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プリプリのおケツー秘書

 幹部会議を行う会議室は大きい。

 大げさではあるが、幹部の中のさらに幹部である役員が座るであろう上座(かみざ)が小さく見えるほどだ。

 前に不正をここで証言した時もそう思ったが、席を与えられて改めてそう感じる。


 天井は宇宙船に設置されているような未来を思わせる照明である。

 天井全体が明るいんだ。

 床にはダークグリーンの毛の長い絨毯(じゅうたん)が敷き詰められている。

 革靴で歩く時のコツコツとした音など、長い毛が許すはずがない。


 会議机は大きな楕円形(だえんけい)で、ぶ厚い自然の木が使われた、どう見ても高価なものだ。

 ずらっと並んだ黒い椅子は背もたれも高く、オールレザーで出来ているらしい。

 人工物とは手触(てざわ)りが違っている。


 もちろん俺は会議では何も発言はせずに、黙って聞いているだけだ。

 新参者(しんざんもの)が好きに振る舞(ふるま)える場ではない。

 唯一(ゆいつ)の俺の出番は、新たな参加者として会議が始まる前に紹介されただけだ。

 無難にあいさつをすることが出来たので、自分では及第点だと思う。

 単に「よろしくお願いします」と言っただけど。


 ただ自分でも信じられないが、普通ならばすごく緊張するこんな場面でも、少しもあがったりはしなかったことだ。

 かなり度胸がついたんだと思う。自分に自信がついた結果だと思われる。


 本社の幹部会議で、他に小さな子会社の社長に出番があるはずもない。

 ミネラルウォーターを黙々と販売していれば良いだけの話だ。

 俺の会社には、親会社を初めグループ企業へ大きな影響を与える要素はほとんど無いため、真面目にやっていれば良いだけの子会社である。


 それよりも今は、日本人なら誰もが知っている有名企業グループを構成する会社の社長となり、トップ会議に参加させてもらっているんだ。

 このことを素直に喜び幸せを嚙しめてみよう。


 ずらっと並んだ一癖も二癖(ひとくせもふたくせも)もある社長や重役は壮観(そうかん)じゃないか。たぶん悪事とまでは言わないが、グレーな事をやっているんだろうな。

 普通のことじゃここに座るのは不可能だと思う。


 俺は小物だしツルンとした毒気の無い顔のはずだけどな。


 「〈うろ社長〉、おめでとうと言わせていただきます。 あなたを普通の人間じゃない、と見抜(みぬ)いた私の勝ちのようですね。 私の目は(くも)ってはいなかった、と安堵(あんど)しましたよ」


 会議終了後に〈板垣ジェネラルマネージャー〉が声をかけてくれた。

 思えばここの椅子に座れたのは、この男がきっかけだったな。


 「副社長への昇任おめでとうございます。 社長と言っても小さな子会社ですから、実体はただのサラリーマンですよ。 私はどこにでもいる普通の男です」


 〈板垣ジェネラルマネージャー〉は今回の会議で親会社の副社長へ昇任したんだ。

 俺と歳は変わらないはずだから、とんでもない栄達だ。


 こんな人がスーパーエリートって言われるのだろう。上には上がいるもんだ。


 「ははっ、〈うろ社長〉はただの男じゃないですよ。 なんと言っても仙女が力を貸してくれていますからね」


 ドキン。

 俺の心臓が跳ね上がった。

 一瞬〈まうよ〉のことがバレていると思ったんだ。


 だけど、そんなはずがない。どうすれば分かるんだ。人ではない妖魔なんだぞ。

 〈まうよ〉を見抜くのは不可能だと思う。


 【この〈板垣〉って男は優秀すぎて好きになれないな】


 「〈まうよ〉がイケメン好きじゃなくて良かったよ」


 【ばか。 〈かっくん〉以外を好きになるはずがないでしょう】




 〈ABCぴゅあウォーター〉の社長室は、当たり前だが部長室よりも大きい。

 俺一人じゃ広すぎる大きさだ。何か他の用途にも使おうと考えている。


 俺が使っていた部長室は、すでにミーティングルームへ模様替えをしてある。

 元部長室は少人数の話し合いにはもってこいの大きさだ。

 会社にはもう部長を置かないと決めている。


 応接室としても使えて便利だと評判も良いし、何よりも人件費を大きく減らすことが出来た。

 これで我が社の業績は良くなると思う。小さな会社に管理職ばかりじゃ効率が悪すぎるだろう。


 社長室の椅子も机もそれなりに豪華である。

 しかしネットでも購入出来る量産品である。そう知って良く見ればそれなりでしかない。

 木目を印刷したフィルムが張ってあるじゃないか。


 だけど贅沢(ぜいたく)を言えば切りがない。俺にはこれで十分だろう。


 大きな椅子にドカッと座った俺は、偉そうに美人社長秘書を呼びつけた。

 社長室はこんなに大きいのだから、例えば秘書との激しい運動も可能だと思う。


 「おい。 お茶を飲ませてくれ。 喉が渇(のどがかわ)いたんだ」


 【はい。 お待たせしました。 口移(くちうつ)しの方がよろしいですか? 】


 「むろんだ」


 【失礼いたします。 お口を拝借(はいしゃく)しますね】


 美人社長秘書が俺に口移しでお茶を飲ましてくれている。

 俺は飲ませてもらっている間に、美人社長秘書らしいプリプリのおケツを(まさぐ)ってやる。

 買ってあげた、とても短いタイトスカートの中にも手を入れてやる。


 俺は社長で権力を持っているから、抵抗などさせるもんか、俺のなすがままだ。

 ウヒィヒィ、パパのキュウリを食いたかろう。

 俺の気のすむまでいやらしく触った後に、上にも下にも一杯食わせてやるからな、焦るんじゃない。

 あははっ、俺のはギューンと左に()っているぜ。


 好きなようにケツを触られて不服なんだろう。キュッとしかめた眉が色っぽいぜ。

 ウヒィヒィヒィ、言いつけどおりにTバックをはいているな。

 キュッと引っ張って()け目に食い込ませてやろう。


 「トゥルルルッル」


 あぁ、すんごく良いとこなのに、電話なんかかけてくるなよ。


 「社長、お邪魔します。 同級生の〈小川様〉からお電話がかかっています。 どうされますか? 」


 ほんと邪魔してくれたな。それにしても、同級生の〈小川〉って誰だろう。まるで覚えがないな。


 「男性なのか女性か、どっちだった? 」


 「女性の方です」


 女性か、会社までかけてくる同級生なんか俺にいるはずが無い。友達は俺にはいないからな。

 一体どこのどいつなんだろう。俺は好奇心に負けてしまったんだ。


 「女性なのか。 ますます心当たりは無いのだが、一度話を聞いてみるよ。 電話を繋いでくれないかな」


 「分かりました」


 「はい。お電話を代わりました。 〈ABCぴゅあウォーター〉の〈うろ〉です」

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