独想
彼女は、今頃ファイルを読んでいるだろうか。
時計を見て、ぼんやりと考えた。
あのファイルを読んで。自分の過去を……これまで辿ってきた「子津紬」を知った彼女はどう思うんだろう。
彼女は真っ直ぐな人だから。
あの内容を許さないだろう。拒絶するだろう。とても。怒るだろう。
でも、どんなに時間がかかっても、それが現実なんだと受け止めるだろう。
怒って、泣いて、それでも。最後には笑える人だから。
うん。だから。
今度こそ、最後だ。
これで、最期だ。
そう思うと、ふふっ、と笑いが零れた。
彼女に「怒られる」のなら。それで全てが終わるのなら。
「ずっと、マシかな」
本心なのに。呟いた言葉は酷く寒々しい感じがした。
手元にあったファイルのページを適当にめくる。
真っ黒なページを開くと、そこには白い文字で一行だけ。
「対象の廃棄任務完了後、廃棄」
後半はこの一文で締められている。
任務だなんて言葉で飾ってあるけど、要は管理者達の便利屋だ。
過去の自分は実におめでたいお人形だと思われていたに違いない。
仲間に入れて欲しいから従順だろうと思って。
感情なんてないだろうと思って。
――何も覚えてないだろうと思って。
あいつらは何度もこんな事をやらせてきた。
飼い犬でも噛むことがあるんだから、噛まれて然るべきだ。
かり、と本を持つページに爪が立つ。
でも。今度は。
今度こそは。
彼女の中に最悪の形で残ったとしても。
憎しみしか向けられななったとしても。
「――」
……ああ、それはやっぱりちょっと嫌かも。
でも。
自分は死んでも構わないから。
全てを終わらせたい。