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後編12 曾我十郎祐成②

「ねえ、兄上。信太朗お兄様には、もう会えないんでしょうか?」


 信太朗と敦盛が元の時代とやらに行ってから、とらは何度も同じ質問をしてくる。


 黙っている俺の代わりに、那須与一が答える。


「十郎殿。信太朗は敦盛殿の仕事を手伝うためだけにこちらの時代に来ていたんだ。もうこっちに来る理由がない。」


「だって、だって。もう会えないなんてさみしすぎます。」


「敦盛殿はあと10日ほどで戻ってくるはずだぞ。」


「それはわかっていますが……。」


「元気出せ十郎。また弓の稽古をつけてやろうか?」


「はい。ありがとうございます与一さん!」


 俺は酒をあおった。


「なあ、十郎。一度聞いた見たかったのだが。」


「なんだ与一。」


「お前ら、敵討ちとかはもういいのか?この戦いが終ったあと、工藤何とかっていう、父親の仇を討つなら加勢するぜ。」


「いや、俺はだた自分の力を試したかっただけだ。工藤は親の仇っつっても、言いがかりみたいのもんで。」


「そうなのか?」


「ああ。あの晩、敦盛の笛を聞いたら、敵討ちなんかどうでもよくなってきたんだ。」


「……。」


「工藤と戦って勝っても、何のためにもならねえ。小せえ考えだ。それよりも、戦って戦のない世の中にするっている敦盛の考えの方が、ずっとでっかい。俺はでかい男になりたい。敦盛の笛を聞いて、なぜだか俺はそう思ったんだ。」


「わかるぜ……。俺は那須家の十一男だ。それに病持ちでいつ死ぬかわからねえ。それで兄たちに歯向かって源氏方についてやろうと思ったんだ。」


「そうなのか。」


「それもお前の敵討ちと同じだ。小さい。そんなことより俺は、長生きして、もっと弓の腕を磨きたい。信太朗が持ってた、くろすぼうってやつを作って使いこなしてみたい。」


「……。」


「熊谷殿はどうなんです?」


 いつの間にか後ろで話を聞いていた熊谷直実に尋ねた。


「わしか。わしは出家しようと思っている。」


「出家……。」


「ただし、世をはかなんで出家するのではない。武士としてやるべきことをした後に、より人の世のことわりを学ぶため、出家するのじゃ。」


「それって出家じゃないんじゃねえ?」


「それが違うのじゃ……。お主らも法然様と会わせたいのぉ。特に与一はな。」


「えっ俺っすか。そうですね。今度敦盛殿が持ってくる薬が効いたら、考えてみますよ。」


 なんか辛気臭い話になってきた。


「おう、十郎。稽古をつけてやる、庭へ出ろ。」


「はい、兄上。」


 阿波に出発するまであと数日。

 少しでもこいつを鍛えてやろう。


 そしてこの戦いを生き抜こう。


 そしたら、こいつにもいい男を見つけて嫁に行ってもらおう。

 とらに女の幸せってやつをもってもらいたい。


 俺は柄にもなくそんなことを思った。


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