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三枝高校十二支部 -Project Z-  作者: 水無月 龍那
1:13回目の箱庭
10/32

独想

 彼女は、今頃ファイルを読んでいるだろうか。

 時計を見て、ぼんやりと考えた。


 あのファイルを読んで。自分の過去を……これまで辿ってきた「子津紬」を知った彼女はどう思うんだろう。


 彼女は真っ直ぐな人だから。

 あの内容を許さないだろう。拒絶するだろう。とても。怒るだろう。

 でも、どんなに時間がかかっても、それが現実なんだと受け止めるだろう。

 怒って、泣いて、それでも。最後には笑える人だから。


 うん。だから。

 今度こそ、最後だ。

 これで、最期だ。


 そう思うと、ふふっ、と笑いが零れた。

 彼女に「怒られる」のなら。それで全てが終わるのなら。

「ずっと、マシかな」


 本心なのに。呟いた言葉は酷く寒々しい感じがした。


 手元にあったファイルのページを適当にめくる。

 真っ黒なページを開くと、そこには白い文字で一行だけ。


 「対象の廃棄任務完了後、廃棄」


 後半はこの一文で締められている。

 任務だなんて言葉で飾ってあるけど、要は管理者達の便利屋だ。

 過去の自分は実におめでたいお人形だと思われていたに違いない。


 仲間(十二支)に入れて欲しいから従順だろうと思って。

 感情なんてないだろうと思って。

 ――何も覚えてないだろうと思って。


 あいつらは何度もこんな事をやらせてきた。

 飼い犬でも噛むことがあるんだから、噛まれて然るべきだ。


 かり、と本を持つページに爪が立つ。


 でも。今度は。

 今度こそは。


 彼女の中に最悪の形で残ったとしても。

 憎しみしか向けられななったとしても。

「――」


 ……ああ、それはやっぱりちょっと嫌かも。


 でも。

 自分は死んでも構わないから。

 全てを終わらせたい。

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