ゲラゲラと大笑されていたー最悪
そしていよいよだ。感動パンツを見せてもらおう。
「おぉ、おぉ、おぉー、これはTバックじゃないか。 三角だ。 三角だぞ。 それも鋭角じゃないか」
昔々の大昔から何回も夢に出て来た、幻のパンツが、今、俺の目の前にある。
黒いスケスケに黄金の星を散りばめた、ゴージャスで粋なデザインだ。
Tバックは非現実世界の宝物では無く、現実にも存在していたんだ。
妄想や映像の中だけじゃ無く、有るものなんだな。
今まで全く知らなかったよ。
底辺だった俺が、Tバックをつけただけの美女を抱けるとは、妄想すら出来なかったな。
【うふふっ、感動してくれた?】
「したよ、猛烈にしたよ。 後ろも見せてくれ」
【しょうがないわね。 これで良いかしら】
「おぉ、おぉ、おぉー、細い。 細いぞ。 これは単にヒモじゃないか。 だから隠せていない」
少しよれたTバックは、その機能を果たしていない。
いいや、Tバックにそれを求めるのは酷と言うものだ。
用途が違っているんだ。
よれて隠せないのが、Tバックの真の役割に違いない。
今見ている俺がそう感じているのだから、それが正解だ。
それ以外は認めてやらない。
【ちょっと、いつまでTバックを見ているのよ。 私を放置しないで、早く脱がしてほしいわ】
「つけたままでも良いかい?」
【ダメよ。 伸びたりシミがついたら、もう使えないでしょう。 それに私の全裸を見たくないわけ? 】
「あははっ、そんなはずがあるはずないさ」
俺はしぶしぶTバックを脱がしていく。今度はいつはいてくれるんだろう。名残惜しいよ。
Tバックは三本のヒモみたいな物のだから、足から抜き取る時に丸まってしまった。
ブラックチョコレートのドーナッツみたいになっているぞ。
むき出しになった〈まうよ〉の、プリプリのお尻に俺はかぶりついた。
甘いけれど、ちょっぴりビターなお味だ。
後向きだったから、無念そうな俺の顔を見られなくて、本当に助かったと思う。
感動パンツは危険を伴うものなんだな。
激しい感情は時に厄介を引きよせてしまう。
二つのおっぱいを引きよせて、同時に舐めようとしたら、弾力に弾かれて上手くいかなかった。
〈まうよ〉のおっぱいは素晴らしいけど、時には厄介でもあるんだな。
しょうもない事を考えている俺は、おっさんだけどエロガキにすごく近い気がしてくる。
中学の同窓会に俺は向かっているところだ。
バルっていうカテゴリーだけど、小さな居酒屋を貸し切っているらしい。
俺は呼ばれてもいないし、〈行くのは嫌だ〉と言ったんだけど、〈まうよ〉に押し切られてしまったんだ。
どう考えても、〈まうよ〉に頭が上がらなくなっているな。
〈まうよ〉をパンパンと突ける回数も増えて、夜の主導権は握っているはずだが、それもかなり怪しいものだ。
あそこを〈まうよ〉に握られているって感じがする。
実際に握られたことは何十回もあるからな。
中学の同級生は30人くらいだが、今回出席するのは半分もいない。13人だけみたいだ。
四十にもなったんだ、みんな家庭や仕事で忙しいのだろう。
参加する13人の中に俺は含まれてはいない。
〈まうよ〉は同級生でもないのに、招待されたのは異常なことだ。
まだしも俺が招待されており、パートナーである〈まうよ〉が少しだけ顔を見せるのなら、まだあると思うが、それでも普通は無いか。
〈麻布〉っていう同級生は何を考えているんだ。
どうせろくな事じゃないと推察できてしまう。
招待されていない事以外に、俺が出席したくない理由もあるんだ。
よくあることだが虐めにあっていたんだ。
クラス全員に無視されていたと思う。友人は一人もいなかったな。
一人だけいたか。
ただ友人ではなかった。頭が良くて可愛い女の子だったと記憶している。
その子だけは俺を虐めたりはしなかった。
助けてはくれなかったが、心配だって顔は見せてくれていたよ。
俺が置かれていた状況で、女の子がたった一人で何とも出来ないのは当然だ。
先生も虐め側に立っていたんだからな。
机にマジックで落書をされたことも、靴を隠されたことも、三年間で何百回もあった。
机には三日おきに〈死ね〉って書いてあったし、靴が無いまま裸足で帰ったのは何回だったかな。
当然だけど先生も知っていたはずだが、何にもしてはくれなかった。
それどころか俺にもう学校に来るなと吐き捨てたんだ。
地獄のような日々を、俺はただ耐えていたと思う。
どうして耐えれたんだろう。
家にも居場所がなかったから、後はこの世から消えるしかないよな。
だけど、不思議と死ぬ考えは少しも浮かばなかった。
俺は死が怖かったんだと思う。
カツアゲもされたな。
金を一円も持っていないからと、殴られたり蹴られたりもした。
朝も夜もまともに食べていない俺は、給食だけが頼りだったのだが、その給食をひっくり返されたり、唾を入れられたものを食べていた。
俺の顔が暗すぎるとか、オドオドして腹が立つとか、理由は無いがムカつくんだとか、理不尽すぎる毎日だった。
女子からは直接的ないじめは無かったが、いつも悪口を言われて、ちょっとしたことでゲラゲラと大笑されていたと思う。
直接的な虐めが激しすぎて、間接的なものは記憶にほとんど残っていない。されても認識さえしていなかった気がする。
俺も初めは「止めてくれ」とか、「どうしてなんだ」とか、抵抗はしていたのだが。
「クズにくせに生意気なんだ」
「反抗なんかしやがって」
「いらないヤツなんだよ」
「逆らわないようにしてやる」
言い返すと、さらに寄ってたかって俺を叩いたり蹴ったり、みんながしてくるんだ。
すごく痛いし悔しい、俺を囲む男子は十人以上いるんだ。命の危険を感じるほどだった。
おまけに、俺が泣いているとか、転んで踏まれているとか、鼻血を流しているのを、それは嬉しそうにクラス全員が笑うんだ。女の子達も一緒にだ。
よく自殺をしなかったと自分でも驚いてしまうよ。
最悪の中学時代だ。
「あっ、ようこそ。 奥さん、良く来てくれました。 お待ちしておりました」
同窓会の幹事なんだろう、〈麻布〉がにやけた顔で、〈まうよ〉をジロジロと見てやがる。
【お招きいただきましたので、ずうずうしいのですが、お邪魔しましたわ】
「邪魔なんてとんでも無いです。 奥さんはサプライズのスペシャルゲストですよ」




