オフィスラブ的なことー粗雑
マンションに帰った俺は、出現したての〈まうよ〉を正面から襲う。
玄関だけど、それがどうした。
【えっ、ちょっと待って、〈かっくん〉。 がっつきすぎだよ。 逃げたりしないから、ちょっと落ち着こうね】
俺はほふく前進で〈まうよ〉の足元へ進行する。
秘密の花園への侵攻かも知れない。
プリーツのワンピースをまくって、フンガフンガと若いメスの匂いを堪能すれば、俺の目の前に桃源郷が現れた。
〈まうよ〉が若いメスなのか。
卵時代を計算に入れればかなり疑わしい。だが見た目は完全に若い女性だ。
ふと見せるあどけない笑顔は十代に見えることさえある。
淫行気分も味わえるってことか。
そんなもんまで要らんわ。
【あん、ちょっと待ってよ。 お風呂に入ってないのに。 こんなことされたら、恥かしいよ】
スカートの中に入りこんでいるから、見えないが、〈まうよ〉は照れて顔を赤らめているはずだ。
恥ずかしがっている声が、少し裏返っているような、鼻にかかっているような、若い女特有の細く高い声になっている。
俺の耳にすごく甘い。
「いいから、いいから」
【もぉ、良くないって言ってるのよ。 はぁん、下着までずらさないでよ】
〈晴れ晴れライフ〉の社長が言ってことは本当だな。長いスカートはまくり難い。
スカートとスピーチは短い方が良いと言うのは、太古からの真理だと思う。
人類が太古から綿々と行っている神聖な行為を、「あん」「あん」と〈まうよ〉を喘がせながら、ズンズンと俺は突きに突いた。
気持ち良いぜぇ。
そして俺は真性じゃない仮性なんだー。
なんとその数、十二回にも達した。十三回の途中で達した。
三突きから四倍だ。自分の成長が恐ろしい。
少くねぇ。
「えん」「えん」と泣きたくなる。
毎日パンパンやりまくって、数を重ねるしかねぇ。
気持ち良さに耐性をつけてやるんだー。
ことが終わりお風呂に入ってから、まだ一緒じゃ恥ずかしいって言うんだ。
ベッドの上で二回戦を始める。
〈まうよ〉はごく普通の青いパジャマで、白い普通のパンツだ。
直ぐに脱がすのだから、こだわる必要はナッシングである。
だけど少し淋しく思う。
二回戦も直ぐに終わり、〈まうよ〉の体格の割に大きな胸を何となく揉みながら、俺は疑問に思っていたことを聞いてみた。
「〈まうよ〉は消えることが出来るよな。 その時に着ていた服はどうなっているんだ? 」
【どうでも良いことを聞くのね。 〈かっくん〉にもらったものは、私と同時性を持つんだよ。 一般的な物理法則を妖魔に求めても、しょうがないでしょう】
「そうなんだ。 でも俺は物理に則って、〈まうよ〉を脱がしたいよ」
【うーん、〈かっくん〉は間違っているわ。 同時性なんだから、私が消えないと服も消えないわよ。 だから、私の服を脱がすのは〈かっくん〉の大切な役目なんだよ】
「そうか、それは本当に大切だな。 脱がすための服をまた買いに行こうか? 」
【良いね。 そうしましょう。 買ってもらうのは、私、大好きなんだ。 〈かっくん〉も大好きよ】
そう言って〈まうよ〉は俺に抱き着いてきた。
「あっ、胸が揉めないよ」
【ふぅん、さんざん触ったんだから、もう良いでしょう。 いつまでも触られるのは、ちょっと勘弁だわ。 お休みのキスをしてもう寝ましょうよ】
こう言われると続けられないな。
互いに舌を絡める長いキスをした後、俺と〈まうよ〉は眠りについた。
妖魔にも睡眠が必要なんだろうか。直ぐ横で目を閉じている〈まうよ〉を見てそう思った。
目を閉じると長いまつ毛が強調されるし、口を閉じると愛らしい唇がやけに目立つ。
このメスの体をさっきまで俺は自由に貪っていたんだ。
まだ時間は短いのだけどな。
底辺に沈んでいた頃から考えると、この女体は奇跡だと思う。
このメスと言うか女のためなら、何もかも差し出す男が大勢いるんじゃないかな。
これほどの妖艶さとキュートさを兼ね備えた女は、どこにも存在しないと思う。
世界中を探してもだ。
むしゃぶりつきたくなるような美人で、見ているだけで満足出来る可愛いらしさを持っている。
それなのに少しもあざとさが無い。
人間じゃあり得ない、魅力的すぎるメス。
妖魔だから天に許されているのだろう。
営業チームは攻めの営業を行っているようだ。
〈晴れ晴れライフ〉から紹介された企業や、〈NKUカンパニー〉の取引先を精力的に回っている。
取引先の名簿を〈板垣ジェネラルマネージャー〉に作成してくれと依頼したんだ。
取引先であるなら、グループ企業からの営業を簡単には断れないはずだ、と予想が出来る。
少し汚いとも思うが、利用できるものは利用させていただこう。
「こんな事を私に依頼してくるとは。 〈うろさん〉の無神経さと、合理性には驚嘆しかありません」
「んー、俺を褒めているのか、けなしているのか、どっちなんだ? 」
「もちろん褒めているのですよ。 取引先のリストは〈田野〉を通じてお渡しすます。 一応彼が社長ですからね」
「手間をかけて悪いな。 よろしくお願いします」
「〈うろさん〉の粗雑なところと、丁寧な部分は、一体どちらが本性なのでしょうね? 」
「どっちもだよ。 人はみんな両方を持っていると思う」
「あははっ、〈うろさん〉は粗雑の方が強いみたいですね」
「ちぇ、あんたは俺が工事警備の日雇いだったことを覚えていないのか? 」
「忘れてしまいそうですよ。 〈うろさん〉の過去は遠くなる一方ですからね」
「未来に向かって時は流れているのだから、当たり前のことだろう。 俺も流され続けているんだ」
「そういう意味ではありません。 距離と言うか、差の話です」
そう言った後に〈板垣ジェネラルマネージャー〉は、ブチっとスマホを切りやがった。
俺の相手をするほど暇じゃ無いってことだな。
俺との会話では得られるものが無いと判断したのだろう。
それは俺も変わらない。
取引先のリストがあれば良いだけの話だ。
〈まうよ〉と、おしゃべりしている方が百倍以上楽しいし、言葉に詰まればキスすれば良いのだからな。
【今なら誰もいないわ。 オフィスラブ的なことをしてみる? ただしキスまでよ】




