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だけに秘密を教えてあげるわー存在

 〈聖子ちゃん〉自身もまんざらではない顔でバッチリとお化粧を決めている感じだ。

 40歳を過ぎているにもかかわらず、短いスカートをはかれるようになったのは、(おのれ)がアイドルだと勘違いしている可能性すらある。


 ヘアーサロンは月に二回行くのでお金が大変よ、と愚痴(ぐち)を言われたが、そんなの知らねぇよ。


 パンチラのシーン集なんてものがアップされていたので、じっくりと見てしまったじゃないか。

 (がら)つきのパンティストッキングだったから、それがまたそこはかとなくエロい。

 本当に困ってしまうよ。

 〈まうよ〉にまたはいてもらおう。


 「〈まうよ〉、パンティストッキングを買いに行こうか? 」


 【えっ、またかぶるの?  〈かっくん〉は本格的な変態になったんだね】


 「俺は変態と違う。 その可能性は少ししか無いはずだ。 俺は(じゅん)なスケベなんだよ」


 〈まうよ〉はようやく出来上がったオシドリ柄の着物をシャナリと着こんでいる。

 上品かつ清楚なのだが、ムッチリと膨らんだお尻がそれを大幅に裏切ってやがる。

 とんでもない色気がそこから漏れ出しているんだ。

 ムンムンと音が(ほとばし)っていそうだよ。


 俺は当然ながらそのお尻を触ろうとしたのだ。嫁なんだから俺だけは触っても良いはずだよな。


 【触るのはダメです。 絹なんだから汚れると洗濯が出来ないんだよ】


 またこんな事を言うなんて、〈まうよ〉は服に対して異常な(こだわ)りを持っているな。

 なぜなんだろう。


 「えぇー、どうしても触りたいんだ」


 【うーん、しょうがないわね。 それなら中身を直接触りなさいよ】

 

 俺の望みを(かな)えてくれたのか、くれていないのか、〈まうよ〉は自分で着物をめくり上げてお尻を俺の方へ突き出してきたんだ。


 ムッチムッチプリンプリンとしたお尻は、小さなブルーの下着に包まれていた。

 そうじゃない。

 ブルーには全てが(つつ)まれてはいないんだ。


 〈まうよ〉がフルフルとお尻を動かす(たび)に異なった3色くらいが見え隠れしまっている。

 大切な箇所に大きな穴が空いているじゃありませんか。

 こんなの液体も色々と漏れ出てしまうぞ。


 俺の口からも「最高だ。 穴開きパンツじゃないか。 第二弾の感動パンツだ」と大きな称賛が思わず漏れてしまうのは必然である。


 【うふふ、私に(せん)をしてほしいな。 ただし穴開きパンツは脱がしてからよ】


 用途(ようと)が。


 俺は大きく叫びかったのだが、たやすく手に入る欲望に負けて、感動パンツである穴開きパンツを己の手で脱がしてしまったんだ。


 それは俺の手の中でクシャッとなっていたよ。

 少し湿っていたのは、穴開きパンツが私の用途が果たされていないと泣いていたせいだ。

 それか、〈まうよ〉がケツをまくった時に少し興奮したのかも知れない。


 真相を知りたくても穴開きパンツも〈まうよ〉も、俺の疑問には答えてくれないだろう。


 【やっぱり着物は脱ぐね。 気になって自由に動けないのよ】


 ごもっともでございますが、とても寂しく思う訳ですよ。

 同じ和装であっても、より簡便な浴衣を買ってあげるべきだな。




 「〈うろ君〉だけに秘密を教えてあげるわ。 誰にも言ってはいけないのよ」


 〈聖子ちゃん〉から意味深な電話がかかってきた。


 「もちろん、〈聖子ちゃん〉の秘密は守るよ」


 おでこに出来た皺のことは黙っていてあげよう。顔だから秘密にはしておけないと思うけどな。


 「被害を受けた女性達が、〈うろ君〉の弟の〈清人君〉に騙されたって、証言しているらしいの。 身内だから知ってた方が良いと思ったのよ」


 「ありがとう、〈聖子ちゃん〉。 良く教えてくれたね」


 「どういたしまして。 今度食事でもご馳走してくれたらそれでチャラよ」


 俺はあんなヤツは弟じゃない、と怒鳴るのをなんとか堪えて〈聖子ちゃん〉にお礼を言った。

 〈聖子ちゃん〉とは住む世界が異なっている、と改めて教えてくれる出来事だ。

 〈聖子ちゃん〉と俺の間には高い壁があるんだと思う。

 俺が怒鳴りそうになったのは〈聖子ちゃん〉に非があるのではない。

 幼少期に育った環境が違い過ぎるんだ。


 あんなのは弟では無いのは事実だし、向こうも俺を兄弟なんて全く思っていないのだが、戸籍上は弟となっているのが気にかかる。

 実家に行って決着をつけろ、と〈聖子ちゃん〉の体を使い天が=ささやいているのかも知れない。


 「〈まうよ〉、俺は実家に行こうと思っているんだ」


 【良いんじゃない。 〈かっくん〉の思うままに行動すれば良いのよ。 私は反対なんかしないわ】


 「そうか、俺の思いのままで良いのか、じゃ今晩は感動パンツをはいたままで良いんだな? 」


 【それはダメね。 シミがついちゃうもの】


 どこが反対しないわ、だ。

 即答でダメ出しじゃないか。昨日はする前にシミの原因を出したくせに、どうせ洗うんだから何とかなるだろう。




 5日ぶりに俺は会社に出勤して、デスクにうず高く積まれた書類をヒィヒィ言いながら処理している。


 部下の〈木本さん〉と〈優香〉の二人が「これはどうしましょう」「こうした方が良いですか」と俺に助言を求めてくるので、デスクの上の書類がなかなか減ってくれない。

 だけど俺はニコニコと笑いながら二人の相手をしてあげるんだ。


 頼られるは素直に嬉しいし、俺の存在意義を肯定(こうてい)されているって事じゃないか。

 俺はこの会社に必要とされているんだ。じわじわと幸福感が増してくるようで人生の素晴らしさに涙が出そうになってしまう。


 この気持ちを大げさに言えば、大地の上にしっかり自分で立っているのと同じだ。

 会社を通して社会に根を張っているとともに、俺の根には社員の根が少し絡んでいる状態だと思う。


 俺は不必要な人間じゃなく、みんなと一緒により良い未来を目指す一員なんだ。

 原価の安いミネラルウォーターを売りまくって、お客さんのお金という養分をチューチュー吸おうぜ。


 あっ、この言い方は良くないな。


 顧客ともに日本の夜明けを(ひら)くのが我が社のモットーだ。

 ミネラルウォーターでどうやって拓くのかは、永遠の企業秘密となっているんだ。

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