し続けている。

 ジョロジョロと股間も濡らしているようだ。

 臭い小便の匂いが俺達の所まで立ち昇ってきた。


 「〈まうよ〉、臭くて気分が悪くなるよ。 もう帰ろうか? 」


 【はい。帰りましょう。 ここは汚物の巣ですので長居は無用ですね。 お母様にも早くご報告したいです】



 帰ってから体に染みついたかもしれない匂いをとるために、〈まうよ〉とお風呂で洗いっこをしてしまった。

 悪いことじゃないんだけど、すごく長風呂になったんだ。

 それは洗う以外のことを延々(えんえん)としたからだ。


 【もぉ、お風呂でこんなことしちゃいけなんですよ】


 「〈まうよ〉も声が出てたじゃないか」


 【〈かっくん〉にされたら、それは色々出ますよ。 それとこれとは別なんです】


 論理が良く分からないので、(あきら)めて寝ることにしよう。

 寝る前に母さんの位牌に実家での出来事を報告しよう。


 隣で祈っている〈まうよ〉はどんなふうに伝えたんだろう。

 息子で夫である俺が知るべき内容じゃない、と判断した。



 夢の中で〈まうよ〉は妖魔のくせに難病にかかってしまったみたいだ。

 なんとかと言う長いカタカナの病気だ。夢だからハッキリとはしていない。

 〈まうよ〉は干からびてしまった裸を俺に(さら)して悲しそうにしている。


 【私の胸もお尻も(しわ)だらけです。 (みにく)い女は捨てた方が良いでしょう】


 「何を言っているんだ。 干からびたのなら、俺のつばと体液でベチャベチャに濡らしてやるよ」


 【うふふっ、老婆のような私のお乳を吸っていますね。 大きな赤ちゃんみたい】


 「はっ、違うぞ。 俺はマザコンじゃない」


 【チューチュー吸ってますよ? 】


 「訂正してくれよ。 俺はマザコンじゃないんだ」


 【マザコンの何がいけないのです? 】


 「それは恥かしいからだ。 変態でもある」


 【男はみんな、マザコンで変態なんでしょう? 】


 「男の全てが分かったように、男を一括(ひとくく)りで語らないでほしいな」


 【もぉ、胸を吸わないでほしいです。 朝からしたくなったのですか? 】


 ハッ目を覚ましたら〈まうよ〉が困ったような顔をしていた。

 俺がピンク色のパジャマをめくり上げておっぱいを吸っているためだ。


 おっぱいから口を外して、俺は〈まうよ〉の唇に吸いついた。

 キスで誤魔化すためだ。ちょっと照れ臭(てれくさ)かったんだ。


 〈まうよ〉は干からびてはいなかったので、口の中にはたっぷりと唾液(だえき)が存在している。

 それをチューチューと吸ったら、お返しに〈まうよ〉も俺の唾液をズズッと吸ってくれた。


 【もぉ、〈かっくん〉はしょうがない番ですね。 ただし朝だからと私は(こば)んだりはしません。 求められるのは本当に嬉しいので、つい受け入れてしまうんです】


 弾けるように笑う〈まうよ〉の顔が、夢の中に出て来た、干からびた乳房を俺に吸わしている皺だらけの顔と重なる。


 まるで違うが同じにも見える。


 求めるってことは相手を祝福するってことなんだ。存在してほしいと俺が叫んでいるんだ。


 〈まうよ〉の体中をチューチューしよう。

 例え妖魔の正体が老婆であっても、俺はチューチューを止めない。


 【あん、あぁん、もうチューチューしないでよ。 体中にキスマークがついちゃう】





 会社からの帰り道で季節外れの赤いカーネーションと紅色のリンゴを買って、母さんの仏壇にお供えした。


 【へへっへ、少し眠いかも知れないけど、連続で一週間行くわよ】


 〈まうよ〉が悪人の笑いで何かを企んでいるぞ。

 実家近くにあるホテルに予約を入れるように言われた。

 何をするのか俺にも薄々分かってきたが、果たして上手くいくのだろうか。

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